(後半国会に向けて精神を整えます。)
先月、5月20、21日は、徳島県の鳴門市、岡山県の倉敷市、岡山市、大分県の由布市、別府市
を訪問してまいりました。
一部抜粋し、本HPで報告したいと思います。
今回のトップ画は、1698年に建立された国指定史跡の曹源寺での座禅の様子です。こちらで
は、「修行に国境なし」という住職の考えのもと、海外の修行者に門戸を開き、今では平均20人
程度が修行をおこなっています。米国をはじめ、ドイツ、フランスなどの欧米、台湾、インドなど
これまでに10ヶ国以上の修行者を指導しているといいます。短い時間でしたが、外国人修行僧と
もお話をすることができました。今回はご地元の山下貴司代議士も駆けつけていただいています。
ザ・ナルトベースは、飲食店向けのシステム開発を手掛ける(株)セカンドファクトリー(東京都府中
市)が設立したブエナピンタ(鳴門市)が運営しており、「”おいしい”を鳴門から世界へ」をコンセプ
トに、鳴門市の地方創生加速化交付金事業として、昨年12月に開所した複合型六次化供創施設で
す。
食材加工施設を設置し、首都圏のシェフや栄養士らが生産者に代わり、首都圏のニーズに沿った商
品の企画・提案・販売を行うほか、直売店や地産地消レストランも併設されており、県産食材の魅
力を発信しています。食材に対するシェフなどの意見を随時聴取することで、ニーズをつかみ生産
サイドへ的確なコンサルティングが可能になるのです。一方で、生産サイドとも密に情報共有をす
ることで、現場の状況を把握し、安心して消費サイドも購入ができるといいます。また、こちらで
は他にも規格外品の食材、例えば味は良いものの、形や大きさ、色が規格外の食材を加工品として
再生させています。このように、産地で加工すれば完熟した最適な食材を使うことができるなどの
理由から徳島で開設することにしたといいます。生産サイドと消費サイドと密に連携をしながら、
保管、加工、販売や生産などを行っていく、まさに食の共創のプラットフォームであり、大消費地
と連携していくためにこうしたハブ機能を備えた存在は地方にとってかなり大きいはずです。
そして、最後にこちらの施設はシェアオフィス機能も併せ持っており、東京の(株)セカンドファ
クトリーの生産者向け及び飲食店向けシステム開発部門がサテライトオフィスとしての利用を予定
しているそうです。シェアオフィス機能をもった地方の企業との連携は、全国的に展開できる好事
例ではないでしょうか。
(施設で製造した加工品などを販売する直売店「鳴門縁日」の店内の様子です。)
児島地区の中心にある味野商店街のシャッター通り化に危機感をもった商店街や地元ジーンズメー
カー、近隣企業等が「児島ジーンズストリート協議会」を設立し、商店街の通りを「児島ジーンズ
ストリート」と命名して再生を図りました。空き店舗へ地場ジーンズメーカー等を誘致すること
で、30店舗を超えるジーンズ店の集積地区となっています。高い技術を駆使した高品質な国産ジ
ーンズを生産・販売し、国産ジーンズの聖地として、年間15万人超の観光客が訪れるようです。
そして、ご存知の方もいるかもしれませんが、本年の通常国会開会日において、安倍総理の施政方
針演説の中で地方創生の好事例として同ストリートの取組が紹介されています。
http://www.kantei.go.jp/jp/97_abe/statement2/20170120siseihousin.html (首相官邸HP)
(色鮮やかなジーンズが出迎えてくれました。ジーンズのカーテン?をくぐるのは人生初です。)
また、海外への販路開拓も行っており、フランスやオランダ、ドイツの展示会にも出品し高い評価
を得ているそうで、欧米からわざわざジーンズ目当てに買いに来るお客も珍しくないそうです。そ
うした方々は、その品質の高さを理解しているため、10万、20万のジーンズを複数本買われて
いくそうです。このように中小といわれるような企業でも全国展開を飛び越えて、グローバル展開
に打ってみたら成功したという事例は全国にも多々あるようです。ある意味、東京で強いライバル
と戦うほど体力は無くても、海外に出て勝負していくという道もあるのです。
