衆議院予算委員会 議事録 |
開催日:平成22年2月16日 |
○山本(幸)委員 自由民主党の山本幸三です。
きょうから確定申告が始まったわけであります。全国の第一線の税務署長は、大変困惑して今回の確定申告の作業をやっているわけですね。なぜならば、政権与党のナンバーワンとナンバーツーについて脱税疑惑がある、総理については平成の脱税王とまでやゆされた、そういう問題があるときに、税務署の職員は納税者からいろいろ言われて大変困るわけですね。このことを少し考えていただかなければいけません。
ところで、最初にお伺いしますけれども、確定申告書というのを、きょう三大臣に来ていただいておりますけれども、御自分で書かれますか、それとも税理士さんに任せられますか、それぞれお答えください。
○菅国務大臣 税理士の方にお願いいたしております。
○川端国務大臣 お答えいたします。
必要書類は私が集めまして、公認会計士にお願いをしております。
○長妻国務大臣 必要書類は私が集め、そして妻がやっております。
○山本(幸)委員 長妻大臣は奥さんがやっておられるということでありますが、私は毎年自分で書いて出しているんですね。それをやるとよくわかるんですよ。
確定申告書というのをなぜ出さなきゃいけないかというと、日本の税制は申告納税制度というのができているんですね。申告納税制度というのは、そのエッセンスは何ですか、菅大臣、本質。
○菅国務大臣 山本委員はそういう専門の分野が長かったわけでありますが、私は、申告という言葉は、まさに自分が自分の税についての申告をする、それがエッセンスという意味に当たるかどうかよくわかりませんが、そこが一つの中心じゃないかと思っています。
○山本(幸)委員 大臣ですから、ちょっとそれぐらいはっきり認識しておいてもらいたいんですが。
申告納税制度のエッセンス、本質というのは、自分の所得というのは自分の責任において正確に把握して計算して、そして税務署に申告するというのが申告納税制度の本質なんですよ。だから、自分の所得について知りませんなんというのは言えないんです。(発言する者あり)総理は言っているじゃないか。言っていますよ。自分の税金、自分の所得について、知りませんでしたなどと言えないんですよ。それは申告納税制度というのを理解していないんだ。総理大臣がそういうことで、税務行政ができると思いますか。できませんよ、そんなのは。
確定申告書の中には、退職所得以外の所得で二千万円以上の所得を得る人は、財産及び債務の明細書というのを出さなきゃいけないことになっています。これは自分で書いたらわかりますよ。国会議員はみんな二千万円以上あるんだから、出さなきゃいけないんだ。これを見れば、すぐわかるんだよ。
財産及び債務の明細書に総理がどう書いていたかを出してもらえば、すぐわかりますよ。そこに借入金と書いて、そして貸付金と書いていたのか。そうしたら仮装だよ。書いていなきゃ隠ぺいだよ。重加算税の対象である悪質である仮装、隠ぺい、ぴったしじゃないか。私は税務署長もやったし、国税局の直税部長もやっていたんだよ。一発ですよ、これは。重加算税の対象だし、しかも、脱税の容疑が一億円を超えるんだったら、各国税局では査察案件ですよ。査察を入れなきゃ。
ところが、税務署長や国税局長は困っているでしょうね、総理大臣と与党の幹事長だからね。この税務署長なり……(発言する者あり)幹事長だって、贈与なのか、あるいは実質認定だったら、政治資金団体からやっているのが実質課税だったら、課税の対象になるんですよ。あるいは職員にやっているのだって、それは家賃を取っているのか。いろいろあるんです。
だから、これは査察案件としてやらなきゃいけないんだけれども、税務署長や国税局長は困るんだ。
この場合には、大臣が政治的リーダーシップを発揮して、やれと言うか、あるいは、総理にしろ幹事長にしろ、どうぞ査察してください、そして徹底的に調べてください、払うべき税金があったら払いますよというのが本来の姿であって、そうしないと、日本の税務行政は、申告納税制度は崩れますよ。
それについて、大臣、どう思われますか。
○菅国務大臣 まさに国税庁で仕事をされてこられたわけでありますから、よくおわかりだと思いますが、確かに財務大臣は税のそういった面での責任者ではありますけれども、個別のことについて、特に国税庁に関して、個別の案件について財務大臣がこうしろああしろと直接指揮をとることはしないでいるというのが従来からの慣例であったというふうにも聞いておりますし、歴代財務大臣あるいは大蔵大臣もそういう姿勢で臨まれたと思っております。
ですから、私も、個別の案件でこうしろああしろということを私からやることは控えております。そこは適正公正に国税庁長官を中心にしてやっていただいているものだ、このように認識をしております。
○山本(幸)委員 だから、本来は御本人たちがやってくれと申し入れてやるのが一番いいんですね。これは、表向きはそうだろうけれども、ちゃんとやれという指示をやるのが、あなたの本当の政治的リーダーシップですからね。そうしなければ、日本の税務行政は崩れちゃうんです。
次に、税務行政の第一線も混乱していますが、教育現場も混乱している。
きょうは文科大臣に来ていただいていますが、きのう、札幌地検が北海道教職員組合の事務所を捜索いたしました。これは、民主党の衆議院議員小林千代美さんに対して、組合員のカンパを集めてそれを裏金として不正提供した疑いである、政治資金規正法違反の疑いであるということであります。
この小林千代美さんというのは、選対委員長代行が選挙違反をやって、先般、十二日に有罪判決が出たばかりですね。本来ならば連座制に問われるはずでありますが、上告すると言っているようであります。そこにまた上乗せしてこういう疑惑が出てきた。
この問題は、実は、教育現場については非常に大問題、大きな問題だと私は思います。つまり、先生方がカンパをして、それを裏金にして政治献金をする、それも裏で処理した。しかも、特定の候補者をそういう丸抱え的に応援している。一体これは何なんだ、教育現場はどうなっているんだという話です。
文科大臣、教員の政治的中立性の確保に関する法律に照らしても大変問題があると思いますけれども、これについてどう思われるか。これが第一。
それから次に、恐らくこれは氷山の一角じゃないか。山梨県教組でも同じような話があった。こういうことが全国の教職員の間で行われたら大問題ですよ。教育、どういうふうにして子供を教えるんですか、自分たちが裏献金して、違法な政治行動をして。
ついては、全国的に教職員組合でこんなことをやっていないかどうかきちっと調査して、そして国会に報告してもらいたいと思いますが、これについてどうですか。それが第二です。
○川端国務大臣 お答えいたします。
一番初めの、報道されています北海道教職員組合が家宅捜索を受けたという案件に関しては、捜査の手が入ったということは承知をしておりますが、それ以上の情報はございません。個別の案件についてはコメントは差し控えたいと思います。
同時に、教育現場においては、法に基づいて、政治的中立は確保されるべきであり、確保されているというふうに思います。この事案に対して、問題が起これば、状況の把握に努める中で当該県教委とも連携して、法に違反する事案があれば適切に対処してまいりたいというふうに思います。
今の資金の流れのお話でございましたが、資金の流れ等々を把握することは、こういう団体は、県の人事委員会に登録されている、いわゆる交渉団体であるとかいう資格をするために、登録する要件として資金の流れを把握する仕組みにはなっておりませんので、どういう状況で資金がどうあったかということを調査する立場にございません。
したがいまして、この資金の流れを制度的に解明するということは、今私たちは調査することができないということは御理解をいただきたいと思います。
仮に公務員として法にそぐわない問題があることに関しては、当該教育委員会と連携をして、今までもこれからも適切に、厳正に対応してまいりたいと思います。
以上です。
○山本(幸)委員 全く答弁していない。やる気がない。こういう問題がもう既に出ていることがはっきりしているじゃないですか。山梨県でもあった。それについて、こういう問題が起こったら文科大臣としてどう考えますかという一般論でもいいですよ。それ自体もないんですか。
