今月2月11、12日は、北海道の札幌市、当別町、江別市、北広島市を訪問してまいりました。
一部抜粋し、本HPで報告したいと思います。
これまで、1月の上旬に東京・大阪・福岡で地方公共団体の首長向けにトップセミナーを開催して
まいりましたが、このたび、北海道庁からの依頼がありまして、北海道でも講演を行うこととなり
ました。道内の市町村長や経済団体トップの方々をはじめ、250名以上が集まる盛況の中、地方
創生の鍵となる理念やヒントとなる成功事例、RESASの活用の仕方などについて講演を行いま
した。セミナーでは、3名の民間の方々※から地方創生の実践事例も紹介され、それぞれが地域資
源を活かして稼ぐ取り組みにつなげており、皆さんの活動に大変感銘を受けました。
津軽海峡マグロ女子会 杉本夏子氏
(株)トビムシ代表 竹本吉輝氏
特に、十勝バスの野村氏は、廃業寸前の路線バス会社を継ぎ、バス沿線住民宅へ訪問して直接ニー
ズを抽出し、改善に取り組んだといいます。いかに住民の方に乗ってもらえるかを考え、乗り方か
ら通院・買い物など目的別に時刻表を作成、また、インバウンドのためにアプリを開発し、広域で
様々な事業と連携を組んでおり、全国に広めていける事例ではないかと感じました。5年連続黒字
であり、利用者もここ5年で約3000人程増えているそうです。
今後、一層市町村長が意識を高く持ち、リーダーシップを発揮して、地方創生に取組んでいただく
ことを期待したいと思います。
今年で68回目の開催となる雪まつりは、札幌市、札幌商工会議所、市内企業、団体などから構成
される「さっぽろ雪まつり実行員会」によって企画運営され、道内のみならず、日本全国や海外か
らおよそ200万人(海外から10万人)以上の観光客が訪れるそうです。
※さっぽろ雪まつりの経済効果(第65回)は、市内総消費額329億円、生産波及効果419億
円、雇用効果3364人、税収効果10億円とかなりのものです。
陸上自衛隊や民間団体の皆さんの創意工夫がなされた雪像(今回は全部で197基)を拝見し、外国
人旅行者にとっても魅力あるイベントであると実感しました。ちなみに、やはりこの時期はホテル
が予約しづらいとのことです。
当別町では、当別町版CCRCプロジェクトの一貫であります、スウェーデンヒルズと社会福祉法
人「ゆうゆう」を視察いたしました。
当別町では、「地域で稼ぐ」ということを明確なテーマに、農産物の6次産業化による稼ぐ農業ビ
ジョンのほか、道外からアクティブシニアの移住・定住が増えているスウェーデンヒルズや社会福
祉法人「ゆうゆう」の活動を中心に、多世代が”ごちゃまぜ″で交流する当別版CCRC構想※など
画期的な取組が行われています。
当別町版CCRC構想※・・・当別町のスウェーデンヒルズ地区は、国による日本版CCRC構想
の動きに先行する形でCCRCの発想が組み入れられて開発された地域であり、町全体が人口減少
に悩む中、人口が増加している数少ない地域となっています。しかし、同地域には医療・介護関係
施設が整備されていないことから、今後は「駅周辺再開発プロジェクト」による商業や医療といっ
た施設の整備の動きと併せて、スウェーデンヒルズからJR石狩太美駅周辺及び道の駅までの地域
を当別町版CCRC構想のエリアとして民間事業者の 誘致を進めるとともに、既存の環境を活かし
た取り組みを進めていくようです。(下図参照)
(当別町長や施設の管理センター長と意見交換をします)
このスウェーデンヒルズは、当別町の丘陵地を訪れた元在スウェーデン日本大使が「この風景はス
トックホルム郊外とよく似ている」と絶賛したことに端を発し、1979年から開発がはじまりま
した。その後、分譲が開始され、今では769人(2016年2月1日現在)もの住民が暮らすひと
つの町を形成しています。豊かな自然はもちろんのこと、町のCCRC構想をベースに開発され、
全世代型のコミュニケーションが可能になり、高台に映える個性豊かな家々が織りなす美しい街の
