活動報告

山本幸三地方創生探訪記録@高知 (2017.4.23)

先月、4月23日は、高知県の南国市、高知市、大豊町、本山町を訪問してまいりました。

一部抜粋し、本HPで報告したいと思います。

 

トップ画は、高知市の地産地消屋内型屋台村「ひろめ市場」です。内閣府の稼げるまちづくり取組

事例集「地域のチャレンジ100」に選出されており、テナント賃料の抑制や食器の一括管理等の

工夫により、出店コストのハードルも抑えられるなど、出店チャレンジしやすい場となっていま

す。市民と観光客併せて年間約280万人を集客し、周囲の商店街への波及効果を創出していると

いいます。

 

 

ー 南国市 ー

・(株)南国スタイル

(次世代型施設園芸ハウスを視察します)

 

南国スタイルは、県のクラスタープロジェクトの取組の一つである、日本トリム(整水機メーカ

ー)、JA南国市が出資する農業法人です。高知大学、高知県、南国市が連携し、「電解水素水」を利

用した次世代型園芸ハウスにおいて収穫される野菜を「還元野菜」として生産拡大を図っていま

す。電解水素水、つまり抗酸化性のある水素を含んだアルカリ性の電解水素水を農作物に使用する

ことで、野菜に含有する抗酸化成分の増加や収穫量の増加が期待でき、野菜本来のビタミン、ミネ

ラル、抗酸化成分を豊富に含んだ「還元野菜」としてブランド化することで高付加価値が期待でき

るといいます。

その機能性等研究において、高知大学や農業技術センターとも密着して連携されており、農商工産

官学連携の好事例です。他にも、地産地消を推進していくべく、地元ホテルや学校、病院、直売所

や農家レストラン等と連携した還元野菜販売等を通じ、6次産業化に取組まれており、還元野菜に

よる里づくりを目指されています。

今回説明していただいた南国スタイルの中村専務(上部写真左)は、県と高知大学が連携して取り組

む、土佐フードビジネスクリエーター(土佐FBC)の第一期卒業生だそうです。この後、本山町でも

移住者の中に、この土佐FBC出身の方がおられました。

※土佐FBC・・・地域的に特性に鑑み地域における食品産業の振興に必要とされる中核人材を育成することを目的に、開発、マーケティング、ブランディング、品質管理まで一貫して学ぶことができる講座を実施。

 

 

・(株)坂本技研

南国市では、南国スタイルに加え、ファインバブル(微細気泡:気泡の球相当直径が100マイクロ

メートル以下のもの)の発生装置の研究・開発を行う(株)坂本技研へお邪魔をいたしました。こちら

でも、高知工業高等専門学校、高知県工業技術センター等と共同研究・開発を行っており、現在、

農業、水産分野など第一次産業分野で利用実験を実施しています。農業分野でいえば、生姜の洗浄

水として利用し、約40%の節水を実現するほか、水産分野では、カンパチや清水さばで実験し貧

酸素状態の改善を確認できたそうで、今後は工業・環境・食品分野などの他分野での利用促進に

を目指しています。このように、ファインバブルを中心に多分野の産業クラスターが形成され、地

方創生の原動力になっています。従業員の方も、地元出身、例えば地元大学、高校などからの就職

も多く、他方、大学・研究機関との連携の中で農業技術センターなど高知県庁に進まれる学生も多

いようで、若者の雇用の創出などそうした産官学連携の効果が表れています。

(坂本代表取締役に施設内を案内して頂きます。本当に細かい気泡です)

・高知大学物部キャンパス

南国市では、高知大学の物部キャンパスにお邪魔をしました。こちらは、平成27年4月に地域協

働学部が新設され、地域での実習に力を入れているほか、実践段階では行政やNPO、企業と組んで

商品開発などフィールドワークを行っているようです。今回は、上田学部長より、設立趣旨や取組

内容を伺うほか、学生から事業企画プロジェクト、地域の現状と課題を知るための地域理解実習の

活動報告や、地域資源を活用した商品開発や産学官連携の6次産業化などのプレゼンをしていただ

きました。地域に入り込み、現状に向き合って課題解決を行っていくという素晴らしい経験がこち

らではできます。地域を背負う人材として彼らの将来を期待せずにいられません。

(短い時間でしたが、学生から地域への熱い想いをいただきました)

 

ー 高知市 ー

・産学官民連携センター(ココプラ)

産学官民連携センター(ココプラ)は、平成27年4月に、地域資源の強みを生かした商品づくりや

人材育成を加速させるために、産学官民連携のプラットフォームになるように設置されています。

センターでは、「知」「交流」「人材育成」の拠点として、各種の取組を行っています。例えば、

「知の拠点」としては、企業や地域のニーズに対応し、それを事業化につなげていくため、県内高

等教育機関と連携してコーディネータを各地域ごとに配置し、相談窓口を設置しており、また、

「交流の拠点」としては、県内外から多くの人材や知恵を呼び込み、課題解決・ビジネスチャンス

につなげるため、大学等の研究内容紹介や連続講座などを実施し、経営者との相互連携など産学官

民の交流の機会を創出しています。そして、「人材育成の拠点」として、地域の担い手となる人材

を育成するため、土佐まるごとビジネスアカデミー(土佐MBA)において、様々な研究事業の実施及

び大学等が実施する社会人教育等の情報を一元的に発信しています。この土佐MBAでは、経営戦略

から、マーケティング、会計、人材マネジメントなどビジネスの基礎から応用までを学べる講座を

実施しています。

(高知県の担当課長より取組の説明を受けます)