それから、資金について調べる立場はないなどと言っているけれども、そんなことで文部行政は成り立つんですか。どうなんですか。
○川端国務大臣 警察当局が資金の流れ等々を捜査していることは報道で私は承知をしておりますが、このお金がどういう性格であるか等々は、まだ事実は私は承知をしておりませんし、わかりません。そして、これを文部科学行政の中で、このお金はどうだったかということを調べることはできません。
それを申し上げているのであって、教育現場において、何度も申し上げますが、政治的中立はどうしても守らなければいけないし、守られることに対して全力でしっかりと対応していくということを申し上げていることでございます。
以上です。
○山本(幸)委員 私は、その資金の流れ等について調べられないというのは納得できない。こういうことが公然と行われていれば、先生方は、カンパと言って集めて、裏金で政治活動をやるんですよ。それは教員の中立性に反することは明らかだ。それをちゃんと文部科学行政でやらなかったらどうするんですか。できないんだったら、できるようにしたらいいじゃないですか。どうですか。
○川端国務大臣 お答えいたします。
まず、カンパだとか裏金とかいうふうにおっしゃいますが、その事実関係は私どもは承知していませんので、そのことに関しては対応できません。
そして、政治的中立という意味での教育現場においての部分は、これは、法に基づいて、今までも、いろいろな事態に対しては、問題があった部分は適切に対処し、教育委員会とも連携をして対応してまいりましたし、これからも引き続きその対応をしていくということ以上に申し上げることはございません。
○山本(幸)委員 十二日の有罪判決の中に、連合の裏金を使ったとちゃんと認定されているんですよ。
この北教組というのは、連合の傘下で、その関係者が選挙の担当もやっていたんでしょう。だから裏金なんですよ。これをちゃんと調べて報告してもらわなければ、我々は文部行政に信頼を置くことはできない。
大臣はああでもないこうでもないと言いますから、委員長、これはぜひ理事会で、そういう調査、報告をやってもらうように協議願いたいと思います。
○鹿野委員長 理事会で後刻協議をいたします。
○山本(幸)委員 それでは、本題に入りますが、きょうは日銀総裁に来ていただいていますので、しっかりやりたいと思います。文科大臣、結構です。
私は、日本経済の最大の問題はデフレだと思っているんですね。デフレがある限り、何をやってもうまくいかないんですよ。これは菅さん、後でちょっと具体的な質問をしますけれども、成長戦略もうまくいかない。これが今日の日本を悪くしている元凶だ。
デフレが起こると、企業はリストラせざるを得なくなる、円高も進む、工場を海外に持っていく、失業がふえる、賃金が下がる、ローンを持っている人は負担が極端に上がってくる。これが格差を広げ、地方を疲弊させた最大の原因だと私は思っていて、このデフレをなくすために、デフレをなくせるのは日銀しかないんですよ、そのために私はずっと政治家として執念を燃やしてこれまでいろいろやってきたわけでありますが、残念ながら、まだできていない。
ぜひこれは、菅大臣が政治的リーダーシップを発揮するんだとおっしゃるなら、やってもらわないと困る。この問題についてやっていきたいと思います。
まず、新経済成長戦略、これを菅大臣は一生懸命自画自賛しているんですが、私はこれを読んで、単なる役人の作文で、いつもながらの話だな、できもしないような数字も並べて、作文をいろいろ書いて、自画自賛しているなと思いますが、唯一評価すべきだと私が思っているのは、最後のところでデフレ克服というのをはっきりうたっている、それから名目成長率を最優先課題だと言っている、これだけは私は評価したい。あとは評価できないね。
それについてはどうですか、菅大臣。
〔委員長退席、海江田委員長代理着席〕
○菅国務大臣 デフレが非常に重要だというか、それの克服が大変大きな課題だという認識は、私も共通にいたしております。
そういう中で、この新成長戦略、まだ基本方針の段階ですけれども、これは目標でありますが、名目成長率三%、実質二%、つまりはインフレ率一%程度を目標として二〇二〇年までにこれを実現したい、そういう案を出したわけであります。
もちろん、この肉づけ、工程表は、これから六月に向けての作業となりますけれども、何とか日本の経済をこの成長戦略に乗せて、そして、もちろん日銀の皆さんにも御協力をいただいて、デフレ状況を脱却し、財政に対しても、あるいは日本の経済全体に対しても、何とか成長路線に戻していきたい、このように考えております。
○山本(幸)委員 そのデフレのところ以外は評価できないというのは、例えばグリーンイノベーション、環境分野で、これによって二〇二〇年までに五十兆円超の新規市場をつくる、百四十万人の環境分野の新規雇用をつくると言っていますね。これはちゃんとできるんですか。
○菅国務大臣 読んでいただければわかると思いますが、それなりの方向性を示して、これから具体的な工程表、どういう制度をつくり、どういう形でやっていくかということのより具体的なものは六月に向けてやるわけですが、目標としては、そこに挙げた数字を目標に何とか実現にこぎつけたい、そういうことで提示をしたわけであります。
○山本(幸)委員 これがどういうことを意味しているかというのはわかっていますか。五十兆円の付加価値をつくるというわけだ。
では、五十兆円のうち労働者の手取りは幾らだ。通常の労働分配率で見ると七割、三十五兆円ですね、労働者の取り分が。三十五兆円を百四十万人で割る。つまり、一人当たりの手取り、一人当たりの所得は幾らになるか。どれぐらいになると思いますか。ぱっと、これは計算すればわかるんだけれども。
計算すればわかるので意地悪はしませんが、三十五兆円を百四十万で割ると二千五百万円なんですよ。二千五百万円の所得というのは、今の通常の労働者の五倍から六倍だよ。二千五百万円の高額所得者を百四十万人もつくれると思いますか。
○菅国務大臣 所得という表現をしていましたか、していないんじゃないですか。つまり、市場全体としてそれだけの生産を上げるということであって、それが所得というふうになっていないはずですが、いかがですか。
○山本(幸)委員 もちろん、それは所得になっていないけれども、付加価値が……(発言する者あり)違う、違う。計算すればそうなるんだよ。付加価値が出て、そして新規雇用が出れば、それは手取りが幾らになるかという計算じゃないですか。そういう計算になるんでしょう。どうですか。
○菅国務大臣 ちょっと今十分聞き取れなかったんですが、つまりは、所得が先ほどの三十五兆円上がるということではなくて、そこに新しいマーケットとして生産あるいは需要がそれだけふえる、そういう認識だと思いますが。
○山本(幸)委員 いやいや、市場がふえるというのは付加価値がふえるということなんでしょう。違うんですか。新規の市場というのは付加価値がふえるということじゃないんですか。
○菅国務大臣 ここに具体的に書いてあるものがありますが、新規市場五十兆円超、新規雇用百四十万人、さらにはCO2排出減を、これは世界全体にわたる影響によって十三億トンの削減。これがこの新成長戦略の環境・エネルギー、いわゆるグリーンイノベーションの二〇二〇年までの目標です。
○山本(幸)委員 だから、付加価値をこういう雇用者で割るとそういう取り分になるんじゃないですか。そんなことができるんじゃないですか。
では、そうじゃない、私の解釈がおかしいというのなら、それを証明してくださいよ。どう解釈したらいいんですか。
○菅国務大臣 つまり、新規市場が五十兆円というのは、もちろん付加価値も含まれていますけれども、それ以外のいろいろな要素も含まれるというのは当然じゃないでしょうか。
○山本(幸)委員 では、付加価値以外で何ですか。
○菅国務大臣 私は大学では経済をやっておりませんけれども、普通に言う場合には、付加価値以外に、例えば材料費とか、中間的ないろいろなものが入っているんじゃないでしょうか。当然じゃないですか。
○山本(幸)委員 コストになるようなものが入ってそうなるというわけですね。
