衆議院予算委員会会議録(平成17年10月3日)
国政復帰後、早々に予算委員会の質問に立たせていただきました。福井日銀総裁と竹中大臣には景気と金融政策について、谷垣財務大臣には定率減税について、そして尾辻厚労大臣には年金の一元化について、それぞれ質問をさせていただきました。
○山本(幸)委員 自由民主党の山本幸三でございます。 久しぶりに質問に立ちますので大変緊張しておりますけれども、ぜひよろしくお願いいたしたいと思います。特に、福井日銀総裁とお話しできることを大変うれしく思っております。ぜひいろいろ、非常に重要な時期でありますので、御見解を聞かせていただきたい、勉強させていただきたいと思っておるところでございます。 まず、景気の現状認識について、日銀総裁と、政府を代表して竹中大臣に、それぞれお伺いしたいと思います。よろしくお願いします。 ○福井参考人 僣越でございますが、最初にお答えを申し上げたいと思います。 景気の現状判断及び見通しということでございますが、日本の景気は、私どもの認識によりますと、踊り場を脱却して回復を続けている。大変地味な回復でございます、派手さはございませんけれども、持続可能性を十分感じさせる状況で回復をしているということでございます。 それを引っ張っている需要要因としては、輸出も一つの要因でございますが、事前の私どもの想定よりも内需が少し強目に推移している、つまり、設備投資とか個人消費が事前の予想よりは少し強く推移しているという形で、バランスのとれた、しかし地味な回復を続けているという判断でございます。 きょう、けさ、最近の短観を発表いたしました。前回の短観と比べてそんなに目立った変化はございませんが、前回の短観よりも原油価格の上昇というものをかなり強く織り込んだ、それを前提として企業が判断された短観でございますが、オイル価格の上昇というものを吸収しながら収益の好調が続く、設備投資も堅調だ、雇用に対する態度も依然として企業としては前向きに取り組む、こんなふうな短観でございまして、短観そのものも、前回比、表面的な数字は余り大きな変化はございませんが、石油価格の上昇を強く織り込んでなおかつこの状況ということは、やはり持続可能性の強い景気回復というふうに判断いたしております。 したがいまして、この先につきましても、海外経済の拡大が続くもとで、輸出の伸びは次第に強まっていく。そのほか、国内の民間需要も、高水準の企業収益、雇用者所得のこれは緩やかな増加ということを背景として、引き続き回復していくという可能性が高いというふうに思っております。 あくまで緩やかな、しかし息の長い回復、今目指すべき方向に沿って経済は動いている、そういうふうに判断いたしております。 ○竹中国務大臣 政府の景気に対する現状認識でございますが、基本的には、今、日銀総裁がお話しされたことと変わらないと思っております。我々の正式の表現は、「景気は、企業部門と家計部門がともに改善し、緩やかに回復している。」というふうにしているところでございます。 この背景、委員御承知のように、少し長い間の踊り場的局面があったわけでございますけれども、その踊り場的状況の主要因でありました輸出が持ち直してきた。そして、生産につきましても、これは情報化関連分野の在庫調整がほぼ一巡したこと、そうした背景があると認識をしております。こうした中で、今、雇用情勢の改善が続きまして、これに合わせて個人消費も緩やかに増加をしているという形で、企業部門に比べておくれていた家計部門の改善にも進捗が見られるという状況であろうかと思っております。 もちろん、不確定な要因というのはたくさんございます。特に、我々としてはやはり原油の価格の動向に十分な注意をしていかなければいけないと思っておりますし、マクロ経済的には今申し上げたような状況でございますけれども、地域間の格差、部門別の格差、中小企業の格差の問題等いろいろな問題を抱えておりますので、そうした点に十分に配慮しながら、引き続きマクロ経済の動向を注視していきたいというふうに思っております。 ○山本(幸)委員 日銀も政府も、景気は踊り場を脱して順調に回復している、持続性がある、そういう認識のようでありますけれども、私どもの地元の感じからいうと、今、竹中大臣が申されましたけれども、まだそんな感覚は全然ないんですね。依然としてシャッター通りはふえているし、倒産の危機に瀕している中小企業はたくさんあって、あるいは何とか融資を頼めないかというような話ばかりでありまして、ちょっと実感が違うなという感じもしております。 ちょっと、日銀総裁、気になったんですけれども、短観で、私きょうの短観は見ていないんですけれども、原油価格も織り込んで、平気だというような認識のようでありますが、これはリスク要因として原油価格についてはそんなに心配していないんですか。 ○福井参考人 先ほど景気の現状、そして見通しについて申し上げました。これについてリスク要因がないというわけではございません。最大のリスク要因は、原油価格の上昇、これが高どまりが続きそうだということが最大のリスク要因だというふうに思います。 日本経済につきましては、以前でございますと、金融システム面の不安等々内在的に強いリスク要因を抱えておりましたけれども、現在におきましてはそうした要因はかなり薄れて、世界経済全体と共通の最大のリスク要因、原油価格の上昇が最大の要因ということでございます。企業は、コスト高圧力、これはその他のコスト高圧力とともにこれを懸命に吸収努力をしていて、今回の短観は、その企業努力の苦しい結果が反映されている。私どもは、楽々原油価格の上昇を企業がのみ込んでいるというふうには思っておりません。 