(桃太郎ジーンズ本店の様子です。こちらのジーンズは特濃インディゴなる他にはない濃さがあり、色落ちも楽しめるようです。色、シルエットなど多くの種類があります)
大原美術館は、倉敷紡績2代目社長の大原孫三郎氏が、友人の洋画家児島虎次郎氏の業績を記念し
て設立した、日本で最初の西洋近代美術館であり、さらに、日本で最初の西洋美術中心の私立美術
館となっております。驚いたことに、児島虎次郎氏は実際に渡欧し、モネなどから直に勉強をし、
西洋美術を学んだといいます。その児島氏らの目利きで収集されたエル・グレコ、モネ、ゴーギャ
ンなどの絵画をはじめ優れた作品が所蔵されています。こちらでは、日本の現在美術を担うアーテ
ィストを紹介する事業(ARKO事業・AM倉敷事業)を行う一方、教育・鑑賞支援事業にも力をいれて
おり、特別解説員の解説付きで館内を巡ることができるモーニングツアー、イブニングツアーや子
供向けの美術館探検隊などを行うほか、「学校まるごと美術館」という活動を行っていて、これは
地元小学校の全校児童を休刊日に美術館へ招き、学校教員とスタッフがプログラム(例えば、美術館
の機能の説明や模写、対話型鑑賞など)をつくり、児童の感性を鍛えていくというものです。こうし
た活動もあり、リーピーターも多くいらっしゃるそうで、年間入館者数は300万人を超えるとい
います。館内は撮影禁止でしたが、エル・グレコやモネなどを見させていただきました。
※ARKO事業・・・児島虎次郎(1881~1929年)の旧アトリエ・無為村荘(同市酒津)を活用し若手作家を支援する事業。
※AM倉敷事業・・・アーティストが倉敷との出会いを通じた作品制作・公開を行う事業で、作品展などを開催。
(美術館の前で皆様と。今回は伊東倉敷市長(最右)も駆けつけてくださいました)
玉の湯は、昭和28年禅寺の保養所として設立した温泉宿です。自然との共生をはかりながら、街
づくりを進めてきた由布院温泉街の中にあり、地域に根差した温泉旅館として多くの人が訪れま
す。
代表取締役社長の桑野和泉氏は、由布院温泉観光協会会長として、由布院温泉のまちづくりにかか
わっており、本年2月の「地方創生チャレンジミーティング」でも観光と地域づくりに関する講演
を頂戴したところです。
桑野氏からは、由布院温泉が、地域住民と一緒となり、景観や自然環境を守りながら観光振興に取
組まれているお話を伺いました。
施設内は緑豊かな保養所となっていますが、聞いたところこのまちには景観まちづくり条例として
様々な規制がおかれているようです。例えば、1000㎡を超える宅地の造成や高さが10mを越
える建築物禁止という明確なルールだけではなく、看板の大きさや色、客引きや店外までの音楽禁
止など今まで暗黙のルールとされてきたものまでを明文化してルール作りを行っています。開発を
極力抑えようとする地区を定め、それにのっとって開発行為、保全活動を相互に調和させながら、
町全体の成長を管理するものです。条例の考え方は、「お住みになりたいのなら、湯布院のまちづ
くりの考え方・ルールに従って、一緒に参加してください」ということを基本にしています。
そもそも、約40年前他の温泉地がリゾート化していく中で、岐路に立った湯布院は、もともとあ
った田園風景を残して、独自の景観や雰囲気をつくっていく、具体的には、ドイツの滞在型保養都
市をモデルにしたといいます。温泉という他にはない地域資源を活かしていく中で、上記のような
ルール作りとともに、旅館経営者たちも観光客を取り合うのではなく情報共有を頻繁に行いなが
ら、イベント開催やメディア発信を通して、危機を乗り越えたそうです。ご存知のように昨今の
「行ってみたい温泉地ランキング」では常に上位にランクインするほか年間400万人もの観光客
が訪れ、約6割がリピート率を保つなど、温泉地づくりの成功事例となっています。
(桑野様(左)とは、4ヶ月ぶりの再会です。お話を聞いて以来、この視察を楽しみにしておりました)
立命館アジア太平洋大学は、今から17年前、大分県と別府市による土地の無償供与、施設設備投
資で大幅に支援してもらい、学校法人立命館・大分県・別府市の三者により平成12年に開学した
私立大学です。社会科学に特化した2学部(アジア太平洋学部、国際経営学部)、2大学院(アジア太