では、それはまあいいや。これは、要するに、そういうきちっとした分析までできていないということがはっきりわかったので、今度詳しくやるということですから、ちゃんと示してください。詰めたことをやっていないということですよ。大したことないという話だ。役人の作文だ。
そこで、もう一個聞きます。一番大事なところ。名目成長率三%なんですね、目標が。これは、そう簡単に達成できるものじゃないんです。
例えば、名目成長率の来年度の見通しは〇・四%ですね。その後どうなるかというと、これはこれから出るんだろうが、菅大臣が提出した、二十二年度予算の後年度歳出・歳入への影響試算、財務省が出した。大体、去年のマクロモデルからきているんだけれども、そこに一応のものが書いてあります。それを見ると、二〇一〇年度は〇・四、二〇一一年度は一・七、二〇一二年度は二・〇、二〇一三年度は二・二と見てある。これは、財務大臣、あなたが出したんだからね。
これを見ると、名目成長率の当初四年間の平均は何%になるかというと、一・五八%です。そうすると、十年間の平均で三%を達成するためには、残り六年の平均で四・四三%の名目成長率がないとできないんだ、毎年平均で。
四・四三%の名目成長率がどうしたら達成できるか。実質、潜在成長率が今非常に低い。これについては言いません、詳しく今度、別途やりますが、実質成長率、まあ二%ぐらいがせいぜいでしょう。そうすると、物価で二・四%、つまりGDPデフレーターで二・四%ないとできないんだ、これは。GDPデフレーターと消費者物価の関係はいろいろ動くんだけれども、大体、GDPデフレーターの方がちょっと下。そして、消費者物価指数の方が上に行くことが多い。今回みたいに、があっとショックが大きいと反対のこともありますが。
そうすると、私のラフな計算でいえば、これを達成するためには消費者物価指数は三%以上にならないとだめだ。こんなこと日銀が受けると思いますか。こんなことできますか。菅大臣、どうですか。
○菅国務大臣 いろいろある種の仮定を置かれるのは結構なんですが、後年度の影響というのは極めて機械的にその数字を延長して出されているということは、もちろん、山本議員もそういう職責におられたからおわかりだと思います。
例えばの話、過去の例でいえば、税収見通しなども後年度がかなり高い水準に書かれていたわけですけれども、現実は、御承知のように、二十一年度も見通しよりも大変下がりました。逆に言えば、私たちは、その機械的な計算の値は、予算の審議の中で出すようにと言われましたから従来の方式で出しましたけれども、まさにそのままいったのでは三%の成長にならないということはそのとおりですよ。
ですから、そのままいかないようにするには何をすればいいかということで、成長戦略を出し、またこの予算も含めて、こういうことを実行する中でそういう機械的な延長上にならないようにしていきたいという中で、目標値として三%を掲げているわけです。
○山本(幸)委員 全く答えになっていないんだけれども、それは機械的な試算ですよ。だけれども、あなたは、もうすぐ六月までに出すんでしょう。これとそう違ったものを出せますか。そんなもの出せませんよ。(発言する者あり)
私は、言葉の遊びなんかどうでもいいんだよ。私が信頼するのは緻密なロジックと数字なんだ。(発言する者あり)だから、数字で言っているんだよ。簡単なことじゃありませんよ、四・四三%、残り六年でやらなきゃいかぬのだから。
このためには、大事なことはデフレの克服ですよ。マイナスがずっと続いていたら、こんなことできないんだから。日経センターの試算では、十年間デフレだと言っていますよ、十年間デフレだと。(発言する者あり)何もわからないのが何か言っているけれども、そう出ているんだよ、数字が。数字しか僕は信用しない。(発言する者あり)間違えていない。
そこで、デフレ脱却が大事なんだけれども、あなたは去年の十一月にデフレ宣言をやりましたね。菅大臣、デフレとは何ですか。定義してください。
○菅国務大臣 先ほども申し上げたように、私はそういう言葉の定義をすべて知っているわけではありませんけれども、通常を言えば、物価が下落をしていく状況をデフレだ、こういうふうに認識しております。
○山本(幸)委員 物価が下落していく状況。一度だけ下落したものをデフレと言いますか。
○菅国務大臣 これを当時事務方にいろいろ聞きました。基本的には、たしか二〇〇一年当時にもデフレ状況に入ったということを言い、その後、デフレ脱却の宣言がないまま一時的にはデフレの状況がやや緩和したわけですけれども、この二年ほどの中で、たしかQEで二度三度続けてデフレ状況、さらには先の見通しとしてもその状況が続くという中で、デフレ状況にあるということを申し上げました。
つまりは、一回こっきりの物価下落でデフレ状況というふうに言う必要はないでしょうが、ある程度継続的な中でそういう宣言をした、宣言というかそういう状況認識を申し上げたということです。
○山本(幸)委員 デフレ宣言をするんだったら、デフレの定義ぐらいきちっと理解してからやってくださいよ。
デフレというのは物価の継続的な下落をいうんですね。そこで、継続的というのはどれぐらいの期間をいうんですか。(発言する者あり)
○海江田委員長代理 御静粛にお願いします。
○菅国務大臣 いろいろな見方があるということも聞いております。二年程度ということを言う人もありますし、国際的に。
しかし、必ずしも、それこそニュートン力学のように、あるいはアインシュタインの定義のようにE=mc2なんというほどしっかりした定義があるとは認識しておりませんが、意見としてはそういう意見がある、二年程度の継続を一つの定義としているところもある、こう認識しています。
○山本(幸)委員 それは結構だと思います。まさにデフレを、定義がぐらぐらしたら議論できなくなるんですよ。だけれども、ある人はデフレと言い、ある人はデフレじゃないと言ったら、議論にならないじゃないですか。そこで、一応の定義をきちっとしておかなきゃいけない。それからいうと、おっしゃったように、IMFは最低二年以上続かないとデフレとは言わないんだという定義を与えて、私はこれで結構だと思うし、そういうことでいく。
次に、では、物価の下落なんですが、物価は何を指すんですか。
○海江田委員長代理 山本委員、もう一度質問を明確におっしゃってください。
○山本(幸)委員 物価の下落、継続的な下落をいうんですけれども、物価とは何を指すんですか。
○菅国務大臣 通常は、ここに山本議員が出されている消費者物価指数、これが一つの物価のまさに指数じゃないでしょうか。
〔海江田委員長代理退席、委員長着席〕
○山本(幸)委員 これがというのは何ですか。消費者物価指数のことを言っているんですか。
○菅国務大臣 通常は消費者物価のことだと思います。
○山本(幸)委員 そこはちょっと注意しておかなきゃいけないんだけれども、物価には基本的に三種類あるわけですね、消費者物価指数とGDPデフレーターと企業物価指数、この三つを大体見るんですが、消費者物価指数だけを見ているとデフレじゃないというような状況になっていることもあるわけですね。本当は、一番いいのはGDPデフレーターでしょうね、全部入れているんだから。だけれども、これは速報性が欠けるからね。だから、通常は消費者物価指数をまず使う。
これで見ますと、一九九一年から企業物価指数は下がっている。それから、九四年からGDPデフレーターはずっとマイナスだ。そして、消費者物価指数は九八年十一月から下がり出して、そして二〇〇八年に一%を超えますね、一年だけ。
この消費者物価指数をもとにして議論するときに注意しておかなきゃいけないことが一つだけある。それは、消費者物価指数の上方バイアスというものであります。これは御存じですか、大臣。
○菅国務大臣 私自身はその言葉の意味は知りません。
○山本(幸)委員 わかりました。
ぜひ知っておいてもらいたいんですが、消費者物価指数というのは、消費者物価三千幾らの品目を集めてやるんですが、五年に一回しか改定しないんですね。そのようなバスケットをつくっているわけです。それを五年に一回しか改定しないから、その途中の年次では本当の経済の実勢はもっと安いものに移っているんですよ、例えばプライベートブランドとか。だけれども、それは消費者物価指数のときには途中では全部完璧には追いかけられないんだ。その結果、消費者物価指数で出てくる数字というのは常に実体の経済よりも上に行くんですよ。だから、消費者物価指数でプラス何%といったって本当はデフレなんだ、そういうことが起こる。