そして、今後さらに企業がこの吸収努力をどこまで続け得るか、さらには、原油価格の上昇につきましては、海外経済への影響、その変化を通じて間接的に日本経済に及んでくるリスク要因も少なからず大きいものがあるんじゃないかというふうに、これは懸念を持って今後観察していきたいというところでございます。 ○山本(幸)委員 その海外経済への影響なんですけれども、アメリカは大丈夫だというようなことを言っておったんですが、ハリケーンの影響もありまして、最近はちょっと心配だという感じに変わってきているように私は思うんですね。つまり、精製能力が破壊されたりいたしまして原油供給能力が落ちている、その結果、原油価格、そういう石油製品の価格上昇で、少しインフレ的な状況になってきている。 私もことしの五月にアメリカに行ったんですが、二年ぶりに行ったんですけれども、二年の間にあらゆるものが値上げしていまして、これはちょっと危険なのじゃないかなという感覚を持ったんですね。特にガソリン価格は非常に値上がりしておりました。したがって、アメリカは大丈夫かいな、もうちょっとするとスタグフレーションのおそれがあるんじゃないかというような感覚を持って戻ってきたんですけれども、どうもその懸念が生じつつあるんじゃないか。 そうすると、アメリカ経済も、今度はインフレ的な要因の中で、これを抑えるためにFRBは金利を上昇し続けなければならない、あるいはそれを加速せざるを得ないかもしれない。そうすると、住宅金利に影響いたしまして、今住宅バブルで、その資産効果で個人消費が非常に高まっているということが崩れるんじゃないかという懸念を私は非常に持っているんですけれども、そういうこと。 それから、原油価格が上がって中国あるいは東南アジアの国々は結構平気だな、どうしてだろうと思っておりましたら、結局、東南アジアの国々はこれまでの原油価格の上昇というのは財政負担で吸収していたんですね。国がその分を肩がわりするという形で吸収していた。ところが、どうもそれももたなくなった。インドネシアはもう既に石油製品を二倍ぐらいに上げざるを得ない状況になってきた。中国も、どうも財政負担で吸収しているようでありますけれども、これもそろそろ限界じゃないかなという感じを持ち出しているんです。 そうすると、中国、東南アジア、ここの経済が、やはり原油価格がこれだけ上がってくると、少し、もたない、金利を上げざるを得ない、あるいは金融引き締めをやらざるを得ない。アメリカもそういう形で金利の上昇と物価が上がるという形のスタグフレーション化しかねない。そういう懸念がかなり強いというように私は感じた。 振り返ってみますと、二〇〇〇年八月に日本銀行がゼロ金利を解除いたしましたけれども、あのとき私どもはそんなばかなことを何でやるんだといって声明まで出して反対したんですけれども、押し切られて、やっちゃって、結局大失敗だったわけですね。そのときもちょうど原油価格が上がり始めておりまして、原油価格が大変大きなリスク要因じゃないかという指摘をしたんですが、無視されました。ちょっと似たような状況に今なりつつあるんじゃないか。 さすがに福井総裁は前任者と違ってそういうことはやっておりませんけれども、しかし、これはむしろ、その二〇〇〇年のときよりももっと大きなリスク要因になるんじゃないかなという気がして、これから日本経済の回復の主要な要因であった輸出、これがおかしくなるおそれはないのか。内需で設備投資、個人消費が回復しているということでありますけれども、これはまたちょっと後でお伺いしますけれども、その点について、海外経済への原油価格が与える影響についてのリスク要因と、将来的な、ことしの暮れから来年の初めにかけての日本経済に与える影響については、本当に持続的に回復ということで今言っていていいんですか。 ○福井参考人 世界経済にとりましても、原油価格の高騰、そして高どまりが続くというふうなことは、当面最大のリスク要因というふうに世界各国の政策当局者によって強く認識されているところでございます。先般、谷垣財務大臣とともにG7の会合に出てまいりましたけれども、その認識は改めて強く確認されたというところでございます。 原油価格の高騰が及ぼす経済への影響というのはさまざまなルートがございますので、余り単線的にこれをとらえ過ぎることは危険でございますが、一つ、現在、我々と申しますか、世界の政策当局者の共通の認識は、七〇年代のオイルショックのときと違って、今回の場合は、目先の原油の供給制限ということではなくて、世界経済が順調に拡大し、したがって原油に対する需要圧力が強まってきている、どちらかというと需要サイドからのきっかけというのがより強い石油価格の高騰、こういうふうに認識されております。 この場合には、目先、突如として原油の供給制限が出てきたという場合との最大の違いは、供給制限が、目先、急に迫ってきた場合には、短期的に世界経済の潜在成長能力が落ちるということでありますので、強い引き締めが必要になる。つまり、景気に対して強いブレーキをかける。そこがおくれるとインフレが走る、そうなるとさらに強い引き締めが要る。これは、七〇年代、日本でも二回の石油ショックで経験してきたことでございます。 需要要因が先行した今回の石油価格の上昇、これは他の、原油だけではなくて、鉄鉱石その他素原材料を含め、並行して商品市況が上がっているということからも示されておるとおり、やはり、世界の総需要、そして資源の使い方がいかに効率的かという経済政策の本来の姿に引き戻しながらきちんと判断し、政策対応ができるということだと思います。 もちろん無限に時間的余裕があるわけではありませんけれども、ある程度時間をかけて正確に判断し、経済全体として、そして個々の企業ベースにブレークダウンしてコスト上昇圧力をいかに吸収し得るか。そして、経済全体としてインフレ期待というものが芽生えてくるかどうか、ここをきちんと判断しながら政策判断をしていく。