 

ー 大豊町 ー

・山村農業実践センター

山村農業実践センターは、平成28年4月に開所したばかりの施設で、研修から就農、そして就農

後の営農まで充実した独自の支援体制を整えており、宿泊施設や出荷作業のできる施設も併設して

います。

今回は、農商工産官学の連携事例である、「碁石茶」「地キビ焼酎」の取組について伺いまし

た。

 

大豊町で古くから伝承されてきた「碁石茶」は、二段階発酵(①好気的カビ付け ②嫌気的乳酸発

酵)を行うという独特の製法で生産されるお茶であり、発効後に3cm角に裁断された茶葉をムシロ

に並べている様子が黒碁石を並べているように見えることからこの名前が付いたといいます。

こちらは、高知大学との連携により、その希少価値や有効成分などを調査・分析し、生産・販売(ブ

ランド化)の強化に取組み、現在ではテレビや雑誌にも取り上げられるほど人気となり、品薄状態に

なっているようです。

(大豊町では、町長同性のもと、碁石茶、地キビ焼酎の取組について説明を伺います。)

 

最大の特色である穏やかな酸味は、四百有余年受け継がれた秘伝の伝統製法で生まれたようです。

製造工程も伺いましたが、農薬を使ってしまうと一回目の好気発酵がうまくいかないそうで、農薬

を使わない、体に優しいお茶であるとのこと。

 

また、地キビ焼酎ですが、こちらは、大豊町八畝地区で古くから伝わる交流種トウモロコシ「地キ

ビ」の生産を復興させるところからはじまっています。地キビ(黄色)とは、大豊町において、江戸

時代から栽培が継承されている硬粒種トウモロコシで、餅キビ(黒色)はもちもちとした触感の糯種

トウモロコシです。いずれも近年スイート種やスーパースイート種に押されて消失する危険があっ

たそうです。そうした中で、これらを残すべき地域資源と捉えて、地域食材の復興と保全を目的

に、地域の新たな稼げる商品を開発するため、耕作放棄地を活用して栽培面積を拡大し、菊水酒造

株式会社、高知大学教員、学生団体「MB」、地元団体「大豊シャクヤクの会」及び高知県工業技術

センターが連携し、地キビを原料とした焼酎「八畝」を開発しています。写真のラベルは、株式会

社モリザ(土佐市)による土佐和紙を使用しています。

平成28年度は約1500本が完成し、大豊町の道の駅や酒屋で販売しているそうです。

(今回、特別に試飲させていただきましたが、独特の酸味が感じられました。)

 

ー 本山町 ー

・ばうむ合同会社

本山町の青年有志で立ち上げられた「ばうむ合同会社」は、地域のブランド米「天空の郷」の規格

外品を活用した焼酎を生産・販売しています。加えて、沖縄以外では初の泡盛の生産・販売を開始

しているほか、地域産材を活用したデザイン木製品(レースコースターなど)も製造・販売するな

ど、嶺北地域全体を巻き込み、地域商社のような活動に取組を広げています。平成20年に本山

町農業公社を中心とし、行政・生産者も参画した本山町特産品ブランド化推進協議会を設立し、品

種改良や生産性の向上につとめ、「天空の郷」のブランド化を進めたといいます。その結果、米・

食味分析鑑定コンクールにおいて、21年産、22年産と特別優秀賞を受賞するなど、全国的にそ

の品質が評価されているようです。

 

(特別に作業場を見せていただきました。)

(藤川代表より取組内容の説明をいただきます)

 

・本山町プラチナセンター

嶺北地域は、過疎化が進む現状の中、未来への危機感からスタートし、県内でも移住促進に積極的

に取り組んでおり、移住者自らが移住希望者へのサポートを組織的に行うなど、先進的な取組を行

っています。今回は、その中心的な役割を担うNPO法人れいほく田舎暮らしネットワークの川村事

務局長による取組紹介や、移住者の方々との意見交換をする機会をいただきました。こちらでは、

嶺北地域という広域での移住策を提案しており、中でも、二段階移住を推奨しています。

これは、東京など都会から、まずは高知市内へ移住し、その後嶺北地域へ移住をしていくという、

まさに二段階の移住で、段階的に環境に慣らせていくという画期的な取組です。意見交換会では、

大学で高知県に来て、Iターンで移住された方や、「この分野であれば高知にいても東京と変わらず

に仕事ができる」という力強い心持ちで、SEとして働いている方などがおられ、貴重な御意見を頂

戴しました。数字的にも昨年度は100人以上の移住者を数え、県内でも他地域は移住者割合は

1%未満ですが、同地域は2%を超えています。

(施設内で移住者の方々と意見交換を行いました。)

 

 

以上、今回の視察では、他にはない、「技術」を含めた地域資源を活用した地方創生の素晴らしい

取組がありました。また、高知大学にはじまるような学生が地域に入り込んだ産官学民連携プロジ

ェクトや農商工連携による、地消・外商・拡大生産という持続性のある取組が随所に見られまし

た。この度、「まち・ひと・しごと創生基本方針2017」をとりまとめていく中で、地方大学の

振興と地方の若者の雇用機会の創出など目玉施策として盛り込まれていくと思われますが、こうし

た高知県の画期的な取組は、日本全体のモデルになりうると確信をもっております。

 

以上。