問題は、これは非常に重要な話だから、ぜひ頭に入れておいてください。これがどれぐらいあるかということについてはいろいろ議論があるんですが、実証研究が少し出ていまして、アメリカの場合は大体一・一%ぐらい、日本の場合は日銀の白塚さんというのがかつてやって、〇・九ぐらいあると言われています。ところが、日銀はずっとこれが小さいんだ、小さいんだと言いまくってきて、そして失敗を重ねたんですよ。だから大問題なんだ。
二〇〇六年三月の量的金融緩和解除、七月の金利引き上げをやったときに、私はあのときに、その年の八月にこの改定が行われることになっていた、改定をやるんだからそれを待ってからにしないと、二月、三月の段階ではプラス〇・一とか〇・二ぐらいになっていたわけだ、それは間違えるかもしらぬよと言ったんだけれども、日銀は、いや、上方バイアスは〇・一か〇・二ぐらいしかありませんよと言って強行したわけですね。結局、八月に改定されたら最大〇・六%違っていた、つまり、プラスと言っていたのが全部マイナスになっちゃったんだよ。
つまり、あのときに量的緩和解除をやる条件というのは、消費者物価指数がゼロ%以上になってもとに戻らないということが確認されたということを言ってきたのに、それが全部崩れちゃったわけだ。そこから株がどんどん下がり出したんですよ。それから、翌年になってその影響が来て中小企業がだめになって、二〇〇八年になって大企業がだめになって、それにリーマン・ショックが後追いしたわけだ。
だから、日銀が失敗を犯す最大の理由がこの上方バイアスにあるんだから、ぜひ頭に入れておいてくださいということであります。
そこで、ちょっとデフレの問題を、せっかく厚労大臣に来ていただいているので。デフレの問題は雇用と関係するんですね。大臣、フィリップス・カーブというのは御存じですか。
○長妻国務大臣 デフレになると失業率が上がる、インフレになると失業率が下がる、こういうカーブだと思います。
○山本(幸)委員 おっしゃるとおりで、この日本の関係を過去三十年間さかのぼってとってみたら、実にきれいなフィリップス・カーブができ上がるわけですね。つまり、雇用対策で雇用調整助成金とかをふやすとかなんとかいろいろやっていますが、根源的な失業対策というのはデフレを解消することなんですよ。これがなくて失業対策なんていろいろやったってだめなんだ。
それからもう一つ、大臣がせっかくいらっしゃっているのでお伺いしますが、デフレは年金生活者に対して非常に厳しくなるんですね。年金の物価スライドというのがありますね。それは大体どんなものか、ちょっとお願いします。
○長妻国務大臣 年金については、これは御存じのように、特例法というのがございまして、通常、デフレになって物価が下がると年金額もスライドして下がるということなんですけれども、この特例法がありますので、本当はマイナス改定すべきところ、今はそれをしていない、こういう状況でありますが、一般的には年金の受給額に影響するというものです。
○山本(幸)委員 そうですね。インフレ率に応じて、消費者物価指数に応じて、年金というのは、消費者物価指数が上がれば上がるし、下がれば下がるんです。過去三回、もう既に年金は下がったんですね。本当はもっと下がっているんだけれども、ちょっとそれを特例でとめているわけだ。だけれども、今度は上がるときにその分は返すまで上げないんだから。つまり、年金生活者というのはこのデフレによって年金が減っているんですよ。
最大の被害をこうむっているのが年金生活者だということをしっかり理解しておかないとだめだということでありまして、長妻大臣、もう結構です。
そこで、いよいよ本題、日銀総裁とやりたいと思います。
日銀総裁へまずお伺いしますが、あなたの年収は幾らですか。
○白川参考人 山本議員の御質問をずっと拝聴しておりましたけれども、広範な論点を扱っておられますので、日銀総裁の見解いかんというのは、デフレについてどういうふうに思っているかという基本認識だという……(山本(幸)委員「そんなことは聞いていない、それは後から聞くから。年収は幾らですか」と呼ぶ)
○鹿野委員長 山本君、改めて質疑を行ってください。
○山本(幸)委員 その議論はこれからやりますから。
まず、日銀総裁、あなたの年収は幾らですか。
○白川参考人 私の年収は、日本銀行のホームページで公表しております。私も含めまして、役職員の報酬の決め方につきましては、これは政策委員会で決定して、決め方も公表しています。それから、その数字も公表しております。
○山本(幸)委員 公表しているならちゃんと数字を答えてもらいたいと思うんですが。
各年収は、総裁は三千四百九十二万、アメリカのバーナンキの倍ですよ。副総裁二千七百五十九万、審議委員二千六百四十六万、理事二千百三十二万。理事でも国会議員より高いんだね。大変な高額ですよ。それだけ、アメリカのバーナンキの倍もらっていて、デフレがいまだに解消できないというのは何なんだということですよ。(発言する者あり)ちゃんと仕事をしてもらいたいということですよ。
そこで、きょうお配りしていますが、この表は尊敬する池田元久先生が出したものと同じであります、あるいは渡辺喜美さんが出したものと同じでありますが、リーマン・ショックから一年間、あの百年に一度という危機に対して各国の中央銀行は危機感を持って物すごい対応をしたんですね。つまり、イギリスの中央銀行は一四〇%以上資産をふやした。FRBは一三〇%ぐらい、一時期は一五〇%ぐらい行ったけれども、ふやした。欧州中銀が二十数%。それで、我が日銀はほとんどふやしていない、五%。何もやらなかったということですよ。出口戦略などと言っているけれども、入り口にも入っていないんだ。
その結果、景気は大幅に落ち込み、ようやく今輸出で持ち直しているけれども、物すごい景気後退を起こして、デフレが深刻化したんです。何で各国並みのことをやらなかったんですか、日銀総裁。
○白川参考人 お答えいたします。
一昨年秋のリーマンの破綻以降、米欧の中央銀行のバランスシートが大幅に拡大したということは、山本先生御指摘のとおりであります。
ただ、これは、例えばアメリカを考えてみますと、アメリカの資本市場、これが大きく機能を低下した、もうほとんど取引が成立しなくなったということをそのまま反映しております。アメリカの場合、資本市場での調達が民間の調達の約八割を占めております。このマーケットがほとんど機能停止になりました。その結果、アメリカの中央銀行は、不幸にしてもう中央銀行が信用の仲介をやるしかない、そういう状況に追い込まれてしまいました。
それで日本は、もちろん大きな問題に直面しましたけれども、これは、前回の金融危機の後さまざまな努力をした結果として、今回は相対的に金融機関の、あるいは金融市場の傷みは小さかったわけであります。むしろこれは、日本の金融システムが相対的に健全性を確保した、その良好なパフォーマンスがここに出ているというふうに私は認識しています。
ただ、そう申し上げた上で、中央銀行として、一昨年のリーマンの破綻以降いろいろなことを行いました。これは、日本の金融市場の状況に即してさまざまな施策を打ちました。
二、三例を申し上げたいと思いますけれども、一つは、他の中央銀行と協力しましてドルの資金供給オペレーションを行いました。これは、グローバルに活躍する企業にとっては、金融機能を回復する上で大変大きな効果があったと思っております。それから、CP、社債の買い入れを行いました。それから、ほかの中央銀行が行っていなかった金融機関の株式を買い入れるということを行って、何とか金融機関の信用仲介機能の低下を防ぎました。
したがいまして、私としましては、日本のこの状況に即して、中央銀行として最大の貢献をしたというふうに思っております。
最後に、先生が中央銀行のバランスシートの大きさということに焦点を当てて御質問なさっていますので、それに即してお答えいたします。
日本銀行は、実は、今回の金融危機以前から、既に中央銀行のバランスシートを大きく拡張しておりました。その結果として、どうもその拡張の仕方が目立たないという傾向がございますけれども、GDPに対する比率で申し上げますと、リーマン破綻以前は、日本は二〇%程度、アメリカは六%、欧州は一六%でございました。昨年十二月時点では、日本は二六、米国は一六、欧州は二一でございます。
