平成28年10月12日 衆議院予算委員会
○浜田委員長 予算の実施状況に関する件について調査を進めます。
本日は、安倍内閣の基本姿勢についての集中審議を行います。
この際、お諮りいたします。
本件調査のため、本日、参考人として日本銀行総裁黒田東彦君の出席を求め、意見を聴取し、また、政府参考人として内閣官房内閣審議官田中勝也君、内閣府大臣官房独立公文書管理監佐藤隆文君、内閣府政策統括官田和宏君、内閣府政策統括官加藤久喜君、総務省自治財政局長黒田武一郎君、厚生労働省労働基準局長山越敬一君、原子力規制庁原子力規制部長櫻田道夫君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○浜田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
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○浜田委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。菅原一秀君。
(略)
○西村(康)委員 大胆な金融緩和を継続する、そして新しい枠組みもまた新たな試みだと思いますので、ぜひうまく調整をしながら、デフレ脱却に向けてこの緩和を継続していただきたいと思います。
ただ、この金融緩和も、あくまでも時間を買う政策だと私自身は思っております。ずっと永遠にこの緩和ができるわけじゃありませんので、その間に第三の矢である構造改革を進めることが何より大事であります。
第三の矢について議論をしていきたいと思います。
先般の幕張メッセでの電子情報技術産業協会主催の展示会、シーテック、総理は前夜祭に行かれたというふうに伺っておりますが、これも去年とはさま変わりで、去年は8Kテレビが中心でありましたけれども、ことしは、もはやIoT、ビッグデータ、ロボット、フィンテック、こういったものが中心となっております。時代の変化の速さ、技術の進歩の速さを感じるわけであります。
次のパネルで、アベノミクスのさまざまな成果、国家戦略特区を中心に、観光分野、医療分野、農業分野、空港のコンセッション等々の実績を示しております。多くはもう申し上げません。
残された分野が次のパネルで、幾つか国家戦略特区の諮問会議で指摘をされております。最も重要な多様な働き方については先般も議論がありましたので、きょうは、外国人材の受け入れについて少し議論したいと思います。
もちろん、移民政策というふうに誤解されないように厳格な管理体制をしくなどの配慮をしていかなきゃいけませんけれども、人口減少、人手不足の中で外国人材の受け入れを必要とする分野もありますので、ぜひこれを考えていく必要があります。
既に国家戦略特区では家事支援人材については受け入れることを決定しておりますけれども、きょうは二つお伺いいたします。一つは農業分野、もう一つがクールジャパンの分野であります。
農業の外国人材については、秋田県の大潟村を初め、茨城県など県単位でもさまざまな提案が、外国人材を受け入れたいということで、なされております。人手不足が顕著となっている農村、農業の分野において、まずは特区で導入をして、それを検証して、全国展開に向けてどうしていくかということが大事なのではないかというふうに思います。
クールジャパン人材については、日本のファッションやアニメや日本食が好きだということで、多くの学生が日本に学びに来ているわけでありますけれども、勉強しても就職ができない、逆に日本が嫌いになって帰っていくというようなケースも多いと聞いております。
さきの通常国会で成立した改正国家戦略特区法でも、法施行後一年以内を目途として具体的な施策を講じる、措置するという旨が附則に書かれております。一年以内ですから、次期通常国会での法改正に向けて今作業が進んでいるものと思いますけれども、この改正に向けての総理の御認識、決意をお伺いできればというふうに思います。
○安倍内閣総理大臣 ただいま西村委員から御指摘をいただいたように、国家戦略特区においては、農業もそうですが、医療や雇用や保育、教育など岩盤規制を突破してまいりましたが、残された重要課題の一つが外国人材の受け入れ促進でありまして、特に高齢化に伴う人手不足が深刻な農業分野において、産地の多様な作物の生産に対応した専門家としての外国人材を活用していきます。
