2015.6.24
衆議院議員 山本幸三
1、(二階訪中団に同行)
大型連休でイタリアとアメリカのワシントンを訪問した後、5月23~25日の強行日程で中国の北京と大連を訪ねて参りました。今回の訪中は、二階俊博自民党総務会長率いる3000人の大訪中団の一員としてのものでした。私は、政治家になったばかりの頃、日本に本格的なホテルスクールを作ろうと思い立ち、毎年コーネル大学のホテルスクールの教授たちを招いてセミナーを開いておりましたが、そのころから観光分野の大御所である二階先生と親しくさせて頂いているのです。過去にも2002年の13000人大訪中団にも参加させて頂いたことがあり、二階先生の中国における存在感の大きさを十二分に承知しておりました。今回は、私自身が自民党観光立国調査会長ということもあって、これは何としても参加しなければならないと、企画当初から二階先生にお願いしていたものです。
元々私は、政治家になった当初から、アメリカと中国には年に1回は訪問し、定点観測を行うとともに人脈を築き上げることを責務として努めて参りました。お蔭で、その時々の日米・日中関係、世界経済の状況等に応じて相手方首脳の言動が微妙に変化してくるのを感じ取ることができるようになりました。
2、(今回訪中の目的)
今回私は、二階先生に同行することで習近平国家主席とお会いできることを確信していたので、2つの疑問に対する答えを見出すことを主目的としていました。第一は、習近平主席が政治的基盤を確立しているかどうかということ。第二は、習主席が昨秋と今春の二度に渡る日中首脳会談に応じてきた背景には、中国経済が大きな困難に陥っているからではないかという私の仮説の証明です。
3、(習主席の政治基盤)
5月23日の夜、人民大会堂で3000人(正確には3162名)の大宴会が開かれるということで私共議員団も1時間半程前から出かけて待機していました。当初この会は、「日中観光交流の夕べ」との名目でしたが、直前になって中国側によって「日中友好交流大会」に変更されました。習近平国家主席が自ら出席する前触れだと、胸が高鳴りました。ところが、二階先生外13名の議員団が控室で30分、1時間と待ち続けても一向に中国側からの反応がありません。実はこのとき、中国側では大激論が戦わされていたのです。訪中団が中国に着いたか否かのタイミングで安倍昭恵夫人の靖国参拝が明らかとなり、こういう状況で習主席が二階氏と会うことが適切かどうかということが問題となったのです。しかし、遂に習近平国家主席は現われました。ニコやかに笑顔を浮かべ、我々と写真に収まり握手をしてくれました。何事もなかったかのように。側には汪洋副首相を従えていました。私は、その瞬間確信したのです、習近平主席の政治基盤は完全に確立していると。少々の問題はあっても、異論を抑えてでも自分の外交方針を貫くことができるのですから。この点は、後に木寺駐中国大使にも確認したところ、「その通りです。」とお墨付きを与えてくれました。これで、第一の疑問はクリアです。
4、(中国経済の現況)
次に、第二の疑問についてですが、北京では推測するだけでしたが大連に足を伸ばした結果、私の仮説は正しいとの確信を持つに至りました。大連へは、二階先生と私と長崎幸太郎先生の3議員、それに民間人300人が同行致しました。私共議員団と大連市の唐軍党委書記、肖盛峰市長等の幹部と会談を持った際、私から彼らに質問をしました。「中国経済は最近減速しているが、1つは過去の投資過剰によって供給過多の状況になっているからではないか。また、アベノミクスで日本の円が安くなっているが、中国元は基本的に米ドルにペッグしているので影響を受けているのではないか。」と。私の直球の質問に対し少し戸惑っていましたが、唐軍党委書記は驚く程率直に答えてくれました。「経済のスローダウンは、まず世界経済が金融危機から完全に脱却していないことによるが、国内要因もある。中国は輸出偏重の経済構造を転換しなければならない状況にある。産業のグレードアップ、近代産業の発展に力を入れる必要があるが、それには時間がある程度かかる。また、円安は貿易に大きな影響がある。特に大連は造船業や化学工業の基地であり、円安は輸出に大きな打撃を与えている。企業にも、新しくマーケットを開拓するとともに、リスクに対する支払能力を高めるように求めているところだ。」との答えでした。加えて「円安はまだまだ続くのだろうか?」と逆に聞いてきたので、「日銀の金融緩和はまだ当分続くので、少なくともあと2~3年は円安が続くとみておいた方がよい。」と答えておきました。
やはり、中国経済はかなり深刻な状況にあるようです。そうした中では、やはり、日本の資金・技術・観光客などが中国経済立ち直りの為には是非とも必要不可欠なのです。これが、習近平国家主席をして、日本との関係改善を図らなければならないと決断させた最大の理由だと改めて確信致しました。アベノミクスは習近平主席をも動かしたのです。
5、(望ましい対中政策)
私は、今回の訪中を振り返って、今こそ日中関係改善を実現する絶好の機会だと思いました。その為には、日本と中国の経済関係を揺るぎのないものにするために、「日中FTA交渉を進めよう」と提唱したらどうかと考えます。また、大連市で北九州市が成果を上げている環境技術協力をもっと大規模に進める為に、「日中環境ファンド」を立ち上げ、中国の公害防止事業を支援することが中国側にとっても日本側にとっても意義のある大きな貢献策となるのではないかと考えています。
経済は政治を動かす。日本が自国の経済をしっかりと立て直すことが、外交面でもいかに大きな役割を果たすことができるかということを実感した訪中でした。やはり、アベノミクスを成功させるしかないのです。
(以上)