「法律通り実施できるような方向で、精いっぱいのご尽力をお願いしたい」。自民党の高村正彦副総裁は7日、経団連の榊原定征会長らと都内で会談し、消費増税への協力を求めた。榊原氏は会談後、記者団に「再引き上げが必要との考えは持っている」と応じた。
与党執行部は引き上げ論が大勢だ。「先送りしたら借金の穴埋めはどうするのか」。野田毅税制調査会長は7日の党総務懇談会でこう訴えた。
増税を先送りすれば「国と地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス)を20年度に黒字化する」という政府の目標の達成は困難だ。財政規律の観点から党税調は引き上げで結束する。
野党党首時代に消費税10%引き上げの自公民3党合意を結んだ谷垣禎一幹事長、公明党の山口那津男代表のほか、自民党の二階俊博総務会長も増税を求め、徐々に包囲網を敷いている。
与党執行部が積極的に増税論を唱えるのは、党内にくすぶる先送り論を抑えたいためだ。
先送りすれば引き上げ延期を規定する法案を来年の通常国会に提出する必要がある。3党合意をした民主党から「安倍政権は財政規律に無責任」などの批判を招きかねない。今後の衆院解散・総選挙のタイミングに影響するとの見方もある。
自民党内ではアベノミクスに深くかかわり、首相に近いとされる山本幸三氏が月内にも消費増税に慎重な議員を集めた会合を開く予定だ。
山本氏はこれに先立ち、1日に首相側近で増税先送りを求める内閣官房参与の本田悦朗静岡県立大教授を招いて勉強会を開催。2日には所属する岸田派の会合で「引き上げは一年半くらい延ばした方がいい」と言及した。
党内では来年4月の統一地方選や、衆院解散・総選挙も視野に入り始めた。党幹部の一人は「地方の景気回復は思わしくなく、消費増税が選挙の争点となれば自民党は地方からしっぺ返しにあう」と警戒する。景気動向次第で、先送り論が一気に広がる懸念もある。
賛否両論があがる与党を横目に、首相官邸は慎重に判断する方向だ。首相は7日の参院予算委員会で引き上げの功罪両面に触れた。先送りした場合、「国の信認も大切なポイント」と指摘し「社会保障の充実に充てることができる額が減る」と説明した。
同時に「景気が悪化し、税収が増加しないという事態は絶対に避けなければならない」と、引き上げの悪影響の可能性も指摘した。
引き上げ判断は政権運営を大きく左右する。中立的な姿勢を唱え続け、最後は自ら決断する環境を整えている。