活動報告

山本幸三地方創生探訪記録@沖縄 (2017.7.23)

先月23日は、沖縄県の那覇市、久米島町を訪問してまいりました。一部抜粋し、本HPでご報

告致します。

 

 

今回のトップ画は、沖縄県庁での翁長沖縄県知事との面談の様子です。短い時間でしたが、国家戦

略特区の活用を含め、地方創生の取組について直接お話しする機会を頂きました。政府として情

報・人材・財政の3本の矢で支援をしているところですが、沖縄は、まだ手を挙げているところが

少ないようですので、離島振興に向けて、ぜひ、特区指定の申請に手をあげ、提案し、地元の課

題、規制を上手に乗り越えてほしいと思います。特区というのは、政府が一方的に何と言おうと制

度上地元の方から手を挙げていただかないと全く動いていきません。離島では、特に農業分野での

外国人労働者の受け入れや農用地内での農家レストラン運営について、特区指定の申請の意向があ

るようですので、活用して頂きたいと思います。

 

ー 那覇市 ー

・ANA沖縄貨物ハブ

平成21年にANA Cargoが那覇空港をベースとして、日本とアジアを結ぶ巨大な物流ハブを構築

しています。

現在、沖縄貨物ハブは24時間運用(通関)が可能でダイヤの自由度が高く、国内は関空、名古屋、

羽田、成田、海外は台北、シンガポール、バンコク、香港、広州など8都市を65路線のネットワ

ークで結んでいます。沖縄は、日本の端だと言われますが、見方を変えればアジアの中心にあり、

アジアの主要市場(日本、中国、香港、台湾、ソウル、タイなど20億人市場)を飛行時間約4時間

圏内に含んでいるため、地理的な優位性があり、この地が選ばれています。

(24時間体制で、迅速な荷捌きに対応しています)

こうした優位性のもと、高速輸送に強みがあり、日本を含むアジア主要都市を22時~0時に出発

し、沖縄貨物ハブを経由し、翌早朝5時~9時に目的地に到着させることができるといいます。

また、農水産品輸出拡大にむけて、宮崎県や三重県等地方自治体との連携協定を締結しているほ

か、ハブを活用した、物流の構築のみならず、商流の構築(サプライヤーとバイヤーのマッチング

等)もサポートしています。

この沖縄貨物ハブの設立の結果、平成20年の約1700トンから、平成28年には約176,0

00トン(成田、関空、羽田に次ぐ4位)まで那覇空港における国際貨物の取扱量が大幅に増加して

います。今後は、現在建設中の那覇空港第二滑走路の完成(平成32年3月末供用開始予定)によ

り、さらに利便性向上が期待されます。

 

・沖縄ツーリスト株式会社

 

沖縄ツーリストは昭和33年創業の沖縄を拠点とした旅行会社であり、アジアの中心地である沖縄

の地理的優位性を活かして、「地域主導型観光」をビジネスモデルに国内外からの沖縄旅行者を受

け入れています。平成24年からムスリム客を対象にした「ムスリム沖縄ツアー」の実施をしてお

り、同年には350名のムスリムを迎え入れ、「ツアー・グランプリ2012国内・訪日旅行部門

グランプリ」を受賞しています。

レンタカー事業を含めた売上高の7割近くがインバウンド事業を占めており、企業内保育所の設置

など社員の雇用環境整備にも力を入れています。

また、IT企業とICチップ内臓リストバンド「スマイルタグ」を共同開発し、自社ツアーを申し込ん

だ外国人観光客を対象に国際通りを中心に一本のリストバンドで免税書類作成、電子マネー、体験

型ゲーム、クーポン、観光施設での入場券の代替など複数機能に対応できるサービスを展開するな

ど、インバウンドの取り組みにも先進的に取り組んでいます。

「スマイルタグ」・・・リストバンドへ非接触タグを埋め込んだウェアラブルデバイス。

(スマイルタグの説明を受けます。なんと、「第18回自動認識システム大賞」の大賞を受賞した優れものだそうです)

 

ー 久米島町 ー

・久米島町の高校魅力開発プロジェクト

 

平成20年、県教育委員会より県立久米島高等学校の園芸科の生徒募集停止の提案がなされたこと

を契機に、行政や教育委員会、町商工会、地域住民有志などによる「久米島高校の魅力化と発展を

考える会」が発足し、「島の教育は島全体で応援する」との考えの下オール久米島で、本格的にこ

高校魅力化プロジェクトが始動しています。こちらは、生徒数を増やし魅力ある高校づくりを目

指していくというもので、「授業の魅力化」「離島留学」「町営塾」の3本の柱からなります。

そのひとつの「島留学プロジェクト」ですが、これは、高校3年間を久米島高校で過ごしながら、

将来の夢を見つけ、その実現に向かって、挑戦したい生徒を全国から募集しているもので、町外か

ら沖縄県立久米島高等学校へ入学する生徒を久米島町離島留学生として、町営寮の提供と、身元引

受人の紹介を行っています(募集人数:毎年10名程度)。その多くは、東京神奈川など都市圏の子

供たちであり、彼らは部活や同好会、地域の清掃など行事に積極的に参加するので、地元の生徒に

とってはとても良い刺激になっているようです。

また、今回訪れた交流学習センターの「じんぶん館」も平成28年4月にオープンし、県外から久

米島高校に入学する生徒用の宿泊施設と、町営塾「久米島学習センター」を兼ね備えた施設となっ

ています。(「じんぶん」とは、沖縄の言葉で、”知恵”という意味で、この施設で切磋琢磨し、「じ

んぶん」をつけて世の中に羽ばたいていってほしいという想いが込められているそうです。)