いわばオーソドックスな経済政策の運営を、より目を研ぎ澄まして、あるいは神経を研ぎ澄ましてやっていく、こういうことではないかというふうに思います。 現在、強い懸念を持たれている割には世界経済が比較的順調に推移している。また、強い懸念が持たれている割には世界的にインフレ期待が高まっていない、長期金利も低位に安定している。これに安んじてはいけませんけれども、そうした状況でございますので、基本的な判断に過ちなきよう、引き続き慎重にこれをウオッチしていく時間的余裕があるということだと思います。 ただし、米国のカトリーナあるいはリタですか、ハリケーンが来て、米国の湾岸地域の製油設備にダメージを与えるというふうなことがございます。こうしたことは、目先、油の供給制約が強くないとは申しましたけれども、ハリケーンの要因が供給制約要因を手前に引き寄せる要因というのがどれぐらいあるか、この面についても十分慎重な判断が必要だ。したがいまして、長期的には、原油及び精製の段階に至る製造能力というものが長期的な世界経済の需要見通しにフィットして安定的に続くように、これが一つ重要な課題でございます。 そして、需要の面からいきますと、先ほどおっしゃいましたように、エマージング諸国が大きく油の市場に参入してきておりますので、先進国と同様に、油の使い方の効率性向上、そして省エネ努力ということが強められていくことが非常に大事だ、こういうふうな認識が確立し始めているというふうに思います。 ○山本(幸)委員 最初のところで言われた、七〇年代、供給能力が足らないときに金融引き締め政策をどんどんやらなきゃいけないというのは、ちょっとロジックがよくわからないところがあるんですが、それは余り言っているとほかに行けませんので、また改めて考えたいと思いますが、そういう意味では、これはよほど慎重に考えておかないと、私は、今回の原油価格の高騰というのはこれからアメリカ経済、中国経済、東南アジア経済に相当大きな影響を与えてくるんじゃないかという感じがしていますので、ぜひ慎重に見ていただきたいと思います。 少し話を進めますが、リスク要因は、ではそれだけなのかというと、私はどうも日本経済についてはほかにも少しあって、これは個人消費にも影響してくるんじゃないかと思っているところがあるんですね。 それは、御承知のように、社会保障の関係で負担がどんどん上がっているんですね。この十月一日から介護保険の自己負担が上がります。年金の保険料については昨年から上がってきております。順次上がっていく。それから、これから医療制度改革、議論していますけれども、当然負担増の話になるでしょう。そして、また後に触れたいと思いますけれども、来年は定率減税の話もある。この社会保障分野での負担増というのは、かなり国民の間では大きな影響を与えるんじゃないかという気がしているんですね。 私も、この土日に戻って、そしていろいろな、障害者の方とかあるいは施設、特養の方とかのいろいろな陳情を受けましたけれども、やはりかなり悲鳴を上げている状況ですね。こういう方たち、基本的にはやはり所得の低い層の方が多いわけですけれども、そういう方々にこうした負担増の影響がかなり出てくるんじゃないか。この点はよく考えておかないと、かつて財政再建、橋本政権のときに負担増をやって、そして景気回復の芽がつぶれたと言われているんです。そこまで大きな話にはなっていないかもしれませんけれども、この点はリスク要因として当然考えておく必要があるんじゃないかという気がしているんですが、これは竹中大臣、福井総裁、いかがでしょうか。 ○竹中国務大臣 経済全体を安定して発展、成長させるために家計の役割が極めて重要であるということは、これはもう疑いのないところでございます。その家計に対する負担の一つとして社会保障の問題等々がさまざまな問題であるというその問題意識は、我々も大変強く持っております。 しからば、現実の負担、それと財政との関係をどのようにコントロールしていったらよいかという極めて難しい問題が生じるわけでございますけれども、我々経済財政を担当する部局のやはり最大の責任というのは、財政の健全化と、景気と言っても結構ですけれども、経済の安定的な推移というのを両立させることであるというふうに思っております。 そうした観点から、ここ数年来、社会保障関係の負担増、税金の問題も含めてでございますけれども、そういった公的な形での負担、そして家計の安定的な所得の成長をどのように両立させるかという議論を、かなり神経を使って行ってきているつもりでございます。一方で、広い意味での財政の健全化は行っていかなければいけませんので、ある程度の負担は仕方ないという面は当然ございます。 現状では、そうした点も踏まえまして、私自身、昨年も与党の税調等々にも参加をさせていただいて、そういう議論をさせていただく機会もございましたけれども、そういう点については神経を使って注意深く見ているつもりでございます。今、ぎりぎりのところで、負担を少ししていただきながら、しかし景気の腰折れをしないような運営をしているつもりでございます。 ただ、今後の問題として、これは非常に大きな問題が出てまいります。そうした意味でも、社会保障全体の負担をどのように、今後、抑制できるところは抑制する、負担すべきところは負担する、そのような形での運営ができるかということは、これは少し中長期の話として別途議論もしているところでございますので、短期の努力、中長期の努力、両方重ねていかなければいけないと思っております。 ○福井参考人 私からも簡単にお答えをさせていただきますと、これはまさに、政策運営上の長期的な目標とそれから短期的な景気回復という目標とのバランスをいかにとっていくか、そのバランスが崩れた場合に、御指摘のとおり短期の景気回復についてリスク要因となりかねない、こういう性格の問題だというふうに思います。 