ASEAN向けのビザ、夏までに要件緩和へ

 

2013年5月31日(金)観光経済新聞

 

政府は、ASEAN(東南アジア諸国連合)の国々からの訪日旅行者の誘致拡大に向け、観光目的の査証(ビザ)の要件緩和を夏までに実施する方向で調整を進めている。観光庁の井手憲文長官は22日の定例会見で、外務省などが作業を進めているとして具体的な対象国や要件の公表を控えたが、ASEANの複数の国が対象となると明らかにした。

 井手長官は「ASEANに対する要件緩和は、訪日観光にかなりの追い風となる」と述べた。経済成長が著しいASEANの国々の訪日需要は増加している。ビザの要件緩和が早期に実現すれば、今年の外国人旅行者の誘致目標1千万人の達成にプラス要素となる。

 ASEANの国々を対象とした観光目的のビザの要件緩和では、昨年6月にタイに短期滞在数次ビザの発給を開始。同9月からはマレーシア、インドネシアにも短期滞在数次ビザを発給している。すでにシンガポールはビザを免除している。

 今年1〜4月累計の訪日旅行者数は、タイが前年同期比48.8%増の14万1千人、マレーシアが同15.9%増の4万6700人、インドネシアが同50.0%増の4万400人と増加中。観光庁は、これらの国々にシンガポール、フィリピン、ベトナムを加えた6カ国の今年の訪日旅行者数を前年より約3割増やし年間100万人にしようとプロモーションを強化している。

 ビザの要件緩和では、安倍首相が成長戦略第2弾の中で「日ASEAN友好40周年にあたる今年は、ASEAN諸国から日本への観光客を増やすために、こうした国々を中心にビザ制度の見直しを行う」との考えを示している。首相が主宰する観光立国推進閣僚会議が夏までに策定するアクションプログラムにも要件緩和が盛り込まれる見通しだ。

 

 また、自民党の観光立国調査会(山本幸三会長)は、ASEANなどに対するビザの発給要件を韓国などの競合国並みに緩和するよう提言案に記載している。韓国はすでにタイ、マレーシアからの滞在90日内の観光目的の旅行者のビザを免除している。日本で同程度の緩和が実施されれば、旅行者誘致に向けた競争環境が整うことになる。