予算委員会議事録(抜粋) ○ 山本(幸)委員 おはようございます。自由民主党の山本幸三でございます。 私は、今、日本経済の最大の課題は、デフレから早く脱却することである、デフレ脱却を早く確実なものにすることであると考えております。そのことに政治家としての執念を燃やしていると言っても過言でないと思いますが、それは、デフレというのが続くと、経済が停滞して、そして社会にいろいろなひずみを起こすからであります。この当委員会でも格差の問題が取り上げられましたけれども、私は、この格差を広げている最大の元凶はデフレにあると考えているんですね。 デフレは、まさに持てる者はいよいよ強くなって、そして持たざる者がいよいよ弱くなるわけであります。借金をしている人が負担がいよいよ重くなって、現金を持っている人が一番得をする、そういう状況をつくり出すわけでありまして、まさに格差を拡大する元凶であります。 余りこういうことは言いたくないんですけれども、日銀総裁の年収というのは三千六百万以上ですね。副総裁二千九百万以上、二千九百万ぐらいか。先般再任されましたけれども、日銀審議委員の年収というのは二千七百八十万ですよ。八十万円の年収と二千八百万以上の年収、これほどの格差がありますか。大変な格差ですね。しかし、その年収八十万ぐらいの方々の生活をいよいよ脅かすかもしれないようなことはどこで決まっているかというと、年収二千八百万以上の九人の政策審議委員会の議論で金融政策をどうするかによって決まってきているということなんですね。物価の番人、物価について最大の責任を持つ日本銀行のこの責任の重さを十分認識してもらわないと困る。 日本銀行がやることは、年金生活者の年金を下げるようなことを、たとえ一%でもリスクがあったらやっちゃいけないんですよ。私はそう思う。むしろ、少しでも年金は、百円でも二百円でも毎月上がりますよというような社会を築く、そういう金融政策をやってもらわないと困るというのが私の基本的な認識であります。その認識に基づきましてきょうは御質問をさせてもらいたいというふうに思っているわけであります。 そこで、まず最初にお伺いいたしますけれども、こういう議論をするときに一番の問題は、言葉の定義がきちっとなされていないことなんですね。日銀法に物価の安定とありますが、日銀のホームページを見ると、物価の安定とは何かと書いてあるかというと、インフレでもデフレでもない、わけのわからぬことしか書いていないんですね。そういう、きちっと言葉が定義されていないことによって、何をやったらいいかというのがはっきり出てこない、あるいは責任の所在もはっきりしないということが私は最大の問題だとまず思っておりまして、やはりこういう議論の第一歩は、定義をしっかりすることだと思います。 デフレ脱却、政府の基本方針です。日銀も、政策の基本的な目的はデフレ脱却と言っているわけですが、このデフレ脱却というのはどういうふうに定義したらいいのかということについて、与謝野大臣と竹中大臣と日銀総裁にお伺いしたいと思います。与謝野大臣はGDPデフレーターの所管でありますし、竹中さんはCPIの責任者、日銀は企業物価そして金融政策の責任者でありますので、その順番でよろしくお願いします。 ○竹中国務大臣 デフレ脱却の何か明確な法律とか、そういうよりどころになるような確立された考えというのは、残念ながら見当たらないと思います。 その意味では、デフレの要因は何なのか、その要因そのものが取り除かれているということも含めた総合的な判断が必要であるというふうに思っております。 ○福井参考人 山本委員が冒頭におっしゃいました、経済運営について一番大事なこととして認識しておられること、私どもも、物価安定のもとに日本経済が持続的な成長をきちんと遂げる、このことが国民の経済的福祉を最大化する、この道に通ずるというふうに考えておりまして、その点につきまして山本委員と基本的な見解の相違はないというふうに思っています。 その際、もちろん物価指数というものが有用な尺度になるわけでございますが、人々が消費する商品、サービスを対象とし、人々の実感に即したものである消費者物価指数、これが基本的な指標になるというふうに考えております。しかし同時に、その他の物価指標、数多くございます、それぞれに指標の特性もございますが、そうした特性を踏まえながら、その他の物価指標も活用していくべきものというふうに認識いたしております。 ○山本(幸)委員 日銀総裁もデフレ脱却に執念を燃やしているということで、大変心強く感じた次第でありまして、ぜひ一緒にやりたいなというふうに思うわけであります。 ○与謝野国務大臣 二つ要素がありまして、一つは、いろいろな経済指標から見て大丈夫だという判断をする指標の判断の問題もございますし、全体、日本の経済を取り巻くいろいろな状況をも総合的にやはり判断をしてデフレ脱却だということを確認していく必要がありまして、個別の指標の点検ももとより、やはりそこには、総合的な判断というものが必要になってくると私は思っております。 ○山本(幸)委員 ちょっとはっきりしないところもありますが、総合的なということで、先ほどの、少なくとも物価が持続的に下がらない状況である、それはそのとおりだと思いますので、物価が下がらない状況であるというのは、いろいろな指標でゼロ%以上を意味している、そして、全体の経済の状況、そういうものを含めて判断するんだというように理解しておきたいと思います。 それは、例えば、量的緩和解除の条件にCPIが安定的にゼロ%というふうになっているんですが、私は前からゼロ%台というのはまだデフレだという認識をしておりまして、それは、いわゆるコア消費者物価指数、コアCPIには上方バイアスがかかっているからだということが一つの理由でありますけれども、この点については、CPIがどれぐらいバイアスがあるのか、これはいろいろな研究があったんですが、最近の状況も踏まえてどれぐらいバイアスがかかっているというふうに考えるのか、あるいは、このCPIというのは五年ごとで変えるわけですけれども、その辺のことについて、竹中大臣、お願いします。 ○竹中国務大臣 消費者物価指数が持っている上方バイアスがどのぐらいかというお尋ねでございます。 どのぐらい最近で高いかというのは、この八月を見ると明確になるということだと思いますけれども、過去の最近の例だけ申し上げておきますと、平成七年基準から十二年基準に改定された数字で直近の平成十三年のものを見ますと、新基準と旧基準の間では〇・三%ポイントの乖離が出たという事実でございます。その意味では、これが最近の例でいったところの一つの上方バイアスであるということだと存じます。 ○山本(幸)委員 おっしゃるように、消費者物価指数、CPIは、〇・三%出ていても実際はゼロだという意味なんですね。 しかも今度は、GDPデフレーターの場合、原油がきいてきて少し引っ張られるところがありまして、逆にCPIは、最近の原油価格の上昇で上がっている面もあるわけですね。原油価格がこれからずっとこのまま続くということになれば、それは当然なことなんですけれども、ちょっとよくわからない。あるいはもっと上がるかもしれない。今のパレスチナのファタハが政権をとったり、あるいはデンマークの風刺漫画のことが起こったり、イランの核問題が起こったりして、原油価格というのは非常に高騰のリスクがある状況ですね。そういう状況でCPIは確かに上がるのかもしれないけれども、実体経済は逆に大変な悪影響をこうむるおそれがあるわけですね。 しかも、アメリカ経済は住宅バブルと言われていますが、金利を少しずつ上げてきましたから、これは、一般物価の部分ではインフレが起こってくるかもしれない。それに対して金利を上げざるを得ない。上げていくと、今度は逆に、金利の上昇に耐えられなくなって、アメリカ国民の消費者行動を支えている住宅バブルが破裂するかもしれない。そういうことになると、アメリカ経済の好調さ、中国経済の好調さを背景に輸出が伸びて最近の日本経済は回復しているわけですから、これもちょっと危なくなるかもしれない。 あるいはアメリカは、連銀でバーナンキさんが総裁になりました。私もバーナンキさんと知遇を得ているわけでありますけれども、彼は、後ほどお話ししますけれども、いわゆるインフレターゲティング、私は物価安定数値目標政策と言っていますが、これの提唱者、理論的な支柱でありますよね。そういう方が今度連銀総裁になって、一体、どういう連銀としての政策をアメリカ経済を見てやるのか。これは、私は少し様子を見る必要があるんじゃないかというようにも思っていますね。 そういうことをいろいろ含めますと、マスコミ等では三月とか四月とかいう話が出ていますが、基本的に、まずバイアスの話について納得させるためにも、そして、そのほかのさっき申し上げたようないろいろなリスクのことを考えても、少なくとも八月の基準改定までは待たないと、逆戻りする、年金生活者をまたいじめるようなことになるリスクがあると私は考えるんですね。 ○福井参考人 CPIについて山本委員が常日ごろ深く研究を進めておられることに、私どもも大変敬意を表しております。 ○山本(幸)委員 アメリカでも、グリーンスパンさんの英語というのは本当の英語じゃない、よくわからぬ、それを解釈するのは大変なわざが要るんだということで、グリーンスパンは英語をしゃべらないというような記事を私は読んだことがありますけれども、日本銀行総裁のお言葉というのは含蓄が非常に深くて、私も、そのお言葉の背景に何があるのかというのをいろいろ考えるわけでありますが、バイアスについては、十分念頭に置いて判断するとはっきりおっしゃいましたので、私はそのことはよくおわかりいただいているというように思っておりますし、経済実態は確かに十月よりはよくなってきていると、私もそれは思います。 ただ、私の心配は、むしろ逆に、この二月、三月がピークになるんじゃないか、ここからどんどんまだよくなるという背景があるんだろうかということについて疑問を持っていますので。それは、先ほど申し上げたように、原油価格の高騰のリスクがむしろ激しくなっている、それからアメリカ経済のピークアウト、そして下方方向に行くリスクはむしろ高くなっているんじゃないか、あるいは、日本経済の短期循環から見て、サイクルは今非常によくなってきているんだけれども、ピークアウトするのはこの二月、三月じゃないかなということを私は個人的にちょっと感じるものですから、そこのところはよく踏まえて考えていただきたいし、そのバイアスの話も十分念頭に置いていただきたいというように思うわけであります。 ○福井参考人 お答え申し上げます。 それからもう一つは、デフレを脱却すれば満足いくということは政策目的ではない。デフレを脱却した後、本当によりバランスのとれた経済で、よりダイナミクスな経済というところまで運び進めなければ経済政策の目的は達せられない。この二つでございます。 私ども、金融政策は、このすべての過程において経済をスムーズに運営していきたい、政策によって経済に不必要な波を加えないということが、これは金融政策の使命でございます。年度に縛られない等々、我々は、連続線上で政策をやっていけるところに最大の長所がありますので、そのよさを最大に発揮していきたい、こういうことでございます。 そういう意味から申しますと、量的緩和政策の枠組みからの脱却というのは、文字どおり、非常に経済が危機的な状況にあったときに異例な措置として金利機能というものを犠牲にして施してきた政策でございますので、経済が比較的好ましい状況に近づいてきているという段階では、この政策を修正して、通常の金利政策のもとで、今度は、比較的低い金利でその後の経済のパスというものを滑らかにいい方向に持っていくという一連の過程にスムーズにつなげていかなきゃいけないというふうに思っています。 山本委員、先ほど一例として為替相場のお話をなさいました。為替相場というのは、本当に何によって決まるか難しいんですけれども、経済が一連の動きを示していくということを正確に読み取っている一つの市場でございます。金融政策も経済の流れにスムーズに即して適切なタイミングで修正が行われていくということを為替市場が確認すれば、余り一方に偏ったポジションを形成するということが市場自身が難しくなるわけでございます。その点を、日本銀行の政策が何かの事情でずれているということになりますと、そのずれている間、偏ったポジションを持ち、やがてため込んだところで政策修正をすると、一挙にポジションの巻き戻しが起こってかえって市場が混乱し、経済にも相応に悪い影響がはね返ってくるということでございますので、これは金融政策としてとるべき道ではない。 ○山本(幸)委員 前半の部分は全くそのとおりだと思いますが、一番最後のところでちょっと気になったのは、為替相場については確かに難しいわけですが、これがある意味で一方的なポジションを持っていた方が、かえって政策変更したときに大きな変動を起こすというような趣旨をおっしゃったと思います。 ○福井参考人 ただいまの私のお答えは、ごく一般論として申し上げました。 ○山本(幸)委員 それが難しいということであれば、必ずしも日本銀行の量的緩和政策で一方的にそういうポジションができているということを言っているんじゃないんだなというふうに理解しておきますが、まさにおっしゃったように、不必要な波を生じさせないようにすることが金融政策として非常に重要だ、まさにそのとおりだと思いますので、ここのところはこれ以上ぎりぎり詰めませんけれども、十分私の言いたいこともよく理解していただければというふうに思います。 