先週末1月28、29日は、熊本県の天草市、鹿児島県は長島町、阿久根市、薩摩川内市、いちき
串木野市、鹿児島市を訪問してまいりました。 一部抜粋し、本HPで報告します。
(運よく”唯一の”機体を見ることができました)
天草エアラインは、平成10年10月に熊本県、天草島内2市1町及び民間企業の出資により第3
セクター方式で設立され、平成12年3月より就航されています。現在は、日本初導入のATR機
(48人乗)に機材更新して、1機で天草を拠点に福岡、熊本及び熊本大阪間を1日10便を運航
し、天草地域振興、医師確保等地域になくてはならない交通機関としての役割を担っており、機材
更新も地元の支援で実現されたそうです。また、サンタコス割等独自のユニークなおもてなし等に
より多くのメディアにも取り上げられ、天草地域の知名度向上にも大きく寄与しているとのことで
す。
一方、保有機1機の厳しい経営状況から債務超過の危機に陥ったものの、熊本県、天草島内2市1
町からの整備費補助等の支援が開始され、会社としてもマルチタスクでの業務やサービスの工夫に
よりコスト削減が行われ、当期利益ベースで7期連続黒字を確保しています。昨年の熊本地震発生
後は利用客数が減少したものの、九州ふっこう割等の利用で持ち直し、震災後初のお盆を迎えた8
月では、帰省客等が多く利用し利用客数は8602人を記録したとのことです。(前年同月:71
95人)
「Ama-biZ」は、平成27年4月設立の一般社団法人で、天草市内の中小企業者の支援と起業創業家
支援を行う無料相談所として、市や商工団体、地元金融機関の5団体で設立されました。平成27
年4月から28年10月末までの実績として645の事業者に2591件の相談を受けているほ
か、リピート率も76%となっているそうです。中には、売上が30%アップした企業や取引先が
増加した企業が出てきているほか、企業支援による創業者30件、80名の雇用創出(平成27年
度実績)といった成果が出ているそうです。 「地産地消」、「域外に移出」「未来へ投資」の観点
を持ちながら、大企業誘致ではなく、地元の 中小企業等の事業力を高めていくこと、つまりは
「1社100人の企業誘致」より、「地場産業 100社100人雇用」を目指し、大企業の誘致よ
りも地元の中小企業等の事業力を高めていくことに注力しています。
こちらではほかに、天草市より市の移住・定住支援策について伺いました。 天草市は平成18年3
月に誕生後、天草地域の人口減少にの歯止めをかけることや、農地保全・農 村の活性化を図ること
を目的とし、田舎暮らしを志向する都市住民を受け入れる施策を展開してい ます。(国の「都市と
農山漁村の新たな共生・対流システムの構築に関する調査(社会実験)」を 市が受託)。 その後
も、移住希望者の受け入れ態勢強化のため、空き家等情報バンク制度の創設や、定住促進奨励金等
の助成事業、移住・定住コーディネーターの設置等にも取り組み、移住政策を積極的に推進してい
ます。特に、移住コーディネーターは、実際に外部からきた移住者が担当することで、より、実体
験を共有できるできるようで、開始したH27年度は37世帯(前年は14世帯)、H28年度は41
世帯と右肩上がりだそうです。ただ、今後は移住者で固まるのではなく、元からいる住民とふれあ
う枠組みづくりが課題だといいます。
杉本酒造は有名な「さつま美人」などをつくる蔵元ですが、こちらでは、午前中は焼酎工場、午後
はアーティストとして働く、という新しい働き方(社会人スポーツ選手のアスリート版)を実践し
ており、これは佐賀の鍋島酒造などにも広がっているようです。今まで企業のスポーツの支援はあ
りましたが、少なくとも芸術の分野は聞いたことがありませんでしたので、”より若くて、 やる気の
ある人材”を求めるための工夫がなされています。現在は、陶器や食器などをつくる アーティストが
2名在籍しており、個人で個展を開く方もいるようです。
(ご地元の小里衆議院議員と、長元組合長、ゆるキャラのぶりお君と)
日本一の養殖鰤の産地鹿児島県長島町。東町漁協は、「組合員のための漁協」「現状維持はあり
得ない」を掲げ、ブリ養殖をおこなっており、高い技術と、生産管理により厳しいEUのHACCP基
準 (※)をクリアし、世界29か国へ輸出しています。その原動力となるのは130人以上の漁師
で、現場には強烈なリーダーシップでそれを束ねる組合長の存在がありました。