個人の所得は、今回の景気回復過程でようやく増加の端緒をつかみ始めた、こういう段階でございます。これからも持続可能性のある景気回復を続けていけば、個人所得もじわじわと増加していくだろうと思いますけれども、この中で消費者マインドが崩れないように、長期の時間軸の政策内容というものをいかにうまく入れていくかという課題だと思います。 私どもは、個人部門に対して、財政規律が長期的に確立されていくんだという意味からの政府に対する信認、もう一つは、そういう個々の政策、財政面からの政策内容について、十分国民の理解が得られるということで、改めてこの面からも信認が得られるということであれば、個人にとって、あるいは消費者にとって、マインドの動向に悪い影響を与えないで済む範囲内というものは十分あり得るというふうに思っております。 ○山本(幸)委員 経済全体を見ているとなかなかわからないところがあると思うんですけれども、例えば、きのう私が陳情を受けた人は障害者ですけれども、一級の障害者ですから年金が八万五、六千円、それで、通所授産施設で働いて七千円とか八千円ぐらいですよ。それで一人で生活している。そういう人が、個人所得が順調に回復しているといったって、そんな人のところには行かないですよね。だから、ここはやはり高給取りの感覚で考えてもらっては困るんです。 だから、それはこういう負担増というのを、おっしゃったように長期的に財政健全化の観点からやらざるを得ないところは当然あります。ありますけれども、それは経済全体が順調に回復するという前提条件をしっかりした上でやらないと、本当に弱い者いじめになっちゃうんですね。 だから、日本銀行、そして政府の責任、特に、経済が回復しかけている、それは私も認めます。しかし、これは非常に貴重な時期ですから、しっかりこれを伸ばして本当の、本物の回復にしないと、同時に長期的な観点から負担増ということをやっているときに、これは弱い者いじめになるということをぜひ考えておいていただかなきゃいけないし、それがふえれば明らかにリスク要因になるわけですね。 そこのところが、そういう感覚のずれがあらわれているのがマネーサプライじゃないかと思うんですね。景気が回復している、回復していると言っているんですが、マネーサプライは全然伸びていない。私はマネーサプライが伸びないで本物の景気回復などないという立場をとっているんですけれども、なぜマネーサプライが伸びないのか、日銀総裁。 ○福井参考人 マネーサプライは、九〇年代以降今日まで非常に長い期間をとってみますと、その間の景気停滞ぶりに比較いたしますと、結構高い伸びが続いてきているということは事実でございます。ただ、その長い期間をもう少し短く区切ってみますと、マネーサプライの伸びと景気の動きとの対応関係が非常に乱れてきている、つまり不安定化してきている。 これは日本独特の現象ではございませんで、先進国押しなべて、九〇年代以降、特に九〇年代後半以降、景気とマネーサプライとの直接の連関関係は非常に不安定になってきている。これについての理解はまだ完璧にはでき上がっておりませんけれども、やはりグローバル化の進展のもとで先進国それぞれにかなり厳しい構造変革を迫られていて、実際に経済構造が変革する中で、マネーサプライと景気との関係が、従来の経済モデルの中で確立していた関係が今乱れている。これが一時的であるかどうかは今後の展開を見なければわからないという状況だと思います。 最近の日本のマネーサプライの伸び率は前年比で大体一%台後半、景気がじわじわではありますが回復を続けているもとで、少し伸び率が低いという印象が伴っていることは御指摘のとおりでございます。しかし、この点につきましても、日本の構造改革がかなり進展しつつある中ということで考えてみますと、かなりこのマネーサプライの低い伸び率というのは説明可能だというふうに思っています。 三つばかり申し上げますと、一つは、企業がかつての高成長のときのように借金をして積極的に投資をするという時代ではなくて、むしろ、高収益、豊富なキャッシュフローを背景に設備投資を行う。そして、外部からの資金調達については極力借り入れを返済する、財務の健全化を図る、格付の向上を図りながら次のステップに行く。こういうふうに企業行動が基本的に変わってきた、構造改革の一つの大きな側面でございます。 もう一つは、金融システムをめぐる不安感が大きく後退する中で、家計や企業が金融資産の選択の幅を広げるようになってきているということであります。御承知のとおり、銀行の窓口にいらっしゃいましても、単純に預金の拡張を目指しているという雰囲気は、もうかつてのようにございません。投資信託の窓口販売など、金融機関の窓口においてすら預金以外の商品の提供を通じて顧客のニーズにきめ細かくこたえようという経営戦略を展開しているわけでございます。こうしたもとで、M2プラスCDの対象であります銀行預金から、投資信託や個人向け国債といった金融資産へのシフトが目立って生じているということもマネーサプライの伸びを鈍化させている要因でございます。 三つ目は、これも構造改革でございますけれども、企業収益の増加などを背景に税収が堅調に推移する一方で、支出の面では財政再建に向けた取り組みが進められているということで、財政要因もマネーサプライの伸び率、寄与度を縮小させるという方向に作用しています。 日本の経済はこうした構造改革の進展とともに着実に景気回復する、裏腹の関係で前進しておりますので、こうした観点から見ますと、現在のマネーサプライの動きは、日本経済が持続的な成長に向けて回復を続けていくということと両立し得る整合的なものだというふうに考えております。 ○山本(幸)委員 私は全く整合的だという見解は理解できないですね。景気とGDPとマネーサプライの関係でマーシャルのkというのがありますが、デフレのときと普通のときとは全く違う見方をしなければおかしいと思います。 それから、企業が構造改革で借金返済に一生懸命、それはそうでしょう。しかし、それはデフレ期待がまだ全く払拭されていないからそういう行動をとるので、やはり一番の問題は、デフレ期待を少なくともマイルドなインフレ期待に変えることができていない。だから企業はそういう行動をとるし、それを構造改革という、構造改革と言えば何でも説明できちゃうという話がありますけれども、そういうふうに説明するというのはちょっとおかしいなという気がいたします。 それから、金融資産が非常に多様になった、それはそうでしょう。しかし、広義流動性で見ても最近は下がっているんですよ。だから、これは明らかに、実体経済でいいと言っているけれども、本物のところ、国民の肌で感じるところではそうなっていない。私は、根本的な理由は、まさにデフレ期待が払拭されていない、少なくともマイルドな一、二%ぐらいの、本来望ましいようなインフレ期待になっていないというところに原因があると思っているんですが、この点について、竹中大臣、どうですか。 ○竹中国務大臣 私どもも、実体経済が比較的よい方向に向かっている、これは、ことし前半のGDPの成長率だけ見ますと、日本はG7の中で最も高い部類に入る、日本の潜在成長力を上回る実物経済の成長が見られている。そういう中で、やはりデフレ問題だけが実は解消されていないということを厳しく受けとめております。 そのためには、デフレがなぜ解消されないか。これもいろいろな要因はありますけれども、今申し上げたような実物経済要因といいますか、需要要因では少なくともないだろう。供給要因というのはあると思います。例えば、中国から安いものが入ってくる、ITの分野で技術進歩が高い。そういうものは、供給側の要因として物価を押し下げる要因はありますけれども、これは決して日本のみならず世界じゅうの要因でありますから、そうすると、残る貨幣的な要因、マネーサプライがやはりふえていないということがデフレの深刻な要因であるという受けとめ方をしております。 このマネーサプライがやはり結果としてふえなければいけない。前年比一%の増加でデフレが解消されるとはやはりどうしても考えられないわけでございまして、マネーサプライがふえるような状況をぜひともつくっていかなければいけないというふうに思っております。マネーサプライが伸びない要因はそれなりに当然あるわけでございますけれども、それだから仕方がないというふうに言ってしまうと、デフレが起きて、デフレが続いても仕方がないということを意味してしまいますので、そこはやはり政府、日銀協力して、マネーサプライが結果的にふえるような状況をぜひともつくらなければいけないというふうに思っております。
○山本(幸)委員 私も全くそのとおりだと思うんですが、では、どうしてデフレ期待が払拭できないかという話をちょっとしたいと思います。 日本銀行は量的金融緩和というのを続けていて、これは結構なことだと私は思っておりました。これも、ゼロ金利解除の失敗に懲りてそういうことになったんですけれども、去年の一月までは大変すばらしいパフォーマンスだったと私は思っているんですが、そこでとめちゃったんですね。そこまでの伸ばしたものが今ごろきいてきて、いろいろな実体経済にいい影響を与えているんじゃないかと思っているんですが、私が心配しているのは、去年の一月以降打ちどめにしちゃったので、そっちの影響がこれから出てくる。それと、原油価格それから社会保障の負担等が絡むとちょっと心配じゃないかという懸念を持っているわけですね、杞憂に終わればいいですけれども。 そこで、一番日本銀行にやってもらいたいのは、デフレ期待を早く明らかに払拭してもらいたい。そうしないと、どんなに金を出しても効果が薄い。これはもう経済理論からも、過去の昭和恐慌の歴史から、あるいはアメリカの大恐慌の歴史から見ても、金だけ出したらいいというものじゃない。そうじゃなくて、期待感ががらっと変わって、いや、将来的にはもうデフレじゃないんだ、将来的には少なくともマイルドなインフレになるんだというようにがらっと期待感が変わったときに、すべてがうまくいき出すんですよね。私はそう思っているんです。 そこで、ちょっと気になるのは、ずっと日本銀行は、量的金融緩和の条件で、消費者物価上昇率が対前年比でゼロ%以上に安定的に推移した場合に解除するということを目標として掲げているわけですね。 これは一見、そうかなという感じを一般の方は持つかもしれませんが、消費者物価指数というのは、その統計作成上限界がありまして、つまり、一つのバスケットをつくってそれを比較するわけですから、その間に経済や消費者の好みは動いてしまいますから、より安くていいものに動いているはずなんですね。それを昔のバスケットで統計をとると、必ず実態よりは上に振れるんですよ。あるいはパソコンでも、同じ値段でも中身はよくなっているわけで、そういう点からしても、このバスケットのつくり方と消費者の行動、中身から見ると、CPIだけを見ていると必ず上振れしている、上昇バイアスがかかっているわけですね。 つまり、どういうことかというと、ゼロ%というのは、本来のものからいったら、まだマイナスなんですよ。これは実証研究が日本の場合余りないんですけれども、日本銀行の白塚さんという人がただ一人やっていますけれども、当然、日本銀行の中でそういう研究はやっているはずなんです。 