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次に間接税の個別消費税のケースを考えてみる。便宜上、従量税を想定して説明するが、従価税の場合でも同様に成り立つ。いま、図2のよ うに、ある財の需要曲線DDと供給曲線SSが示され、課税される前には、需要と供給は点Eで均衡し価格はOCとなっている。ここで消費税t(=EJ)が課 せられると、供給曲線がtだけ上に平行移動しS’S’となる。すると新たな均衡点はE’にシフトし、価格はOBに上昇し、需要量も減少する。ここで超過負 担を考えるとき、消費者余剰、生産者余剰という概念が必要となる。
消費者余剰だが、消費者が課税前に支払ってもよいと考えた代金を順々に足し上げていくと台形OAELの面積になるが、実際に支払った代金は長方形 OCELの面積だけだから、彼は△ACEの面積だけ得をしたことになり、これを消費者余剰という。他方生産者は、売りたいと考えた代金を積み上げると台形 OHELの面積であるのに、実際に得た売り上げは長方形OCELの面積だから、彼は△HCEの面積だけ得をしたことになり、これを生産者余剰というのであ る。これら消費者余剰と生産者余剰を合わせたものを総余剰といい、これがこの財の市場における取引によって発生する社会的厚生の大きさを示していることに なる。
さてtの課税後はどうなるか。まず課税後の消費者余剰は△ABE’になり、課税前に比べ台形BCEE’の面積だけ減少している。消費者の支払った税負 担は長方形BCIE’の面積だから、消費者は△EIE’の面積だけ税以外の負担を強いられたことになり、これが消費者サイドで発生した超過負担である。一 方、生産者余剰は△HCEから△HFJへと変化し台形CFJEだけ減少している。生産者の支払った税負担は長方形CFJIの面積だから、生産者も△IJE の面積だけ税以外の負担を強いられていることになり、これが生産者サイドで発生した超過負担である。社会全体としては、両者を足した△EJE’の面積だけの超過負担すなわち社会的厚生の損失が生じているということになる。
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以上のように、税それ自体の問題点からも、あるいは税がマクロ経済全体に与える悪影響からも現状の日本経済の下で復興増税を容認することは到底ありえない。では、それに代わって15~20兆円程度に達するという復興財源を賄うにはどうしたらよいのだろうか。
一番よいのは、私がかねてから主張してきたところの「日銀引受け(あるいは買い切りオペ)による国債発行」である。ま ずデフレ脱却と超円高対策に資する。市場の国債吸収能力に悪影響を及ぼさない。そして、税がもたらす社会的厚生の損失が一切発生しないし、国民負担も生じ ない。名目GDPの増大も期待できる。
なぜこんな一挙三両得のような政策を採用しないのだろうか。日銀や財務省の行益、省益に反するからである。この政策について彼らが挙げる、ハイパーイ ンフレになるとか、金利が暴騰するなどという批判は全く説得力がない。彼等は、これまで金融政策ではデフレは解消できないと言ってきたのではないのか。そ れが国債日銀引受けや買い切りオペということになると急に金融政策は効き過ぎてハイパーインフレになると言い出すのは、支離滅裂ではないか。もっと首尾一 貫した論理を展開すべきだ。また、金利が暴騰するというのも何の根拠もない、脅しに過ぎない。経済というものは、最後は需要と供給で決まってくるものだ。 日銀という国債の買い手がちゃんといるのに、国債が売れなくなって生ずる異常な金利上昇が起こるはずがないではないか。もっと経済理論的に説得力ある議論 を展開して欲しいものである。
いよいよ3次補正予算の議論が始まり、復興財源の話も大詰めの段階に入ってきた。野田政権は、財務省の言いなりだから増税が既定路線のようだが、このような暴挙は決して許してはならない。私 は、すでに復興債の特例法案が出てきた場合に、「政府は、日銀に復興債の買い切りを要請できる。日銀は、原則それに応じなければならない。」との趣旨の議 員立法を用意している。まず自民党内で、そして他党の「増税によらない復興財源を求める会」のメンバーに働きかけて、何としても増税を阻止する覚悟であ る。多くの同志の決起を求めたいものである。
(以上)
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