ロイター通信 2013年6月24日
山本幸三・衆院議員は24日、ロイターセミナーで講演し、参院選挙で自民党が圧勝した場合に、安倍政権は規制改革に取り組みやすくなるとの見通しを示し、特に環太平洋連携協定(TPP)があらゆる構造改革への布石になると強調した。
一方で、法人減税の実施は難しいとし、まずは投資減税で設備投資を盛り上げることが大事だと述べた。この夏から秋に実施の決断を迫られる消費増税については、世界の投資家が日本の財政再建に注目していることを踏まえれば、予定通り実施せざるを得ないとの認識を示し、その上で景気への影響を緩和する方策を探るべきだとした。
<黒田緩和、マッカラム・ルール参照の可能性>
山本議員は、大胆な金融緩和を中心にアベノミクスの提唱者の一人。講演では、その理論的な裏づけについて説明。「アベノミクスの最大の目的は物価の安定と雇用の改善にある」とし、中でも「雇用をしっかり確保できないと成功したとは言えない」と強調。もっとも「雇用の改善には最短でも半年はかかると思っていたが、思ったより早く改善が実現できた」とし失業率や有効求人倍率はすでに全国の多くの地域で改善していることを挙げたほか、給与も最新のデータでは上がり始めているとした。
日銀の黒田東彦総裁による2014年末に資金供給量(マネタリーベース)を270兆円と昨年末の2倍に引き上げる異次元緩和について、マネタリーベースと成長率の相関を示すマッカラム・ルールに基づき名目3%の経済成長に必要なマネタリーベースが270兆円となるため、日銀も同ルールを参照した可能性がある、との見方を示した。
今後の課題についても語った。
山本議員は「第三の矢としての成長戦略が最も大事」とした上で、7月の参院選挙で自民党が圧勝した場合には、構造改革や規制緩和にしっかり取り組む必要性を強調。その上で「TPPをやり遂げることが安倍政権の次の課題。それが政権の推進力にもなるので、まとめるしかない。参院選で圧勝すればできる。その中で、構造改革もしっかりできる」と述べた。
ただし、法人減税については「そう簡単にはできない。そこは財源の話がある。まずは投資減税により設備投資を刺激するというのは、そう悪いことではない。供給力を増加させると同時に、それ自体が需要増加にもなる」との認識を示した。
さらに、設備投資環境としては、実質金利がマイナスになっていること、また投資サイクルが短期から中長期まですべて13年は上向きになるため、「心配はいらない」と説明した。
一方で消費増税の実施の判断をこの夏にも迫られる中、山本議員は予定通り実施すべきとの立場を示した。先延ばしすれば政治的に大きな課題を抱えることとなり混乱を招きかねないことに加え、「世界の投資家は日本の財政赤字に注目している」ことをあげ、市場からの信頼を崩すわけにはいかないという安倍政権の立場を代弁した。その上で、「できるだけ悪影響を避けるための緩和措置を考えるべき」と述べた。
(ロイターニュース 中川泉)