島留学生は、この「じんぶん館」内の町営遼等で3年間生活します。

この「久米島学習センター」も、同プロジェクトの一つで、学力向上や希望する進路の実現をサポ

ートする町営の塾として、2015年に開校したものです。こちらでは、ICTを用いた個別学習や大

学進学のための推薦入試対策にも力を入れています。

最後に、「授業の魅力化」として、総合的な学習の時間を利用した「まちづくりプロジェクト」が

行われています。これは、久米島町の課題や新たに取り組みたいことなど、興味のあるテーマごと

にグループに分かれ、調べ学習と現場体験(インターンシップ)を通じて解決策を考え、発表すると

いうもので、高齢者の健康増進や雇用創出、観光振興や世代間交流の促進など、幅広いものになっ

ています。また、「地域学」と題し、久米島についてより広く学ぶ選択科目として、自然・伝統文

化・農林水産業・観光・福祉・医療など、町内の各分野の方々を講師に、見学や実習を交えて学ぶ

ものを導入しています。

(吉野・久米島町教育委員会教育長より取組状況を伺います。)

 

(今回は現地高校生と意見交換をする時間をいただきました)

 

 

・島ぐらしコンシェルジュ - 久米島町の移住定住促進計画

 

 

久米島コンシェルジュは、久米島町の移住定住促進を目的としたワンストップ相談窓口となってい

ます。久米島町は、平成27年までの10年間で約1500人の人口が減少していた中で、人口減

少に歯止めをかけ、より魅力的なまちをつくる為、平成27年に「第二次久米島町総合計画」を策

定しており、この計画の施策の一つ「移住定住促進体制の充実」を実現するため、3人の地域おこ

し協力隊を募集し平成28年5月に発足しています。それらは古民家をリノベーションしたコワー

キングスペース「仲原家」を拠点に活動しています。

町の仕事・住宅・暮らし・子育てなどの情報を収集し、ホームページ「島ぐらしガイド」等で発信

しています。発足後半年間で94件の移住相談に対応し、16人が移住しており、多くは3、40

代が中心だそうですが、マンションなどの利用者が多く空き家の利用にはつながっていない現状が

あるようです。着実に定住につながるような施策を導くべく、しっかりとした情報の収集や転出入

などデータの分析に取組んでいく必要がありそうです。

・海洋深層水関連施設

 

久米島町は、沖縄県海洋深層水研究所の開所以来、海洋深層水利用に関する研究開発において主導

的な役割を担うと同時に、研究開発成果の民間企業への移転により、海洋深層水利用産業を島の主

要産業へと成長させています。この実績を基に同町は、地域資源である海洋深層水の異なる利用拡

大によって、エネルギーの自給率向上を図るとともに、地産地消・循環型社会の構築を目指してい

ます。海洋深層水関連事業(車エビ、化粧品、海ぶどう等)の28年度の売り上げは、約25億円に

上り、140名の新規雇用を創出しています。

今回訪れた、海洋深層水研究所は、平成13年に開所し、海洋深層水が持つ低温安定性、富栄養性

及び清浄性と周年を通して、温暖な沖縄県の沿岸表層海水の特性を利用した新たな水産技術の創出

や、海洋深層水の低水温性を利用して、土壌や養液を冷やし、野菜・果物・花きの周年安定生産と

開花時期の調整によるこれらの端境期出荷技術の開発を行っています。

また、下写真の海洋温度差発電実証設備は、沖縄21世紀ビジョン基本計画で示された低炭素島嶼

社会の実現に向けて、海洋エネルギーの研究開発を促進し、沖縄の地域特性にあったクリーンエネ

ルギーの地産地消による環境負荷の低減をはかる事業となっています。こちらは、沖縄県から委託

された民間企業が佐賀大学の協力を得て、平成25年度より運転を開始しており、太陽に温められ

た表層海水と海洋を循環する冷たい深層海水の温度差を利用し発電しています。

24時間で100kW発電が可能であり、純国産の技術として世界を牽引しています。今後は、1

MW発電の商用化を目指しています。

 

 

そして、今回は、株式会社ジーオーファームの牡蠣陸上養殖施設も見学させていただきました↓。

こちらは、首都圏の商業施設や百貨店を中心に、オイスターバーを展開する親会社の株式会社ゼネ

ラル・オイスターの牡蠣の陸上養殖業を承継して、平成27年12月に設立されています。こちら

では、海洋深層水と気候メリットを活用した微細藻類の培養法・濃縮低温貯蔵(冷結保存法)の独自

技術を研究開発しており、牡蠣の陸上養殖を実施しています。特に、人体に有害な菌やウイルスを

含まない海洋深層水を活用した世界初の牡蠣(ウイルスフリーの「アタラナイ牡蠣」)の完全陸上養

殖事業に取組んでおり、今後は量産化を目指しています。牡蠣好きにはたまらない商品になりそう

です。このほかにも、海ぶどうや化粧品など海洋深層水から様々な産業が生まれて需要が拡大して

いるため、今後は、その取水の規模を拡大させていくようです。以上のような海水温の温度差発電

など海洋深層水の展開力は、後進国からも注目を集めているようで、これまで、61ヶ国、710

0人が視察に来ているそうです。地域資源を上手に活用した、素晴らしい取組み事例でした。

(久米島町の取水容量は、全国的にもダントツトップです↓)

 

以上。