経済学者や専門家の世界での常識は、少なくとも一%以上じゃないとだめだ、CPIで一%以上にならないと本当のところはマイナスなんだというのが世の中の常識、経済学者の常識なんですけれども、それを無視して、ゼロ%以上になればいいじゃないかということでずっとやっているんですが、私は、これは危険だ、それを言っている限りいつまでたっても本来の、物価がプラスになる領域に達しない、それは余分な時間がかかってしまうというふうに思うんです。この点について、福井総裁、いかがですか。 ○福井参考人 かねてより幾たびかお答え申し上げてきておりますけれども、消費者物価指数の前年比変化率がゼロ%になれば日本経済が本当に最終的に我々が目指すべき望ましい、均衡のとれた経済になるとか、CPIゼロ%が我々にとって本当に望ましい物価水準であるとかいうふうに考えていないということをたびたび申し上げました。 そういう状態に持っていくための一つの通過点、重要な通過点がCPIがゼロ%というところであり、量的緩和政策という、世界にも日本にもかつてとられたことのない異例な金融政策というものをいつまでやるんだということは、最低限そこまでやっていけば、我々はその後も安全に経済を運転していけますと。急にそこから引き締めるというふうなことを一度も申し上げたことはないわけでして、それからも日本経済に対しては、金融政策の面からは十分弾力的に、そして持続的な成長が可能になるような、そして物価の安定が最終的にうまく実現できるような経済に持っていきたい。その一つの大きな通過点がCPIゼロ%ということで、異常な政策をいつまでも続けろというふうな御意見には我々は断固くみすることはできないということでございます。 それから、消費者物価指数についてバイアスがあるという委員の御指摘、そのとおりでございます。これはどんなに統計を完璧につくりましても、どこの国でも多少バイアスがある。そのことは私どもも十分認識しております。以前からも、日本銀行の中でも、このバイアスがどれぐらいあるかというふうなことの試算は専門家がいろいろやっておりますが、最近時点でもその作業をさらに繰り返しております。 政府の方におかれまして、消費者物価指数の計測方法は日々改善を続けておられまして、大変ありがたいことだと思っておりますけれども、特にヘドニック法の採用等の以降は、かつて計測しましたような大きなバイアスはだんだん小さくなってきている、このことも委員は御承知だろうというふうに思っております。 ○山本(幸)委員 バイアスがあるということは認められているわけですね。そうすると、では、日本銀行は何を目標にしてやっているのかというところがわからない。ゼロ%というのは単なる通過点ですよ、それでいいというふうに思っているんじゃないんですよということなんですけれども、では、何がいいと思っているんだ、これが非常に重要な話になるんですね。 日銀法二条で、日本銀行は物価の安定を通して経済の発展を図るという目的が書かれているわけでありますけれども、日本銀行の人に、では、物価の安定というのは何なんだ、定義してくれと何回聞いても定義してくれないんですね。インフレでもデフレでもない状況を物価の安定というんだと日本銀行のホームページは説明していますが、これは説明じゃないですよね。つまり、そこで一番かなめなところで逃げている。目標がしっかりしていないから、いろいろやっているといって、うまくいけば自分たちの成果になるけれども、失敗したら責任逃れができるという形になっているんですね。 これは私は余り好ましいことではないというふうに思っていまして、ゼロ%以上というのが、そこが通過点だったら、少なくともバイアスがあるということはわかっているんだから、そこははっきりしてもらった方がいい。 私は、そういう意味で、まず、日本銀行の政策の目的とそれから政策の透明性あるいは説明責任というのを果たすためには、安定物価目標政策、インフレターゲティング政策と言われますけれども、インフレというと調整インフレみたいな印象になるので余り使いたくないんですけれども、少なくとも、そんなことは言わない、インフレにしないようにするためがインフレターゲティングですからね。例えば、一%から三%かというような範囲をもって、上限も決めれば下限も決める。しかも、それは硬直的なものでなくて、中期的にそういう目標にするんだったら当然その間にはフレキシブルな、裁量的な政策がとれる。しかしその目標だけはっきり示してくれればあとは何をやろうと自由ですよという方が、政府と日本銀行との間の関係では非常に健全じゃないかと思うんです。 その意味で、そろそろこの目標について、ゼロ%以上は通過点だ、バイアスがあるということを認められたわけですから、しかも景気も上向きつつある。では、どうせ量的緩和政策はいつかは解除しなきゃいけないことになる。そのときに、不安感を持たせないように、しかもまだデフレ期待が完全に払拭されていない。こういうものを全部解決するためには、安定物価目標というのはこれですと、一%から二%でも三%でもいいですけれども、まあ三%以内、一から三ぐらいの間でいきますよということをはっきり言った方が、私は、不確実性もなくなるし、日本銀行もしっかりとそのことを示すことになると思うんですけれども、この点についてはいかがでしょうか。 ○福井参考人 まず最初に、日本銀行は今後とも金融政策の透明性を高めるために最大の努力をしていく、これはお約束できると思います。消費者物価指数の前年比が安定的にゼロ%以上になって、仮に今の量的緩和政策の枠組みを修正するという段階に入りましても、その後も、いかなるフレームワークを提示すれば期待の安定化を図ることができるか、金融政策の透明性を向上していくことができるかということについては十分工夫を加えていきたいというふうに思います。 インフレーションターゲティングというふうに具体的におっしゃいました。 インフレーションターゲティングというのは、金融政策の透明性を高めるための一つの枠組み、道具立てであるというふうには認識しております。