金融経済新聞 (2011年11月7日) 復興債は長期償還へ 自民に “日銀引き受け” の議論 自民党は10月28日に税制調査委員会を開き、その後に開いた政調全体会議で、11年度第3次補正予算に「正すべきポイント」について検討した結果、党内合意をとりつけ、国会審議への対決姿勢を決めた。 合意内容で同党は、「11年度当初予算には反対したが、震災関連の第1次、第2次補正予算案には全面的に協力した。被災地における本格的復興が遅れた原因は、予算執行など政府対応の遅さにある。わが党は7月8日に17兆円の補正予算案を提案したが、2次補正予算は2兆円にとどまり、今回、第3次補正予算が提出されたのは10月28日。実に4ヵ月後になった」と震災対応の遅れを非難した。 注目の歳入面では、復興関連予算は区分経理した「復興特別会計」を創設し、復興債の償還期限は道路・インフラ整備は建設国債を参考に、それに準ずる長期の償還期間を設けることで単年度の税負担を軽減する。子ども手当の見直しなどマニフェスト見直しで得られた財源は、本来、赤字国債発行の減額にあてるべきことを主張することにした。 歳出規模に対して、「政府は10月に入ってようやく復興関連経費9兆円を含む12兆円の歳出案を提示したが、わが党は7.1兆円の上積み案を10月25日に打ち返した」と説明。 歳出に対して政府が「11年度分は十分な措置として執行限度がある」との回答に留めているとし、自民党は「被災地の実情を踏まえればさらなる上積みは不可欠で、政府は官僚の言いなりになっている。そもそも政府案の提出が4ヵ月も遅れた反省が欠如している」と3党間協議での内容を報告した。 国会における補正予算の論戦は、7日から始まる衆院予算委員会で本格化するが、今回の会合では議員が相次いで意見を述べた。 山本幸三衆院議員は、阪神・淡路大震災では震災対策費は9兆2000億円だったが、内閣府は後になって16兆円必要だったと試算していると語った上で、「財務省が考える予算規模では、復興からの回復を継続できない。復興債の償還期間は、長く、広く、薄くが基本。この時期に増税すればデフレになり、ますます円高が進む。復興債の償還期間は海外諸国では明示不要のところもあり、日本は臨機応変に欠ける。償還期限を意識しないで、景気が良くなってきた時に中央銀行が買い取ればすむことだ」などと話した。 小野寺五典衆院議員は、「宮城県知事は昨日の与野党議員との会合で、復興には宮城県だけで13兆円が必要と発表した。岩手県も8兆円と言っている。原発地域の福島県を含め、青森や茨城の復興は今回の補正予算に入っていない」と指摘。 大野功統衆院議員は、予算は赤字国債の借金で賄うと割り切ればいいのに、なぜタバコ増税や年金を敢えて入れるのか、などと疑問を投げかけ、「そうした増税策は財政が落ち着いてから実施すれば良く、復興債の日銀買い取りは山本議員と同じ意見だ。党で議論してもいい」と主張した。 自民党は10月下旬、東日本大震災と9月初めの集中豪雨による紀伊半島の大水害などを受けて、国土防災強化の観点から「国土強靭化総合調査会」を発足させている。 国債の日銀引き受けに対して、政府が立ち上げた財政・社会保障の持続可能性に関する「経済分析ワーキング・グループ」の中間報告で、東大大学院の岩本康志氏が「国債の日銀引き受けは、やがて量的緩和は解除されるので国債保有高を永続して増やすことはできず、財源とはならない」と説明している。 この際に「1度だけの国債引き受けなら、際限のないインフレは起こらないというのは理屈としては正しいが、政府が一度だけ引き受けると言って、それで終わる保証はない。過去の経験で高橋是清蔵相は満州事変の戦費調達でインフレを招いた。大平蔵相は1975年に赤字国債を発行する時に『10年で耳をそろえて返す』と発言したが、その後に何が起こったかは言うまでもなく、赤字国債の慢性的発行につながった」と指摘している。 |