こちらでは生産・加工だけではなく、加工品販売 や鮮魚販売、食堂運営プロジェクトを行ってお
り、ネット販売も行っています。 また、長島大陸視察ツアーなる、料理人や飲食関係者を対象と
し、食材仕入れ・ブランディングへつなげるプロジェクトも行っています。 昨年は地方創生の目玉
事業として、町の支援のもと、漁協として日本で初めて株式会社を設立しています。元楽天のトッ
プECコンサルタントを地域おこし協力隊に登用してネット版道の駅「長島大陸市場」をオープン
したほか、長島町の産品を利用してもらうための東京都心でキッチンカー「長島大陸ブリうま食
堂」や、辻調理師専門学校との連携によるシェフ交流事業などを進めていま す。これぞ地域資源を
最大限利用したブランディングです。
※HACCP…米国で宇宙食の安全性を確保するために開発された食品の衛生管理方式で、食品の製造・加工工程のあらゆる段階で発生するおそれのある微生物汚染等の危害をあらかじめ分析し、その結果に基づいて、製造工程のどの段階でどのような対策を講じればより安全な製品を得ることができるかという重要管点を定め、これを連続的に監視することにより製品の安全を確保する衛生管理の手法です。
(川添長島町長、稲葉鹿児島相互信用金庫理事長、井上副町長と)
長島町を一躍有名にした施策が、若者のUターンを促す「ぶり奨学金制度」です。ぶり奨学金は、
子どもが高校や大学に進学したとき、必要費用を保護者に支給する奨学金で、ポイントは卒業後、
長島町に戻ってきた場合は、その返還を免除すること。条件としては、卒業後すぐではなく、10
年以内に戻ることで、町の外で経験を積み、地域のリーダーとして戻ってきてほしいという期待を
こめて、出世魚で回遊魚であるぶりにあやかったネーミングだそうです。 子育てを応援し、若者が
戻りやすくするため、地元の事業者などが寄付をする共助の仕組みも、財政負担の軽減、子どもの
モチベーション向上の観点からも全国的な注目を集めています。 この奨学金は、長島町と鹿児島相
互信用金庫による取組ですが、長島町は2004年に町唯一の高校が閉鎖し、現在、高校生の多く
は町外で寮生活を余儀なくされ、それが若者の流出に繋がっているとともに、他市町村に比べ子育
て負担が大きいという課題が、鹿児島信金には、支店の経営基盤と市場規模が縮小するという課題
がそれぞれあったそうです。そのような中で、「町と信用金庫は 運命共同体。人口減を食い止め、
町に人を還流させるために金融の力を発揮し、町が光り輝くように全力で支援する」という鹿児島
相互信用金庫の稲葉理事長の掛け声のもと、このプログラムは動き出したそうです。
奨学金は鹿児島相互信用金庫が貸与するもので、金融機関が自治体のために独自の商品(奨学ロー
ン)を開発した唯一の事例だそうです。戻ってきた子どもの奨学金は、元金相当額を町が2016
年度に創設する基金から補填するが、地元漁協もブリ1匹あたり1円を奨学金基金に寄付するな
ど、町の事業者や出身者が基金に寄付する仕組みになっています。ぶり奨学金のモデルは他の自治
体から注目されており、制度を学びに長島町に来る自治体職員も多いのだとか。
また、以上のブリ奨学プログラムから、全国の自治体で初めて辻調理師専門学校との協定や、カド
カワと連携したNセンター※など分野を超えたさまざまな政策に広がっており、信用金庫との密接
な関係のもと、商工会、漁協などが共同出資してエネルギー会社を設立することで、域外に流出す
るお金の削減を目指しているそうです。町のことは町が支える、という究極の共助です。こうした
取組は確実に全国へ知りわたっています。
※Nセンター・・・各地方自治体とドワンゴ、カドカワが開校した「N高等学校」が連携して開校する地域の教育拠点。
(格好の通り、厳格な衛生管理のもとにおかれています)
本地域ブランド牛である「華鶴和牛(はなつるわぎゅう)」を生産している本市最大の畜産農家で
ある。牛500頭を飼育し、A5ランクが30%、A4ランクが50%と高割合で生産し高い品質
を誇っています。これもHACCPをクリアし、独自でEU等へ輸出しているとのこと。
(リニューアルした阿久根駅の駅舎の前で皆様と)
にぎわい交流館阿久根駅は阿久根の玄関口である駅を、市民が集う憩いの場として、また、おもて
なしをする場として、平成26年リニューアルしたもので、デザインを担当したのは水戸岡鋭治氏
(九州新幹線の「つばめ」「さくら」や、JR九州の豪華寝台列車「ななつ星」のデザインを手がけ