また、例として挙げられました日本のアニメ、食、デザイン、ファッションといったものに憧れて日本に学びに来た。せっかく学んだのに、まず日本で職を得たい、そしてその後、自分の経験、知識を積んで、これを本国に帰って生かしていきたいという人たちがたくさんいるのに、なかなかそれができないというのは、その人にとっても、またその国にとっても、また日本にとってもそれぞれマイナスであろうと思います。
これらについて、次期国会への改正特区法案の提出も視野に、議論を加速してまいりたいと思います。
せっかく手を挙げていますので、山本大臣に。
○山本(幸)国務大臣 今もう総理がお答えされたとおりでございますけれども、農業人材については、おっしゃったように、秋田県大潟村とか茨城県とか長崎県とか、いろいろ要請が来ております。また、クールジャパンについても、いろいろな会社等からぜひやりたいというような話が来ております。
これは、来年の通常国会にはぜひ改正案を出したいというふうに思っております。
○西村(康)委員 ありがとうございます。ぜひ、次の国会で提出をいただいて、成立に向けて御尽力いただければと思います。
続いて、成長戦略の一つの柱であります自由貿易協定についてお伺いしたいと思います。
その中核であるTPPについては、この後、TPP特別委員会でも改めて議論をしたいと思いますので、きょうは、EUとのEPAについてお伺いをしたいと思います。
世界全体を見れば、アメリカの大統領選挙での討論もそうですし、反グローバリズムの風潮が広がってきている。G7の伊勢志摩サミットでは、あらゆる形態の保護主義と闘うという決意表明がG7の首脳でなされました。我が国はその議長国でもありますし、この保護主義的な風潮に率先して立ち向かうことが大事ではないかというふうに思います。
その意味で、この図にありますように、アメリカを含むアジア太平洋でのTPPと、EUとのEPAというのは非常に大事なものだというふうに思います。もちろん農産物などセンシティブな品目がありますので、より注意深く交渉する必要があると思いますけれども、EUとのEPAが年内にでも合意にいけば、これはアメリカのTPP議会承認にもプラスに働いていく、EUと日本も貿易がふえるということでありますので、そういう意味で、非常に大事な交渉ではないかと思います。
来年はEUは選挙の年であります。ですので、本年、年内に妥結をしないと、来年になると漂流をしてしまう危険性もあるんだというふうに思います。
年末までほとんど時間がないわけでありますけれども、ぜひ強力に交渉を進めていただきたいと思いますし、そのためには交渉体制の強化も必要ではないか。TPPのときは甘利大臣を司令塔に一元的に交渉を進めましたので、そのことも含めて、ぜひ、EUとの交渉体制の強化、そして年内妥結に向けた総理の御決意をお伺いしたいというふうに思います。
○安倍内閣総理大臣 かつて、戦前は、植民地も含めた領土の広さが経済規模であったわけでありますが、戦後は、日本もドイツも領土を失ったにもかかわらず経済規模は大きくなってきた。これはなぜかといえば、やはり自由貿易の恩恵なんだろう。事ほどさように、極めてこの自由貿易体制というのは人々に恩恵をもたらすということではないかと思うわけであります。
委員の御指摘のように、フランスにおいては来年が大統領選挙であり、そしてまたドイツは秋には総選挙が予定されている中において、アンチグローバリズムの動きもある中において、本年中に日・EU・EPAについて大筋合意を実現する必要があると考えております。
ゴールデンウイークに欧州を訪問しました。また、五月の伊勢志摩サミット、そして七月のASEM等におきまして、ユンカーそしてトゥスク、EU委員長、議長ともお話をいたしました。そして、オランド大統領、メルケル首相、レンツィ・イタリア首相等とも話をした中において、本年中の日・EU・EPA大筋合意について、それを実現していこうということで確認し合ったところでございます。
困難な交渉ではありますが、政府として、攻めるべきは攻め、守るべきは守る、国益の観点から最善の結果を追求していく考えであります。
私の指揮のもと、関係省庁間で緊密に連携しつつ、最善の結果を得ることができるしっかりとした体制を組んで、政府一丸となって、本年中の大筋合意の実現を目指していく考えであります。
○西村(康)委員 ぜひ頑張っていただきたいというふうに思います。