このように、日本銀行のバランスシートは、先生お尋ねの中央銀行のバランスシートの比較でいきますと、実は現在でも主要国では一番大きな中央銀行に現になっているということでございます。
○山本(幸)委員 今の日銀総裁の説明について、菅大臣、納得されますか。
○菅国務大臣 私も、何度か政府の経済対策を打つ中で、例えば十二月の一日には、政府の方針が出た日の午後に日銀の臨時の政策決定会合が開かれまして、一定の金利、三カ月物の金利を〇・一にする、そういう措置もとっていただきました。
バランスシートの問題について、今総裁が言われたことの大きい方向性は私は納得できます。つまりは、日本の金融市場というか金融の分野は、かつて土地バブルの後に、私も当時、それこそ池田議員とかいろいろな議員とともに金融再生法を野党として提案したときの代表か幹事長をやっておりましたけれども、そのときに比べれば、今回のリーマン・ショックは、日本の金融という制度に対してのダメージは相対的には諸外国に比べて低かった。しかし、そのことが、その後の特に輸出に対して与えた影響は、場合によってはどの国よりも逆に大きい、そういう中での今日の状況だと。
ですから、そういう意味で、先ほど日銀総裁が、ある意味で金融に対するダメージが欧米に比べてそれほど大きくなかったという認識を専門的なことも含めて言われましたが、その部分については、私は私なりにある程度納得をしているところです。
○山本(幸)委員 納得しちゃだめなんだよ。これから議論しますから、よく聞いておいてくださいよ。
まず、バランスシートが比率が小さい。これはどうして小さいんだよ。
それは、名目GDPが二十年前から全然ふえていないからですよ。日銀の政策でデフレがずっと続いて、二十年間GDPがふえなきゃ、分母が小さければ比率が上がるに決まっているじゃないですか。それを、ほかの国は順調に三、四%成長していたんだ。だから、GDPの分母がふえているから、そのバランスシートの比率が小さいだけの話で、バランスシートの比率が大きいというのは日銀の政策の失敗だということなんですよ。それがわからないんですか、日銀総裁。
○白川参考人 まず、日本銀行の金融政策の運営でございますけれども、金利とそれから量に分けて御説明いたします。
金利については、既に、短期金利は〇・一%ということで世界で最も低い金利水準を維持しております。
量につきましては、日本銀行はいつでも資金を潤沢に供給する用意があるというふうにいつも申し上げていまして、そういうふうなオペレーションを行っております。したがいまして、金融機関が量が制約になって貸し出しができないという状況はつくらないようにしておりますし、現実に金融機関からもそういう声は聞いておりません。
それから、中央銀行のバランスシートをもって判断するという議論でございます。
現実に、日本銀行のバランスシートは、これは、名目GDPだけではなくて、バランスシートそのものも拡大いたしました。その上で、バランスシートをもって金融政策を議論するという議論の仕方についてでございます。これは、確かに、かつては山本先生がおっしゃったような議論も一部にございました。ただ、今回のこの経験を経て、そうした議論は随分変わっております。
例えば、FRBのバーナンキ議長が、繰り返し、FRBのバランスシートのサイズでもって、規模でもって自分たちの政策を判断しないでほしいということを全く同じように言っております。それから、かつて日本銀行を批判した海外の有名なエコノミストの中には、かつて自分はそういうふうに言ったけれども、実はそういう話ではなかったというふうに今は自分は反省しているというふうに言っている方も随分いらっしゃいます。
そういう意味で、私自身は、もちろん量について潤沢に供給する用意はございますけれども、量だけでもって判断するという議論については必ずしも納得しておりません。
○山本(幸)委員 サイズで議論すべきじゃないとかそんなことはいい。だから、最初でそんな、比率が大きいからといって威張る話じゃないでしょう。それを言いなさんなというんだ。(発言する者あり)それはこれからやりますから、心配しなさんな。
それで、次に、これはちょっと大臣の指摘したことなんだけれども、これは非常に重要な問題ですが、日本銀行は、各国、欧米では金融システムが崩壊状態にあったのでああいうことをやった、日本では金融システムというのは比較的安定していた、だから何もしませんでしたよという話なんですね。これは、いわゆる日銀流理論というところに入るんだけれども、非常に問題がある。つまり、日銀というのは、自分の相手にしている銀行、短資会社、まあ金融機関だ、そこしか見ていないんだよ。そこのところが安定して問題がなければ動きませんよと。
ところが、大臣がおっしゃったように、実体経済は大きく傷ついたんですよ。輸出も激減した、失業もふえた、デフレが深刻化した。この金融機関以外の実体経済のところを全然見ないで金融政策運営をやるというのは非常に問題があるんですよ。ここについてどう思いますか。
○白川参考人 山本先生御指摘のとおり、金融政策を運営するに当たりまして、金融機関だけを見て判断するということは、これはもちろん適切ではございません。私どもは、金融機関だけではなくて、一般の企業、それから個人も含めまして、民間の経済主体全体がどういうふうに現在あるのか、今後どういうふうになっていくのかということを、細心の注意をもって情報を集めております。
その上で、金融政策をどう運営するかということでございますけれども、主としてこれは、資金の量をコントロールすることを通じて金利に影響を与える、あるいは量に影響を与えるということによりまして金融機関が主たる経路になるということは、そのとおりでございます。
ただ、今回は、先生御指摘のとおり、その先の企業の問題が大きな問題だということも、我々は十分認識しております。その結果、ふだんは日本銀行は行わない、例えば、先ほどの金融機関の株式を買い入れるということをしたのも、実は、この株式のリスクが大きいがために、大きいと認識しますと金融機関自身が貸し出しをしにくい、最終的にお金が回りにくくなるという状況になることを懸念しまして、こういう措置も行いました。したがいまして、金融機関だけを見ているわけではございません。
最後に、民間の企業あるいは個人に幾らお金が回っているかという、これはマネーサプライというふうに呼んでおりますけれども、このマネーサプライの伸びは、実は、日本、それから欧州、それからアメリカで、リーマン破綻前後、この一、二年でどういうふうに変化したかといいますと、日本は、むしろこの間は、他の国と違って上がっております。
そういう意味で、日本銀行の金融政策は、もちろん金融機関を中心に運営するのは、これは仕組み上そうでございますけれども、その先についても十分注意して行っております。
○山本(幸)委員 見ていると言っているけれども、本当はやっていないんだよ、見ていないんだよ。株を買ったとか、社債、CPを買ったとか、微々たるものじゃないですか、アメリカに比べれば。百年に一度の危機、これは昭和恐慌に匹敵するというぐらいの危機。昭和恐慌だって、輸出ががんと落ちたから恐慌になったんだからね。それに対して、全然日本銀行は危機感が足らない、やっていないんですよ。
次に行きますが、では、あなたは金利は世界で一番低いと言った、〇・一%。本当に金利が低いんですか。それは名目金利が低いだけじゃないか。金利というのは、あれは企業が投資をするかしないかを決めるのは実質金利ですよ。実質の、正確に言えば、予想実質資金調達コスト、実質金利プラス、リスクプレミアムを考えなきゃいけませんが、簡単に言って、実質金利は物すごく高いんだ、日本は。だって、デフレになっているんだから。企業の実績、これは本当は期待で、期待実質金利をしなきゃいけないが、それはなかなか計算できないからね、実際に起こったもので簡単にやっただけでも。