そこで、ちょっと話を進めますが、最近、名目成長率と長期金利の関係の話が随分出ておりまして、これはなかなかおもしろい議論だなというふうに思っているんですね。高い名目成長率を持って、あるいは、高い成長率を目指してやることによって自然増収が上がるから増税は少なくて済むという議論のように新聞は書いておりますし、一方、いや、長期金利というのは名目成長率より高くなる関係が多いのでそんなことはできないんだよ、早く増税によって財政再建を図るべきだというようなそういう対立のように書かれているわけでありまして、これはどういうことだろうかと私もいろいろ考えているわけでありますが、私はどちらにもくみしない立場だと思っている、自分自身は。私は、そういう議論よりも、さきに申し上げていましたように、とにかくデフレ脱却だ、これさえやってほしい、やらなきゃいかぬ、そうしたら、デフレ脱却がはっきりしたら、私は、増税は早くやった方がいいと思っているんですよ。 こういう議論の起こった背景に、「改革と展望」の二〇〇五年度改定版で、いわゆる中期展望というものですが、参考試算に出ました基本ケースというのがあります。資料を配らせていただいたと思いますが、これは内閣府が出した資料でありまして、これを見ていますと非常に興味深い。大変知的好奇心をそそられるといいますか、いろいろ考えさせられるというか、これはどうなんだろうかというようなところがあるものですから、この点について幾つかちょっとお伺いしたいなと思っているわけであります。 一番いいのは、実質成長率がどんどん高くなる、日本の潜在成長率が高くなるというのが一番いいわけでありますし、そして安定的な物価水準が達成される。私は、物価水準、高ければいいと思わないですよ。そういうハイパーインフレをやるべきではないという立場で常に安定物価目標政策というのを言っているわけでありますが、しかし、日銀総裁もおっしゃったように、人々が物価のことは余り気にしないで生きていけるというレベルの状況にあるのが一番いい。これは、世界では一%とか二%のCPIの上昇ですよね。 そういうところでいけばいいんですが、この試算結果の表を見まして、まず、実質成長率のところが、これが今年度は二・七で、二〇〇六年度からは一・九に下がって、それからずっと下がっていくということなんですが、これは恐らく、潜在成長率を計算して、潜在成長率レベルが達成されるという想定でなっているんだと思います。この潜在成長率を計算するモデル、生産関数を使ったモデルだと思いますけれども、ちょっと確認したいんです。それでよろしゅうございますか。 ○齋藤政府参考人 お答え申し上げます。 ○山本(幸)委員 これもさっきのCPIと同じように、モデルによっていろいろ癖がありまして、潜在成長率を計算するときに基本的に私は三つあるんだと思います。 私は、その意味では、この十年以上の長期低迷期につくられた生産関数モデルによる実質成長率というのは、恐らく低過ぎるだろうというように思ってならないのであります。これはもうこれ以上議論したってしようがありませんから、ちょっと私のそういう感想だけ申し上げておきますが、したがって、恐らく潜在成長率はもうちょっと高いんじゃないか、そして、景気がよくなればもっとまた高くなってくるだろうという気がいたしております。 それから、物価上昇率のところを、消費者物価レベルで、今年度が〇・一、来年度予想が〇・五、それからどんどん上がっていって、二〇一〇年度、二〇一一年度、二・一、二・二という数字になっているんですが、この二・一とか二・二というのは、日本銀行総裁にとってはカンファタブルな数字でしょうか、どうでしょうか。 ○福井参考人 御指摘の参考試算につきまして、私どもこれは、今後五、六年を見通したときの日本経済が持続的な成長を続け、物価が緩やかに上昇するケースを示したものというふうに少し大づかみなとらえ方を私どもはしております。つまり、全体像を大づかみに示したものだ、こういう理解でございまして、その中でちりばめられている計数の一つ一つが本当にピンポイント的にこれが妥当かどうかということは、なかなか分析しにくいし、判断しにくい。 それから、もう二つ申し上げるところがありまして、一つは名目長期金利でありますし、もう一つは海外経常余剰のところなんですが、議論のためにですが、例えば名目長期金利、二〇一〇年度に三・七、二〇一一年度に三・九という数字が出ていますね。例えば二〇一一年度、三・九、これを分析すると、これは十年物の国債で名目長期金利をとっているわけですから、潜在成長率が一・七ということであれば、国債ですからリスクフリーですから、リスクなしですから、実質金利は一・七と考えていいと思いますね。