平洋研究科、経営管理研究科)を擁し、学生数約6000名のうち半数が世界80ヶ国以上からの留
学生で構成されています。立命館大学とは、「一法人別大学」として、独立しているため、理事会
などに縛られずリーダーシップを発揮できるといいます。
開学時から国際大学としての「3つの50(世界50ヶ国・地域以上からの留学生の受け入れ、全学
生の50%が留学生、全教員の50%が外国籍教員)」を掲げ、我が国の大学の国際化を牽引するス
ーパーグローバル事業(文科省)にも採択されており、インドネシア、タイ等のASEAN主要国、さら
にアフリカ全域からの受け入れ数は日本の大学の中でも上位となっています。こちらでは、日本語
教育に大変力を入れており、入学時から「軍隊」の様(学生談)に鍛えられるといいます。そうして
鍛えられた学生は、卒業後名立たる企業に勤めていくといいます。ただ、働いていく上で、ビザな
どに関しては未だ問題があるようで、その点は今後対応していく必要がありそうです。
(学生の皆様と。日曜日にも関わらず、キャンパスを案内して頂きました)
別府市は人口12万人程ですが、その中で留学生は300人とかなりの比率です。留学生のお話を
聞いて驚いたのが、住民の皆さんにあたたかく受け入れられ、別府市にいても、自身が留学生だと
いうことは気づかなかったが、東京に来てはじめてそれを実感したと語っていました。土地無償提
供などのお話がありましたが、住民の方々も若い人々に来てもらい、まちが活性化していくのを好
意的に捉えているようです。
去る5月22日に、「地方大学の振興及び若者雇用等に関する有識者会議」の中間報告を取りまと
めましたが、地方大学の振興にあたっては、総花主義ではなく、APUが行っているグローバル人材
育成のような特色ある取組が見本となり盛り込まれているところです。
(学食には、当然ハラールもあります。最近東京でも広まってきていますが。)
別府ラクテンチは別府市の”遊べる温泉都市機構”の取組第一弾としての「湯~園地」計画が実行さ
れている遊園地です。平成28年11月21日に「You Tubeで再生回数が100万回を超えたら、
別府市が、温泉に浸かりながら遊べる「湯~園地」計画を実行する」という、公約ムービーをYou
Tubeで公開したところ、公開4日目で再生回数が100万回を達成し、別府市も計画の実現に向け
てクラウドファンディング等を通じての支援募集やアトラクション計画の策定等を行い、支援金が
4,000万円を突破しているようです。観光振興のための柔軟かつ画期的な発想が印象的です。
〇湯~園地計画 spamusement park project
(別府市長野市長(右)とご地元の岩屋毅代議士も駆けつけてくださいました)
清島アパートは、大分県別府市にある戦後すぐに建てられた元下宿アパートです。別府現代芸術フ
ェスティバル2009「混浴温泉世界」の「わくわく混浴アパートメント」の会場として使用され
たことにはじまり、会期終了後も、NPO法人BEPPU PROJECTがアーティストの活動支援の一環
として、運営しています。全国から集まった9名の芸術家が滞在中であり、全国各地から集まるア
ーティスト/クリエイターによる様々な企画が日々開催されているようです。
こちらでは、NPO法人の代表者の方から、アーティストの人材育成活動等のお話を伺い、清島アパ
ートに住むアーティストの方々と意見交換を行いました。
(このように畳で車座で若い人たちと接すると、こちらも活力をもらえます)
(入居者の大志溢れるお部屋・アトリエを拝見します。)
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今回の視察では、創意工夫を凝らした様々取り組みを直接見ることができ、大いに刺激を受けまし
た。温泉やアートによる地方創生の取組だけではなく、地方大学の振興において重要である独自性
を最大限生かしたAPUの視察は非常に有意義でありました。このたび、まちひとしごと創生基本方
針2017が閣議決定されますが、地方創生のためには、このような地方の皆様の主体的・自主的
な取組が重要であり、頑張る地方に対しては、引き続き、情報、人材、財政面から最大限の支援を
させていただきます。