では、企業は、企業物価上昇率で考えるとすれば、企業の平均約定金利一・六から企業物価上昇率マイナス四・九を引くと、プラス六・五だ。では、家計はどうか。家計は、住宅ローン金利二・四から最新の消費者物価上昇率マイナス一・七を引くと、四・一ですよ。投資をするとき、一番恐らく意味があるだろうなと思うのは、それは、国債の、財政の資金でもいいんだけれども、長期国債利回り一・三から、きのう発表されたGDPデフレーターで見ればマイナス三でしょう、四・三だ。これはバブルのときと同じぐらい高いんですよ。アメリカは非常に低いんだね、あるいはマイナスですよ。どこが世界一低いんですか、金利が。
○白川参考人 山本先生が御指摘のとおり、名目金利とそれから実質金利を区別して議論することが大事であるという点はそのとおりでございます。
ただ、金利は、これはマイナスにできない以上、中央銀行としては、この非常に低い金利を粘り強く続けることによって、経済を刺激し、その結果、物価も上がり、その結果、実質金利も下がっていくという道筋を目指す以外には方法がないということでございます。そういう意味で、日本銀行としては、金利は下げられるところまで下げて、かつ、この現在の低い金利情勢、極めて緩和的な金融情勢を粘り強く続けていくということを明確にしております。
その上で、今度、実質金利の比較でございます。最後に山本先生が長期の金利についてお話しになりましたけれども、現在、日本の長期金利は、もちろん変動しておりますけれども大体今一・三%、欧米は大体三%台の後半でございます。つまり、金利差、長期金利の差が二%以上あるということでございます。同じように、物価も今、日本と欧米では二%あるいはそれよりも若干多い差があるということでございます。
そういう意味で、もちろん、予想インフレ率を正確に計算することは難しいわけですけれども、しかし、現実の長期金利を見てみますと、実質金利において日本だけが低いということでは必ずしもございません。
○山本(幸)委員 それは納得できない。だって、アメリカは物価はプラスなんだからね。では、三・五で、僕はちょっとアメリカのGDPデフレーター知らないけれども、消費者物価指数を見たら二・五ぐらいだ、三・五から二・五を引けば、一じゃないか。あるいは短期だったら、ゼロから〇・二五でやっているんだからマイナスですよ、短期の実質金利は。日本はプラスじゃないか、デフレなんだから。一番高いんですよ。
実質金利が高くて需要が起こるなんというのは無理なんだ。こういうときは、思い切ってお金の量を欧米並みにがんとふやすということをやるしかないんですよ。だけれども、日銀は名目金利に固執するから、それができないんだよ。〇・一%、何で固執する必要があるんだ。かつてのゼロ金利にして量的緩和にしたらいいじゃないですか。どうしてしないんですか。
○白川参考人 まず申し上げたいことは、日本銀行として、現在のこのデフレ状態から脱却し、できるだけ早く物価安定のもとでの持続的な経済成長、そうした軌道に日本経済を戻したいというふうに強く願っております。そのために、先ほど来申し上げていますような金融緩和政策を粘り強く展開していくということでございます。
少し敷衍して申し上げますと、短期の金利、これは日々の金利、オーバーナイトの金利と呼んでいます、これは今〇・一でございますけれども、三カ月の金利について、これを固定金利〇・一で資金供給を行うというオペレーションを始めました。
それから、現在のこの緩和的なスタンスを続けますということを、見通しを照らし合わせながらこうした政策を続けていくということもはっきりさせていますので、これは先々の金利形成にも影響を与えるということでございます。
それからさらに、現在はそうではございませんけれども、万が一また金融市場が混乱するということがあった場合には、日本銀行として果断に行動をするということも繰り返し申し上げております。
その上で、今度、量的緩和ということでございます。
量的緩和という言葉で先生がおっしゃったのは、かつて日本銀行が行ったように、当座預金に目標を設定して、この水準を引き上げていくという政策をなぜとらないのかという御質問であると思います。
日本銀行は、確かにこの政策を二〇〇一年三月以降、二〇〇六年まで採用いたしました。この五年間近くの経験にかんがみまして、この量的緩和政策は、金融システムの安定を維持する上では大きな効果があったというふうに評価をしております。この点は決して過小評価すべきではありません。内外のデフレの歴史を振り返ってみますと、ほとんどは実は金融システムが不安定化したときにいわゆるデフレの怖さが顕在化しております。その意味では、量的緩和は大いに効果があったというふうに思っております。
ただ、これが人々の支出活動を刺激し、その結果物価が上がっていくということになりますと、この効果は非常に限定的だったというのが私どもの評価でございます。これは私どもが量的緩和をやめたその翌日の各新聞の例えば論説を見ても、今私が申し上げたのと同じような評価を各論説が行っておりました。
今回、アメリカが、確かにバランスシートは拡張しておりますけれども、バーナンキ議長は量的緩和政策という形での評価はしておりません。バランスシートの拡張は、これはあくまでも、先ほど申し上げたような、いろいろな資本市場に対して中央銀行が代替せざるを得ない状況になった結果としてバランスシートが拡大している、当座預金の量がふえているだけであって、これが経済に対する刺激度を示すものではないんだということを繰り返し繰り返し言っております。
そういう意味で、日本銀行だけが何か特殊なポジションをとっているというわけではございません。
○山本(幸)委員 全く納得できません。
海外は、それは量的緩和という言葉は使っていませんよ。信用緩和と言っているんだな。それでいいんですよ。だけれども、マネタリーベースを物すごくふやしているんだよ。これをふやさなければ、しかも貨幣乗数が非常に小さい場合にはよりふやさなきゃ実体経済に行かないんですよ。マネーサプライがふえないんだ。大体、日本も歴史的に、マネーサプライが四・四%を切ればデフレになるという歴史的なあれがあるんだから、あなた、ふえたといったって、だってまだ二、三%ぐらいしか出していないじゃないか。
量的緩和について、あなたは確かにあなたの書いた本で、このでっかい本を読みましたよ、それで、要するに、量的緩和は金融システムの安定化には資したけれども、そのほかに余り効果はなかった、それが日銀の公式見解だというんですね。本当にそうか。
実は、この問題について新しい研究成果が出まして、これは大阪大学の本多先生が、黒木さんという人と立花さんという人と一緒に実証研究をやった。これは初めての量的緩和の効果なんですが、これは英文しかないのであれなんだけれども、こういうのをやるときは、いわゆる多変量変数回帰分析というのでやるわけだな。それを丁寧にやっていますよ。
従来、日銀が、あなたの本にも引用されていたけれども、効果がなかったという研究成果の問題点は、古いデータも一緒に入れている、一九八五年からのデータを入れているからだめなんだと。
これは、二〇〇〇年からの、本当に量的緩和をやったというときからのデータでやっていまして、テストもやって、いろいろな検証をやっているんです。そこで言われているのは、そこではっきり結果が出ているのは、量的緩和というのは明らかに効果があったと。それは、GDPに行く生産を拡大することに効果があった、チャネルは株価の上昇を通じてだと、その回帰分析から出ているんですね。
量的緩和をやると、一カ月して株価が上がり始める、それで六カ月後にピークになる、そういう線が描けます。生産の代替である鉱工業生産をとっているんだけれども、これは二カ月後から効果があらわれ始めて、そして八カ月にピークになる、この結果がはっきりと出ていますよ。もう報告されている。
ただし、おっしゃったように、物価にはなかなか時間がかかるんだね。それから、物価もちょっと上がる、為替レートもちょっと下がるんだけれども、統計的に意味があるまでには、まだこのデータでは出ない。だけれども、統計的に有意に、株価等のチャネルを通じて生産には確実に効果があると出ているんですよ。
こういう結果が出ていて、ちゃんとやればいいじゃないですか。今、だってGDPギャップがあるんだから、株価を上げて生産させるのが一番いいんじゃないですか。
○白川参考人 今御指摘の本多先生の研究でございます。
たまたま本多先生は留学時代の友人で、私は非常に親しくしていまして、実は、この先生の研究、その論文のもとの発表をたまたま先生がされた場に私は、これは京大時代ですけれども、出ておりまして、先生の研究も勉強させていただきました。