しかし、実際にその枠組みが金融政策の透明性向上にどの程度資するかということは、海外諸国の例を見ましても、それぞれその中央銀行を取り巻く経済環境いかんということによってかなり異なっているのが実情でございます。したがいまして、経済環境いかんを無視してインフレターゲティングがオールマイティーという考え方は私どもはとっておりません。今後、状況の推移の中で、とり得るあらゆる可能性の中で最適なものをとっていきたい。 諸外国において現にインフレーションターゲティングをとっている国を見ましても、その物価目標はあくまで中長期的なものであって、金融政策が短期的に無理やりその物価水準を実現するために無理な政策をするというふうな道具としては使われていない。目標を非常に透明にするとともに、その過程は金融政策が極力機動的に動き得るようにという条件も兼ね備えながら運営しているということが実情でございます。インフレーションターゲティングについては、その点についての御理解も十分国民一般の方々から得られておく必要があるというふうに思っております。 重ねて申し上げますけれども、今後とも日本銀行としては、あらゆる手段を検討して金融政策運営の透明性向上に努力していきたいというふうに思っております。
○山本(幸)委員 透明性を向上させると言って、結局はっきりわかるものは何にも示さないわけですから、困ったことなんですね。 それから、インフレーションターゲティングで、短期的なもので無理やりやるなんて、そんなことはだれも言っていませんよ。須田さんが最近やった講演でそんなことを言っているようなことを言っていますが、だれもそんなことは言っていない。枠組みとして、フレームワークとして提示しているわけで、当然、中長期的に考えて、その時点では反対の政策をやることだってあり得ることは、我々はみんな言っているわけです。 そういう意味では、依然として日本銀行は、物価の安定とは何なのかというのがよくわからない。わからないで透明性を高めます、高めますと言っていて、結局最もはっきりしたインフレーションターゲティングという政策さえとろうとしない。これはどうも、やはり責任逃ればかり考えているんじゃないかという気がしてならないんですね。 インフレーションターゲティングの政策については、竹中大臣、どういうふうにお考えですか。 ○竹中国務大臣 インフレターゲティングに関しましては、ことしの四月に経済財政諮問会議に報告されました日本二十一世紀ビジョン、これは日本の各分野を代表する六十人の専門家が集まった報告書でございますけれども、それにおきまして、望ましい物価上昇率を安定的に維持するため、物価安定数値目標、いわゆるインフレターゲティングによる金融政策の枠組みの導入を検討するということが実は提言されておりまして、福井日銀総裁からも、諮問会議におきまして、これは将来の金融政策運営上の一つの選択肢として十分これから検討しなければならないという趣旨のお話をいただいているというふうに認識をしております。 日銀がどういう枠組みをとるべきかということに関しては、我々は、政府の立場から、むしろ日銀の独立性という問題があろうから、具体的にこうしてくれということは申し上げないようにこれまでも努めてまいりました。 一方で、しかし、これはある中央銀行の総裁と話したときの言葉でありますが、中央銀行の独立性というのは、独立性をかち取るためにいろいろな努力をやはり各中央銀行はしてきた。その独立性をかち取るための一つの重要な要素は、説明責任を十分に果たすことである。その説明責任を十分に果たすという観点から、いわゆるインフレターゲティングをとっているという中央銀行もたくさんあるというのも事実であろうかと思います。 最終的には、繰り返し言いますが、これは独立して日本銀行にお決めいただく問題であろうかと思いますが、実物経済が潜在成長力を上回る成長をしている中でデフレが続いているというような状況も踏まえまして、政府として努力するところは努力をぜひいたしたいと思いますし、日本銀行におかれてもそのような努力をしていただけるものというふうに思っております。 ○山本(幸)委員 インフレターゲティングについてはまたゆっくりやりたいと思いますので、ぜひ前向きに検討していただきたい。特に、景気は今回復しつつあるというんだけれども、リスク要因もあって、やはり一番のデフレ問題、デフレ脱却というのをはっきりさせないと本物にならない、そういう状況でありますから、ここは本気でやはり政府、日銀、しっかり考えていただいて、一番いいのはこの枠組み、インフレターゲティングの枠組みだと私は思っていますので、ぜひ検討していただきたいと思います。 ちょっと時間が迫ってまいりましたので、次の問題に移ります。 定率減税廃止の話ですけれども、これはこれから税制改正の作業が始まるわけですが、一つだけ確認しておきたいんです。定率減税を廃止したとしても、その財源は基礎年金の部分のために使うというように税調等できちっと決まっているはずでありますけれども、その点、財務大臣、よろしいですね。 ○谷垣国務大臣 久しぶりに山本委員の議論を聞かせていただきまして、大変勉強させていただきました。 今、定率減税の問題ですが、平成十七年度半分廃止をいたしまして、その使途につきましては、基礎年金の国庫負担については、先般の年金制度改革において、平成十七年度及び平成十八年度において、我が国の経済社会の動向を踏まえながら、所要の税制上の措置を講じた上で、別に法律に定めるところにより、国庫負担の割合を適切な水準に引き上げるとされているのは御承知のとおりですが、平成十七年度税制改正分におきましては、初年度増収分は千八百五十億円ございますが、その一部千百一億円を基礎年金負担に入れよう、こういうことでことしの予算はつくられております。 