その関連で、EUの情報移転の政策についてちょっとお伺いをしたいと思うんです。
世界は今、もう言うまでもなく、デジタル化が進む中で、ビッグデータを使ってのいろいろなサービスが生まれております。この情報の自由な移転というのが何より大事でありまして、伊勢志摩サミットでも、データ移動の自由の原則が七カ国で合意をされているところであります。
一方で、この移転の際には個人情報保護とのバランスが大事でありますが、EUは、EU委員会が独自に、その国がちゃんと個人情報の保護をしているか、十分かということを認定して、それが認められればEU内にある情報を域外に移転できるというふうになっております。この十分性の認定を受けた国は今のところスイス初め七カ国でありまして、現在は韓国が、認定国となるべくEUと協議を進めているというふうに聞いております。
我が国も、個人情報保護法も改正いたしましたので、抜本的に体制が強化をされていると思います。ビッグデータ時代で、日本に情報を集めていろいろな新しいサービス、新しいことを生み出していく、そのためにも、EUとの交渉、EUの十分性の認定に向けた協議に入るべきだというふうに考えますけれども、これも総理にお伺いしてよろしいですか。
○安倍内閣総理大臣 データが産業競争力の源泉となるこのビッグデータ時代においては、個人情報を適切に保護しつつ、国際的な移転の手続を整備することは重要な課題です。
EU加盟国から第三国への個人データの移転については、EUのルールとして、移転先の国が十分な保護措置を講じている国であることを認定する手続を定めており、既にカナダ、ニュージーランドなど十一の国と地域がこの認定を受けています。
日本とEUとの間のルールが整備できれば、例えば大手電機メーカーが欧州で自動車運転や鉄道等のインフラ事業を行う上で、日本と欧州でデータを共有し、すぐれた製品、サービスを提供することが可能となります。日本企業の活動に間違いなく利益をもたらすと思います。
日本は、ことしに入り、個人情報保護委員会を設置し、EUとの対話を進めてきておりまして、私自身、五月の日・EU首脳会談において、個人情報の円滑な移転促進が重要であり、日・EU間の対話を加速していく旨先方に伝えたところでありまして、EPA交渉の機運も生かし、できるだけ早く日・EU間のルールを整備できるよう、政府全体として取り組んでいく考えであります。
○西村(康)委員 ぜひ情報の自由な移転についても御尽力いただければというふうに思います。
時間が来ましたので最後にしたいと思いますけれども、情報の関係で、ぜひ日本の国内でデジタル化の流れをつくっていくことが大事だというふうに思います。
これまでも、税の申告とか特許の出願とか、電子化の手続が整備をされてきましたけれども、まだまだ電子化されていない分野が残されております。紙での書面交付をしている法令もたくさんあります。金商法を初めとして、たくさんあります。例えば、紙の領収証をスマートフォンで撮って、その画像を証拠書類として残すことも可能ですけれども、一方で、税との関係では、紙の書類は別途保存しなきゃいけないというふうにもなっております。
こうしたさまざまな、申請から書類保存まで含めて、まずはデジタルでやる、デジタルファーストの社会をつくるべきだと思いますし、個別法でやっていれば時間がかかりますので、ぜひ一括法でやっていくべきだ。特に、通知なんかでやっている部分は、もうできるところから変えていって、ぜひ一括法を制定していくべきだというふうに思いますが、これはIT担当大臣にお伺いしたいと思います。
○浜田委員長 鶴保担当大臣、時間が来ておりますので、簡潔にお願いいたします。
○鶴保国務大臣 委員御指摘のとおり、まだ紙媒体で申請等をしておる部分も残っております。したがって、九月の規制改革推進会議におきましても、総理からも、事業者目線で規制改革、手続の簡素化を進めるとの指示もございました。
我々としましても、今年度末をめどに、行政手続コストの削減や手法も、重点分野を決定いたしまして、原則ITのルールに変えてまいりたいというふうに思います。
また、先ほどお話がありましたとおり、個人情報等の法整備についてもまだ検討の必要な分野もありますから、先月は、IT総合戦略本部のもとにデータ流通環境整備検討会を設置させていただきました。
これからも精力的に取り組んでまいりたいというふうに思います。
○西村(康)委員 ありがとうございました。終わります。