た方)によるもの。阿久根産の木をふんだんに使用し、木目調の温かい雰囲気で、食堂やカフェ、イ
ベントホールもありました。また、ここには、シティマネージャーが民間の博報堂から派遣されて
いました。
この阿久根駅では,阿久根市・鹿児島相互信用金庫・鹿児島国際大学・県立鶴翔高校等を含めた産
学官金連携で取り組む地域活性化イベント等を行っているそうです。 なお、2月に阿久根の食材を
使った料理コンテスト、食のセレクトショップ「DEAN&DELU CA」のシェフによる料理教
室を核に学生によるアイデア料理や加工品、地元生産者によるマルシ ェも開催することで、阿久根
の食の豊かさを市内外に情報発信しています。
(積み上げられた衣服に圧倒されます)
株式会社ecommitはリユース・リサイクル事業を東南アジアを中心に活動拠点を広げ、グローバル
な視点から研究し、すばらしい地球環境を未来へつなげていく企業として地域に貢献しています。
主に古くなった農業機械を東南アジアを中心に輸出し、使えなくなっても部品レベルで回収し、日
本へ持って返ってくるというサイクルを実現しています。やはり現地の人にとても感謝されるよう
で、現在海外で20ヶ国へ輸出し、その他に衣服のリユースも行っているそうです。全国を拠点に
社員数も右肩上がりであるとのこと。
中越パルプ工業は、昭和22年創業の総合紙パルプメーカーですが、最先端技術のCNF(セルロー
スナノファイバー)という強力な炭素繊維を研究しており、量産化の目途が立ったということで、
総額14億円を投資する第一期商業プラントの建設を決定しています。今後は車や飛行機にも実用
化されていくそうです。 また、木質バイオマス発電も行っており、他の電力(原発や風力)とは異な
り、ハコ物ができた後も 持続的に雇用を創出する仕組みを考案されています。(林業など)
さきほどは、ブリでしたが、こちらは基幹産業であるマグロ漁業を生かした取組です。 従来廃棄さ
れていたマグロ部位を活用した商品開発など地域資源の有効活用による市場拡大を図る とともに、
物産館(「薩摩串木野まぐろの館」)の建設やイベントの開催などマグロを使って地域 貢献・地域
浮揚に取り組んでいます。品質に拘り、水産物を陸あげしたあとも船内と同様、-60℃ での管理を
実現しているそうです。実際に私も-60℃を体験させていただきました。
こうした取組の中で生まれた、「まぐろ血合い肉さつま揚げ」は第50回水産物品評会で農林水産
大臣賞に選ばれたそうです。私もいただきましたが、血合い肉独特の臭みが無く、食感の良い大変
美味しいさつま揚げでした。
(日曜日ということもあり、多くの人でにぎわっていました)
商工会まるごと特産品フェアは県内商工会地域の事業者が開発した「とっておきの逸品」や全国展
開プロジェクト等で開発した特産品等及び県内各地域の特産品等を一同に取り揃えています。 鹿児
島市の中でも特に交流人口の多い「JR鹿児島中央駅前」に於いて物産展を開催し、広く消費者に
県内商工会地区の特産品の魅力を紹介し、販路拡大に繋げることを目的として、鹿児島県商工会連
合会が平成26年度より実施されています。JAグループ鹿児島の協賛を受けており、特産品の種類
も充実しているようです。
こちらでは、JA鹿児島・鹿児島県商工会連合会から連携事例の他、志布志での連携事例、鹿屋での
連携事例等の取り組みについてお話をお伺いしました。特に志布志では、農商工連携・地域資源活
用事業として、6月という早い時期から販売できる「日本一早い夏そば」という志布志の夏そばプ
ロジェクトが行われており、ブランディングによって地域経済の振興をはかっています。
やはり、 農商工連携は、地域の資源を有効に活用するためにはとても大切で、農林漁業者と商工業
者の方々がお互いの「技術」や「ノ ウハウ」を持ち寄ることで、新しい商品やサービスの開発・提
供、販路の拡大とともに、そうした基幹産業の所得向上は雇用創出にもつながり、地域経済に好循
環をもたらす筈です。こうした協力関係が全国展開できれば、地方創生の力強いエンジンになるで
しょう。
以上のように、今回は2日間を通じて、地域資源をうまく活用し、役所と事業者や異業種の事業者
間がしっかりと連携して、特に地域からの「輸出」に目を向け、高付加価値の商品によって市場を
確保することなどを意識した素晴らしい現場の取組を、直接見ることができました。1月2
0日より通常国会がはじまっていますが、週末は変わらず地方視察に勤しみたいと思います。