景観、北欧の街角をお手本とした先進の街づくりが高い評価を得ているようです。
ヒルズの中には交流拠点となるスウェーデン交流センターが建てられ、1987年には当別町とス
ウェーデン国レクサンド市が姉妹都市提携をしたこともあり、1990年にはスウェーデン国王も
来訪されているとのことです。
(「ゆうゆう」の関係者の皆様と)
「社会福祉法人 ゆうゆう」では、施設や事業所、サービスを「地域に創る」だけではなく、様々
な福祉アプローチにより「地域を創る」ことを目指し運営しています。そして、ゆうゆうは、共生
型コミュニティー農園 「ぺこぺこのはたけ」を運営しており、農業を中心に子供から高齢者、障が
い者、学生など、あらゆる地域住民が集い、活動することができる交流の場となっています。そこ
では、障がい者のみならず高齢者の就労の場にもなっており、そこにスウェーデンヒルズの移住・
定住者がボランティアで参加して、道内外を問わず全国から就労の場となり、交流の場となってい
るようです。
(EBRI内のレストランで三好江別市長はじめ担当者からお話を伺います)
江別市では、和田義明衆議院議員や三好江別市長と意見交換をするとともに、今回は北海道情報大
学の学生の皆さんとも意見交換をする時間を設けていただきました。同市では、北海道情報大学に
加え、酪農学園大学、北翔大学、札幌学院大学の市内4つの大学を卒業した学生が近隣地域に愛着
を持ち、活動し定住してもらえるよう、「学生地域定着自治体連携プロジェクト」が進められてい
ます。これは、江別市をはじめとする8つの広域の自治体がインターンシップやボランティア、イ
ベント参加、就農体験、研究課題の提案など様々な活動を学生に提示し、そして、大学・自治体・
関連団体からなる「学生地域定着推進広域連携協議会」が地域における学生の活動希望とのマッチ
ングを行っていく、というものです。市内企業への支援や企業誘致を進めるとともに、産業の担い
手確保のため、民間企業と連携してアルバイトとインターンシップを兼ねる有給インターンシップ
事業の充実を図っており、その中で、高校生や大学生、働きたい女性への就労支援のほか、介護分
野への就労希望者の資格取得に向けて取り組んでいるようです。
こうしたインターンシップを通じて、地域の課題、あるいは自分たちの将来についていろんな
考えをめぐらせるということを聞き、多くの若者も参加しているという意味で勇気付けられまし
た。 地方への新しい人の流れをつくり、将来にわたって活力ある地域を維持していくために、非常
に有効な取組だと感じます。
介護施設「ともに」は、北広島団地※内に、団地内の少子化により廃校になった小学校を活用して
開設されたものです。
サービス付き高齢者向け住宅、複合型サービス、グループホームに加えて、訪問看護事業所、訪問
介護事業所、居宅介護支援事業所としており、それに加えて、団地の中で利便性の高い場所にある
小学校跡地(市からの無償提供)を地域包括ケアシステムの拠点とすることで、地域のニーズに対応
しています。
※北広島団地は、戸建て住宅を中心とした住宅地で、札幌市のベッドタウンとして昭和44年から開
発され、同地域の人口は北広島市全体の4分の1にあたる約16,000人となっています。昭和40年代
から50年代に住み始めた世代を中心に高齢化が進行し、路線バス利用者の減少や空き家の増加、児
童数の減少といった課題を抱え、北広島団地フェニックスプロジェクトと称し、公共交通機関の再
整備や小中一貫教育の導入など教育機能の向上、モニターツアーの実施など、国の支援により事業
を実施しています。
以上、今回の訪問では、札幌市、江別市、当別町、北広島市と北海道の中でも限られた地域でした
が、視察した様々な取組は、特に稼ぐ力の向上、移住・定住の促進、雇用創出といった明確な結果
につながっているようでした。
こうした地方公共団体や企業等による主体的・自主的な取組に対して政府として積極的に支援をし
てまいりたいと思います。