デフレについての一考察 平成14年4月22日(月) 1、 デフレとは、「物価の全般的かつ持続的な下落」を言う(日銀、IMFの定義)。これを裏面から見ると、「財やサービスに比べて、現金の価値が異常に高くなる状態」と言える。デフレを解消するためには、この現金バブルを失くせばよいのであって、これは、金融的現象以外の何物でもない。従って、デフレ解消策の基本は、金融政策によるべきであって、不良債権処理とか財政・税制政策等はその補完的役割を担うに過ぎない。 2、 不良債権とデフレの因果関係については、既に種々実証研究がなされており、不良債権処理が遅れているからデフレが生じているのでなく、デフレが進行しているから不良債権がいつまで経っても失くならないのだということで決着がついている(財務金融研究所のリポート等)。 3、 今日のデフレが総需要の不足によって起こっていることは間違いないが、それは、1990年代の貨幣供給量が長期的トレンドからみて少な過ぎたことによるものである(1920~2000年のデータから、M2+CDの増加率が4.4%を下回るとデフレが生ずる。1991~2000年は、これが2.7%で、1920年代と同じレベル)。その結果、金融市場では、名目金利はゼロに近いものの、期待インフレ率がマイナス3~4%となっており、この差額である期待実質金利が1990年の金融引締め期と変わらない高水準となっている。これでは、企業が投資を始めたり、消費者が消費を拡大しようとするインセンティブが働かない。 4、 輸入品の価格が下がっているからデフレになる(いわゆる「ユニクロ現象」)という議論は、相対価格と平均価格を混同した議論である。今、輸入品の価格が下がったとすると、当然、消費者は輸入品を買うだろうが、安くなった分余った所得は他の財の購入に向かうはずである。その時、他の財の価格は上昇し、これと輸入品を加えて計算する平均価格はそんなに変わらないはずだ。デフレは他の財も含めて、全ての価格が継続して下がっていくから問題なのである。 5、 財政政策は、デフレ・ギャップを一時的に埋めるという「つなぎの役割」しか果たすことができない。期待実質金利を下げ、民需の自律回復が可能となるような政策でなくては、本物のデフレ対策とは成り得ない。 6、 こうした意味で、インフレ・ターゲット付き量的金融緩和政策が最も有効なデフレ対策と考える。日銀総裁が、例えば、「2年後に消費者物価上昇率(CPI)を1~3%にする。」と確約し、徹底した量的緩和を行うのである。その決意が本物であると市場参加者が認識すれば、直ちに期待インフレ率がマイナスからプラスに転じ、期待実質金利が下落することになろう。また、国内実質金利が下がれば、円安になり、これもデフレ解消に役立つ。この基本政策が採られた上で、民需刺激型の財政支出や税制改正が行われれば、極めて効果の高いものとなろう。 7、 なお、小泉内閣は、既にインフレ・ターゲット政策を採用している。さる1月26日閣議決定された「中期展望」に、全ての前提として、2004年度からGDPデフレータで0~1%、CPIでは1~2.5%を実現すると明記しているのである。日銀が、この内閣の方針をはっきり支持せずに、責任逃ればかりしているのは、誠に不可解なことである。 (以上) |