来年度につきましてどうするかということは、まだ、来年度というか十八年度、残りの分についてはこれからどうしていくかという問題が税についてもございますし、その増収分をどういうふうに使っていくかということについては、その中で議論をさせていただきたいと思っております。 ○山本(幸)委員 基礎年金の国庫負担の財源というのは極めて重要な話で、税調で議論しているときには、当然この定率減税の部分はそれに充てるという認識で議論したわけですから、これから税制改正でやると思いますが、必ずそういう方向にしなきゃいかぬなと思っておりますので、ぜひ念頭に置いておいていただきたいと思います。 それから、年金一元化の問題についてお伺いしたいと思いますが、私は、年金一元化ができればこれは一番いいなと思っているのですね、スウェーデンの例なんか勉強いたしまして。しかし、そう簡単にいかない。一番難しい問題は何ですか、厚生労働大臣。 ○尾辻国務大臣 どういう一元化をするかによってまた今の御質問のお答えも変わってまいりますけれども、仮に、自営業者もサラリーマンと共通の所得比例年金に一元化するとした場合についての大きな問題点についてお答え申し上げたいと思います。 大きくは二点あると思いまして、一点がまず、自営業者の所得をどういうふうに捕捉するか、これが大きな問題点、一点だと思います。それから、現行の仕組みの中でいいますと、サラリーマンの場合は事業主負担が半分入っておりますけれども、今度は、自営業者の皆さんがそうなった場合に、保険料負担をどうするのか。サラリーマンの場合は事業主が半分払っておる、そことの兼ね合いをどうするのか。これが二点目の大きな問題であろうというふうに考えております。 ○山本(幸)委員 その最大の問題は所得の捕捉ですね。 そこで、私ども、先ほども申し上げたように、社会保障で負担を増加させるということで負担増をお願いしているわけですけれども、そのときに、やはり所得の問題が必ず出てきまして、所得の低い人に対してはそれなりに手当てをしなきゃいかぬという議論が出てくる。しかし、そういう議論のときに、では、所得は低いけれども財産をたくさん持っている人はどうするのかという話も必ず出てきまして、これから年金の問題で、一元化に対しては絶対所得の捕捉が必要になる。そのほかの介護にしろ医療にしろ、所得の問題というのが、あるいは資産の問題というのがどうしても出てくると、これを捕捉するようなことができていなければ、年金一元化なんというのは遠い話になっちゃうので、私は、この際、納税者番号制度を真剣に考えるべきじゃないか。 私は、民主党も反対しないと聞いていますけれども、与党が三分の二で民主党の皆さん方も賛成するんだったら、すぐできるんじゃないかと思うんですが、財務大臣、すぐ取りかかるおつもりはありませんか。 ○谷垣国務大臣 納税者番号制度については、いろいろな意味で、私は税の合理化という上に大きく役立つ制度でないかと思っているわけであります。しかし他方、年金一元化の議論に関連して、この納税者番号制度について過大な期待があることも事実でございまして、これを導入していった場合にすべてがきれいに捕捉でき、きれいに整理ができるというような議論もあって、それはやや過大な期待ではないかと思います。 ただ、今後、先ほど申しましたように全体の税制度を合理化していく上では大きな意味がある制度だと思いますので、私どももきちっと議論をしていきたい、このように思っております。 ○山本(幸)委員 これは、議論も今まで相当やっていますから、もう余り時間をかける必要はない、やはり本気でこの際やるべきだと思いますので、ぜひ前向きに検討していただきたいと思います。 それから最後に、医療制度改革の議論がこれから始まるんですけれども、この医療制度改革の中で、この前の与謝野政調会長との質疑でも出ていましたけれども、いわゆる総枠管理というような話が出ている。それに対して、項目の積み上げでいくんだというような話も出ていますが、総枠管理制度というものについて、どういうふうに厚生労働大臣は考えていらっしゃるのか。問題点等があれば、お聞かせいただきたい。 ○尾辻国務大臣 総枠管理制度というのは、経済財政諮問会議あたりが言っておられることでありますけれども、何がしかの経済指標に合わせて総枠で医療費をきっちり抑えるということの考え方であります。 それに対して、私どもは、一つずつ、抑制はしなきゃなりませんから、抑制策を積み上げていって、その答えが一定の抑制につながれば一番好ましいと思っておりますということを言い、この十月中旬にもそうした私どもの試みの案は出させていただきたいというふうに考えておるところでございます。 ○山本(幸)委員 総枠管理制度は、どこが問題だというようなことはございますか。 ○尾辻国務大臣 過去の数字で見ますと、医療費は毎年三ないし四%伸びておるという事実もございます。ただ、これをそのまま放置できないので、抑制しなきゃならないというふうには考えておりますが、そうした、現実に医療費が三ないし四%伸びていくということと、それから総枠として頭から管理するという方法との兼ね合いがうまくいくかどうかということを、私どもはある面懸念をいたしておるわけでございます。 ○山本(幸)委員 総枠管理制度という、機械的にやることがこの社会保障の問題については適当でないと私は思っているんですけれども、そういうことを含めて、これから、医療制度改革、いろいろ細かいことをちょっと聞きたかったんですけれども、申しわけありません、時間がなくなりましたので、ぜひしっかり、できるだけのこともちゃんとやらなきゃいけないと思いますので、大いに頑張っていただきたいと思います。 どうもありがとうございました。 |