そうすると、名目金利が三・九になるためには、予想インフレ率がGDPデフレーターベースで二・二ということになります。 GDPデフレーターベースで二・二というのは、CPIベースで直すとどれぐらいになるかというのは、これはそのときによって違うんですが、このモデルでは、最大その差は〇・七ということになっているんですね。〇・七であれば、CPIベースの予想インフレ率は二・九ということになる。私は、この二・九でもちょっと小さいんじゃないか。つまり、今はCPIとGDPデフレーターの差は実に一・四あるわけですね。今、CPIが〇・一上がっていると言っていますが、GDPデフレーターはむしろ拡大してマイナスの一・五ですからね。だから、現状で一・四の差があるのに、このモデルでは最大〇・七の差しかないというのはちょっとおかしいという気がいたしておりますから、CPIベースの予想インフレ率が二・九以上、恐らく三を超えるんじゃないかというふうに思いますね、こういう状況になるというのは。 これは、今、日銀総裁がおっしゃったように、二%を超えるところでもどうだろうかというぐらいの感触で日本銀行がいるということであれば、到底許されないレベルですよね、予想インフレ率が三以上になる。当然、それが見込まれたら金融引き締め政策に入るんじゃないですか。どうです。 ○福井参考人 ただいまの委員の、CPI二・九%、少なくとも二・九%という数字が出るのではないかというこの御指摘でございますけれども、三つばかり重要な仮定を置いた上での御計算かなというふうに思います。一つは、実質成長率がこの見通しのとおりに出るということ、もう一つは、CPIとGDPデフレーターとの間のギャップ、バイアスが〇・七ということを一応固定して考えるということ、それから長期金利についてリスクプレミアムが乗っていない、この三つの前提を置いて計算されたと思います。私もそういう前提を置いて計算すれば、そういう数字が明確に出てまいります。 ただ、実際には、私は、実質成長率はもっと上がるべきだというふうに考えておりますことと、CPIとGDPデフレーターとのギャップが〇・七かどうか余り確信が持てない、それからもう一つ重要なことは、長期金利について全くリスクプレミアムを乗せなくていいか、こういう三つの点がございますので、本当に二・九かあるいはそれを上回るかどうかということは、必ずしも十分確信が持てないというふうに思います。 ただ、将来的に見ましても、消費者物価指数が仮に三%を超える上昇というふうなのが定常状態となるということに対して日本のすべての人々の心の中の物価観と整合的かどうかという点は、やはり少し疑問が残る、将来にわたってよくここは検証していかなきゃいけないという点でございます。 ○山本(幸)委員 よくわかりました。三%以上というのはちょっと無理だということは、十分日銀として考えているということはわかりました。 私は、これは危険領域だともう既に判断しておりまして、ことしから来年にかけてアメリカの経常赤字がこれ以上大きくなることは、アメリカも許さないだろうし、世界の資本市場も許さないだろうというふうに思います。アメリカから先にドル暴落になるのか、あるいは、いろいろな形でプレッシャーがかかって日本が円高に持っていくのかということをやらざるを得なくなる状況にあると思うし、少なくとも、経常収支の黒字がGDP比で五%というような状況は非現実的だというふうに思うんですけれども、この点についていかがでしょうか、内閣府。 まず、財・サービスの純輸出の推移を見ますと、足元にGDPギャップが残って、輸出余力も十分にあるという状況を反映いたしまして、試算期間の前半では拡大しておりますけれども、期間の後半では伸びが鈍化しておりまして、二〇一一年度における経常収支の黒字の約半分以下というふうに見込んでおります。 他方で、試算期間を通じまして対外純資産の積み上がりがございますので、それが反映いたしまして、実は所得収支の黒字が拡大するというふうに見込んでおります。二〇一一年度の経常収支の黒字の半分以上はこの要因によってもたらされているというふうに考えております。 したがいまして、参考試算で示されましたこのような姿というのは、必ずしも輸出に依存した経済を想定しているということではなくて、むしろ、成熟した債権国となっていく過程における姿を示しているものというふうに考えております。 ○山本(幸)委員 もうこれ以上は申し上げませんが、ちょっと要注意な数字であるということだけ申し上げておきたいと思います。 ○与謝野国務大臣 日本の経済もだんだん正常な姿に戻ってきていると私は思うんですけれども、あと二つ、きちんと正常な姿に戻さなければならないと思っているものがあります。一つは国の財政であり、一つは日本銀行の金融政策であるというふうに思っております。もとより、金融政策は日本銀行の専らの権限でございますが、やはり、この二つが正常な姿に戻って、初めて日本の経済は健康体になるんだろうと思っております。 ○山本(幸)委員 おっしゃるとおり、私は財政再建は大変大事だと思いますし、そのときに、私の理解では、高いインフレを起こして、そういうことはやっちゃいけないよ、むしろ、もっと地道にしっかりやるべきだ、そういうふうに理解しておりまして、私は全くそのとおりだと思うんですね。ただ、デフレを脱却して安定物価にすることとインフレを起こすということは私は違うと思っておりまして、そこはぜひ御理解賜りたいというふうに思うんですね。 私が従来から主張しているインフレターゲティング、その言葉が誤解を招きやすいので私は物価安定数値目標政策と言っているんですが、これは、もともとはインフレを起こさないための政策でとられたものなので、そこはやはり大事なところだと思っていますので、ぜひそういう方向でいきたいなと思っています。 最後に、日銀総裁にこの物価安定数値目標政策についてお伺いしたいと思います。 きょうの議論をしておりまして、何となくにじみ出てきた、グリーンスパンさんの英語の話じゃありませんが、福井総裁の日本語の方がまだクリアなものですから、私にはこういうことじゃないかというふうに理解できたと思うのは、三%以上のCPIの上昇率は問題外だ、これはだめ、これははっきり申されたと思いますし、私はそれで結構だと思うんですね。三%以上はだめ、これ以上にはしない、大いに結構。しかし、デフレに戻すということはもう絶対にしないということも申されまして、そういうところで安定物価水準ということになってくる。 そのときに、CPIの上方バイアスとかいうことを考えると、少しそのリスクを考えると、のり代がないと困る。CPIのバイアスが〇・三というような数字がさっき出てきましたけれども、原油価格のことも考えたりバイアスを考えると、どんなに小さく見込んでも〇・五以上ないといけないと私は、これはぎりぎりですね、思います。しかし、本当はもうちょっとのり代が欲しいというのが個人的な感じなんです。 というのは、もう一回年金生活者のことを考えてください。年金生活者は、これは年金の物価スライド調整というのをやるように決めておりまして、スライド調整は〇・九なんですよ。つまり、CPIが〇・九以上上がらないと年金生活者の年金は上がらない、二〇二五年度まではそういうシステムになっているんです。 だからその意味では、できれば一以上欲しいなというのが私の個人的な感触でありまして、では、にじみ出てくるのは一から三ぐらいで目標を持って、そこにおさめましょう、そういう目標政策をやればいくんじゃないか、各国ともそれで成功してきています。しかし、途中の過程では自由にやっていただきたい。何をやろうと私は、そういうことをはっきりと示してくれるんなら、逆に一切文句をつけない、政治家も一切何も言っちゃいけないということをはっきりさせたいというふうに思っています。 そういう意味で、期間とかいろいろありますが、いろいろなやり方があると思います。フレキシブルなそういう物価安定数値目標政策ということについて、日銀総裁、どのようにお考えでしょうか。それを最後にお聞きして、終わりたいと思います。 ○福井参考人 物価の上下の過度の変動がいかに国民生活を害するか、年金生活者を中心にお話があったわけでございますが、まさしく私どもが見ましても、例えば年金生活者ということを念頭に置きました場合に、デフレだけでなくて、インフレもまた年金生活者の生活に強いダメージを与える。私どもは、広く国民の皆様方の生活の安定のために、デフレにもしない、インフレにもしない、こういう強い決意で今後とも金融政策をやらせていただきます。 そして最後は、国民の皆様方がこれから将来に向かって本当に安心して経済生活ができる物価の動きの安定的なゾーンとは何だろう、そこのところは我々も真剣に探し求めながら、日本銀行としてはできるだけ政策の透明性のためにどういうメッセージを出せるか、さらに真剣に工夫を重ねていきたいということでございます。 ○山本(幸)委員 ありがとうございました。日本銀行総裁にはぜひ大いに頑張っていただきたいと思いまして、よろしくお願いします。私の質問をこれで終わります。 |