政策レポート

日銀は情報操作を止めよ!

平成24年2月2日 予算委員会配布資料(参考) 出典:大和総研 顧問 原田泰氏

日銀は情報操作を止めよ!

1. 2月2日、私は衆議院予算委員会で質問に立ち、上図を示しながら、日銀がデフレ・円高是正の為に何の努力もしていないことを指摘し、これを抜本的に変えるためには日銀法改正をして主要国並の「物価安定目標政策(インフレ・ターゲット)」を導入するしかないと政府に迫った。

 

 

2. 安住財務大臣も古川経済財政政策担当大臣も、私の主張を理解しつつも、日銀法改正については二の足を踏む答弁に終始した。

 

3. これらのやり取りの中で許せないと思ったのは、日銀がバーナンキの発言を曲解したり、米FRBの政策運営は日銀のものと同じであるなどど強弁していることである。このことは、キチンと正しておかないといけないと思うので、ここに紹介してみる次第である。

 

(1) まず、「バーナンキは、インフレ・ターゲティングではないと言っている。」と主張して、マスコミや国会議員を説得して回っているが、その根拠となる文章は以下の部分である。

If by “inflation targeter” you mean a central bank that puts top priority on inflation and other goals, like employment, as subsidiary goals, then the answer is no. We are a dual-mandate central bank.

 

これを日銀は、次のように訳しているのである。(日銀訳)

 

インフレ・ターゲティングが物価の安定を最大の政策目標としており、雇用などは副次的な目標であることを指すのだとすれば、FEDは2つの目標を有しているので、インフレ・ターゲティングではない。

 

 全くの誤訳である。
 正しくは、次のように訳すべきだろう。

もし、皆さんがインフレ・ターゲティングを“インフレ率を最優先課題として、雇用などを副次的なものとする政策”と理解しているのならば、(今回の措置は)そうではありません。我々は、(インフレと雇用との)二つの目標を課せられているからです。

 

と。


 つまり、外の国のようにインフレ単一の目標というのではないが、二つの目標を持っている中でのインフレ・ターゲティングだと言っているのである。これを、「インフレ・ターゲティングでないと言っている。」と言って回るのは許せない情報操作だ。

 

(2)次に、白川総裁は、バーナンキが「インフレ・ターゲティングの国でも、物価だけに焦点を当てて運営している国はない。」と言っていることをもって、日銀法の規定と同じだと決め付けている。

今日では、インフレ目標採用国のどこでも、単純にインフレ率だけをみて政策を決めていることはないことは常識であるが、それが日銀法の規定と同じだというのは余りにも事実に反している。

インフレ目標採用国には、数字で示した明確な目標があり、政策の透明性が図られている。そしてそのことによって説明責任が要請されている。我が日銀法ではそういうことが全くないのだ。

これらの点は、いずれ国会審議で改めて追求したいと思うが、日銀のデマゴーグ、情報操作には驚くばかりである。(以上)

 

(以上)