私自身は、現在は大学の教師ではなくて政策当局者ですから、自分がかつて正しいと思ったことも含めて、ある特定の理論にドグマティックに臣従するということは決して望ましくない。私は、最終的に、実務家、政策当局者ですから、そこはオープンにいつも考えていきたいというふうに思っています。
その上で、私もいろいろな、スタッフにお願いしまして、実証研究について目を配っております。確かに、本多先生はそういう研究を出されています。ただ、私どももまた、量的緩和の時期以降に限定した形で、先生がおっしゃったそういう形でのいろいろな分析を行っておりますけれども、そうした分析結果も踏まえて、私は先ほど申し上げたようなことを申し上げています。
これは、日本だけではなくて海外の中央銀行にとっても、実は今回、量的緩和を採用すべきかどうかということが大きな議論になりました。したがって、日本の研究は実は格好の研究対象になっております。そうした海外の中央銀行の分析結果を見ても、今先生がおっしゃったような研究結果を出しているものは、私は寡聞にして、もしかしたらあるのかもしれません、ないとはもちろん申し上げませんけれども、そういう研究が多いということは少なくとも聞いておりません。
○山本(幸)委員 あなたは学者ではなくて実務家で、ある一つのものに従えないと言っているけれども、私から見ると、あなたはこの本に書いたことしかやっていないんですよ。
この本には、量的緩和というのは金融システム安定化に効果があった、それは時間軸効果というのだけはあった、こう書いてあるな。だから、時間軸、いつまでもやりますからというある程度の約束をするものだから、それでみんなが安定して経済行動をやったという、その効果だけはあったといって、時間軸効果だけだというのは量の大きさというのは余り関係ないから、だからゼロ金利にする必要はないんだ、金利はプラスの金利で持っておいて構わないんだということで、あなたは〇・一%というものに固執しているわけでしょう。あなたが言っている自分のドグマに、それを維持しているだけじゃないですか。
それからもう一個は、こう言っているんだ。デフレスパイラルにならなければいいんだ。デフレが起こっても景気後退というのが一緒に起こらない、つまりデフレスパイラルというのがなければデフレでもいいんだという議論をしているんだね。それで、だれかの成果を言って、デフレというのは経済後退というのと一緒になることはほとんどないというような話をしていて、それは大恐慌のときは例外だ、そういう研究成果を引用して、だから、景気後退がなきゃデフレでもいいんだということでずっとやっているんですよ。つまり、あなたは自分の理論に固執した政策しかやっていないんですよ。おかしい。
だって、この量的緩和、世界じゅうがやって、デフレにしていないんですよ。日本だけだよ、デフレがずっと続いているというのは。それで、これが続いている限りは、菅さんの成長戦略なんてあり得ないんだからね。これを一年か一年半で解消しなかったらできませんよ、三%成長なんて。だから、気違いみたいに金を出さなきゃいけないんです、今。
今、GDPギャップが三十五兆円ぐらいあると言われていますね。物の世界で三十五兆円の超過供給の状況だ。そうすると、お金の世界ではどうなるんだと。ワルラスの法則というのがありますね、ワルラスの一般均衡。これは、あなたは御存じでしょうけれども、どういうことになるかわかりますね。
○白川参考人 先ほども申し上げましたとおり、私は、決して自分の理論にこだわっているというわけではございません。自分自身は理論を編み出すほど頭もよくありませんので、内外のいろいろな学者あるいはエコノミストの声を、研究を総合して、自分なりに判断していきたいということでありますから、これからも常に経済の動きを虚心坦懐に見て判断していきたいというふうに思っています。
こういう席でワルラスの法則という言葉をちょっと申し上げるのはあれですが、ワルラスの法則は基本的には経済が完全雇用の世界での話ですから、今先生が議論されているこの不完全雇用、つまり大きな需給ギャップが問題になっているもとでワルラスの法則を当てはめてというのはどうかなという感じはいたします。
○山本(幸)委員 私はそう思わないんだけれどもね。だって、ワルラスが言っているのは、ある分野で超過供給があったら、他の分野では超過需要が起こっているということを言っているわけでしょう。それで、全体を見れば均衡しますよ、そういうふうに価格が調整しますよと言っていると私は理解しているんですよ。それからいうと、財の世界で三十五兆円の需給ギャップがあるんだ、つまり供給超過ですね。そうすると、お金の世界ではその分だけの超過需要があるんですよ。そうしないと、均衡しない。
つまり、世の中の人は、今、一番安心で安全なキャッシュが欲しいんですよ、現金が。そういうふうにみんな動いているから、何か物を持っていたらそれを売って、あるいは、買いたいものがあろうとそれを買わないで、とにかくキャッシュあるいはキャッシュに近いものを持とうとする意欲が強過ぎるんですよ。だから、お金の超過需要が起こって、その逆が、物の世界で超過供給になっているわけだ。これが原理じゃないですか。
だから、安心、安全なキャッシュというものをそんなに欲しがっているんだから、これを十二分に供給してやらない限り、動かないんですよ。これが量的緩和のやるべきことですよ。
マッカラムという人がいまして、マッカラム・ルールというのがある。これは、必要なマネタリーベースでの、名目成長率でどれだけのマネタリーベースが要りますかというのを計算するのがあって、欧米で参考にしていると言われているわけですね。これでいうと、例えば、これは流通速度の平均を何年でとるかによるんだけれども、一年でとると二〇%、二年で一五%、三年だと一〇%。少なくとも一〇%以上はマネタリーベースをふやさない限り、名目三%成長というのは達成できない。
それから、本多先生の研究は一つだと言いましたが、別の、これは文科省の数理統計研究所でやったものがあるんだけれども、どうしたらデフレをなくせるか、どれぐらいマネタリーベースを出したらなくせるかという研究があって、ちょっと古いんだけれども、それだと、まず三〇%一気にふやせ、そして半年続けろ、それからその後一年半、一五%ふやしていけば、そうすると二年後に物価はプラスになりますよという成果も出ているわけです。
こういうマッカラム・ルールとかあるいはそういう研究成果を無視して、そして、リーマン・ショックの後、三カ月も四カ月もたってからようやく金利を下げたり、一回やめると言ったものをもう一回形を変えてやり直したり、ちょぼちょぼとやって、何をやっているんですか。デフレを本当に解消しようとする気があるんですか。どうですか。
○白川参考人 まず、一番最初におっしゃいました、安全確実な資産である中央銀行の当座預金、これを潤沢に供給すべきだという議論でございます。
まさにリーマン破綻直後はそういう状況が生じました。つまり、みんなだれもが信用できない、したがって安全確実な資産で自分の金を運用したい、まさにそういう状況でございました。そのときに、日本銀行は潤沢に資金を供給いたしました。デフレを防ぐ上でこれが最も重要だという点については、その点については私は議員と全く同じでございまして、そういう不安があるときに、まさに金融システムに不安がある、そういうときにたっぷりお金を供給する、これがデフレを回避する最大の要諦だというふうに私は思っております。
その上で、今度、マッカラム・ルールということについてお話がございました。先生、これは欧米で参考にされているというふうにおっしゃいましたけれども、私が知る限り、欧米で参考にされていることはないように思います。
これは繰り返し今申し上げましたけれども、欧米の当局者が、リザーブ、当座預金の量でもって判断しないでほしいということを言っていることにあらわれていますとおり、これはむしろ、金融システムの不安が高まるときには、みんなのその不安の度合いをあらわすようなそういう指数でございます。そういう意味で、これに依拠して政策をやっているということは、私はないと思います。
