◆積極派・税調 成長続いている 慎重派・議連 1年半は延期を
消費税率10%への引き上げを巡る政府・自民党内の攻防が本格化している。引き上げを訴える自民党税制調査会と、慎重派の議員らが22日、それぞれ会合を開き、議論をスタートさせた。安倍首相が引き上げの可否を判断するとされる12月上旬まで激しい駆け引きが続きそうだ。
党本部で22日午前にあった慎重派の議員連盟「アベノミクスを成功させる会」(会長・山本幸三衆院議員)の会合には、当選1回の二之湯武史参院議員、末吉光徳衆院議員ら中堅若手を中心に所属議員42人が出席した。首相の経済政策のブレーン・本田悦朗内閣官房参与が講演で「最低1年半は延期するべきだ」と説くと、出席者からは「再増税は日本経済を失速させる可能性もある」と同調する声が上がった。議連は11月中に意見集約し、首相に提言する方向だ。
党税調も22日夕、1000兆円超の借金を抱える国の財政に関する勉強会を開いた。消費増税による財政再建を訴えるためだ。野田毅党税調会長は会合後、記者団に「(自民党議員は)ちゃんと税調で正規の勉強をしてほしい」と語り、慎重派の動きをけん制した。
与党執行部は谷垣自民党幹事長、山口公明党代表ら引き上げ論が大勢だ。首相の盟友・麻生副総理兼財務相も「全体的な経済成長は続いている」などと引き上げを促す。先送りすれば、野党から「アベノミクスは失敗だったのか」との批判を受けるおそれもある。
ただ、首相側近の菅官房長官は慎重派に考えが近いとされる。22日の記者会見では、議連の動きを「真摯(しんし)な議論を行うことは結構だ」と歓迎した。議連関係者と連絡を取り合っているとされ、この日も携帯電話のメールで出席者数などを知らされると、「42人は結構多いな」と笑顔を見せたという。
首相は中立を維持している。7〜9月期の国内総生産(GDP)などの経済指標や専門家の意見を踏まえて判断すると繰り返す。
経済政策「アベノミクス」で景気は回復基調にあったが、4月の消費増税の反動減が長引いているとされる。自民党内では来年4月の統一地方選を控え、「地元では延期を求める声が大きい」(若手)などと慎重論が広がり始めた。
閣僚のダブル辞任で内閣支持率の低下は避けられない。消費税率引き上げは、安倍内閣の体力をさらに奪う可能性があり、首相周辺は「今、消費増税に賛成の議員なんていないだろ」と語っている。
◆軽減税率 粛々と議論
消費増税を巡っては、生活必需品の消費税率を低く抑える軽減税率の導入も焦点となる。公明党の石井政調会長は22日の記者会見で、「自民党と協議していくが、首相の消費税率引き上げ判断とは別個の問題だ」と語り、与党税制協議会で軽減税率導入に向けた議論を粛々と進める考えを示した。
図=消費増税を巡る最近の発言