それから、デフレ脱却に向けて日本銀行は本気かと。これはもちろん真剣に取り組んでおります。これはなかなか時間のかかることでございますけれども、デフレの脱却というのは、日本銀行だけでできることではございません。しかし、日本銀行でできることはしっかりやらないといけないというふうに強く思っております。これは、愚直に、粘り強くやっていきたいというふうに思っております。
○山本(幸)委員 当座預金の量じゃないと言っている、それはそうですよ。だって、目標は物価の安定だからね。そうなると、では、物価の安定目標をつくってもらわなければいけない。
それから、デフレの脱却は日本銀行だけでできないんだったら、日本銀行総裁をやめてくださいよ。日本銀行ができなかったら、だれができるんですか。デフレというのは、物とお金の関係で決まるんだから。各国の中央銀行総裁で、デフレとかインフレをちゃんとコントロールできませんなどと言う人はいませんよ。デフレには絶対しないということを宣言してバーナンキなんかやっているんだから、キングだってやっているんだから。
そこで伺いますが、そういう意味では、インフレターゲット、いわゆる物価の目標というのをしっかり持って、それに向けて日銀は、ちゃんとやらせます、できなかったら責任とらせますというスキームが一番いいんですよ。これを早く導入して一年か一年半でやらせないと、名目成長率三%行きませんよ。
そのときに問題になるのは、日銀が巧妙に言っているのが、この前、物価の安定の理解というのを、ちょっと解釈を変えますなどと言いましたね。マイナスは認めないんだということだけつけ加えた。しかも一%ぐらいが一番いいと言っているんだ。
そうすると、透けて見えるのは、日銀は、ちょっとプラスだけれども〇%に近いか、せいぜい〇・五%ぐらいまでなら、それぐらいにしたいというふうに思って金融政策運営をやろうとしているんでしょう。そうじゃないですか。
○白川参考人 まず最初に、インフレーションターゲティングについての御質問からお答えいたします。
日本銀行の金融政策の枠組みというのは、今先生も御指摘のとおり、一つは、中長期的な物価安定の理解ということを、これを明らかにしまして、それを念頭に置いた上で、いわゆる二つの柱という形で経済、物価情勢の点検を行いまして、これを踏まえて政策を決定していくというものであります。
金融政策の枠組みとして今先生インフレーションターゲティングということをおっしゃいましたけれども、G7を構成している国でいきますと、確かに英国とカナダは、これはインフレーションターゲティングを採用しております。しかし、日本を含めほかの国はインフレーションターゲティングを採用しておりません。
ただ、私はここでインフレーションターゲティングの採用の有無について何か反論をしたいということでは必ずしもありませんで、今インフレーションターゲティングを採用している国もそれから採用していない国も、実は金融政策のやり方は非常に似通ってきているということでございます。
どういうふうに似通っているかということですけれども、第一に、物価安定に関する何らかの目標あるいは定義を、これを数値的に示しているということ、これが第一点でございます。
第二点は、金融政策の効果が発揮されるには、これはラグが一年半から二年近くかかりますので、先行きの経済、物価の見通しを公表するということでございます。
三番目は、その上で、金融政策の運営に当たっては、足元の物価だけじゃなくて、中長期的に経済、物価が安定的に望ましい状況になるかどうか、経済が安定的に推移するかどうか、そうした中長期的な観点を重視しているということでございます。
この三点において、実は、どの中央銀行の金融政策も非常に似通っているということであります。
日本銀行の金融政策の枠組みは、そういう意味で、インフレーションターゲティングを採用しているところのいいところとそれからインフレーションターゲティングを採用していないところのいいところ、すべてを包含した上で、日本のこの環境の中で一番ふさわしいという政策運営の枠組みをつくっているというふうに自負しております。
○山本(幸)委員 逆で、一番悪いところだけをとっているんですよ。
だって、G7で、イギリス、カナダは確かにインフレターゲットを持っている。では、ほかの国は持っていないと言うんだけれども、EUはもうちゃんと持っていますよ。二%で、二%に近いところを目指すと言っているんだ。アメリカは、これは物価と雇用と二つの目標を持たなきゃいけないと法律で決められているものだから、物価だけというわけにはいかないんですね。だけれども、それでも長期的には一・七から二・〇がいいよと、ちゃんと数字を出していますよ。
日本の場合ははっきりしないんだよ。理解であって目標じゃないんだ。これじゃだめなんだ。しかも、その目標がずっと〇%台というのを、つまり、ゼロインフレをやろうとしているのが日銀なんですよ。
ここが、さっき言った上方バイアスとの絡みで非常に問題になるんです。上方バイアスで、〇・五以下などというのは実態はマイナスなんだから。少なくとも〇・五以上のCPIコアでいかせないと、デフレから脱却したことにならないんですよ。
だから、大事なことは、ああでもないこうでもないと言っているのは、日銀はとにかく何でも責任をとりたくないんだよ。無責任であることについて雄弁なんだ、物すごく。それじゃだめなんです。
これは、前回の日銀法改正のとき、私は、失敗したと思う。これは自民党の失敗だ。これは認める。それは、中央銀行の独立性というのは二つあるんだ、目標の独立性と手段の独立性と二つあって、各国が独立性と言っているのは、手段の独立性を中央銀行に与えましょうと言っているんだよ。目標は政府が決めるんですよ。そうじゃないとおかしくなるんです。そうじゃないことをやっちゃったから、日銀は常に自分の無責任さを正当化する日銀流理論にガードされて逃げるわけですよ。
だから、菅大臣、最後に、あなたが本当に政治的リーダーシップを発揮しようとするのなら、きちっと日銀に、最低、できれば一だな、一から三ぐらいのインフレターゲットをちゃんと政府が目標を設定して、それを一年か一年半で達成しろと。本当は日銀法を改正してそれをするのが一番いいんだけれども。でも、やろうと思えばできるわけでしょう。これをやらない限り、あなたは政治的リーダーシップを発揮したことにならないし、名目成長率三%というのは達成できませんよ。それをやる覚悟はありますか。
○菅国務大臣 いろいろな議論、大変参考になる議論をしていただいて、ありがとうございます。
この間も日銀との間でいろいろなコミュニケーションを図っているつもりです。そういう意味で、私も、今言われたいろいろな目標を達成するための手段については、やはり日銀は日銀としての独立性というものを認めていくべきだろうと思っています。しかし、政策の方向性とか目的という点では、政府と日銀がある意味で共通の目標を持って進めることが望ましい、こう思っております。
そういう意味で、先ほど一パー、二パーという数字、あるいは上方バイアスという私にとっては大変参考になる御意見も聞きましたが、この間の経緯で聞いているのは、プラスゼロから二%の間、つまりはプラス一程度が望ましいという形で日銀がたしか何月でしたかその態度を示されている。一パーが十分かどうかは別として、私どももやはりその程度を政策的な目標にすべきだと考えておりますので、私の認識は、目標については、一パーそのものの数字が固定化されているわけじゃありませんが、大体そのあたりから、もうちょっとかなと個人的には思わないでもありませんが、そのあたりではほぼ目標としての認識は一致している、こういうふうに私は考えています。
○山本(幸)委員 非常に大事な答弁だったので、ぜひ、しかも一というのは、日銀がずっと低いことをやっていたから、今まで低かったからそれをベースにしているんだけれども、本当は足らないんだ、危ないんだ。だから、一から三ぐらいのものに行かないと間に合わないし、IMFはもう四ぐらいにしろと言っているんですね、今。だから、ここをやって、それを政府が、いつまでに達成しろ、この間については達成しろとしっかりたがをはめないと、日銀は無責任であることについての説明能力は抜群だからね、だまされないようにしてくださいよ。そのことについて菅大臣の政治的リーダーシップを期待して、質問を終わります。
○鹿野委員長 これにて山本君の質疑は終了いたしました。