幸ちゃん物語 第3話 (青春時代編)
なぜ政治家を志すのか
~政治を天職に~
いきさつはこういうことだが、もともと私は幼い頃から政治に興味をもっていたし、政治家にも憧れてきた。身近にも岳父の村山達雄をはじめ、かつて参議院議員だった柳田桃太郎叔父がいる。私の曾祖父は、行橋の初代町議だったし、父も機会があれば市議会議員に打って出ようという気持ちをもっていたようだ。私の政治家志望は、山本家の血筋なのかもしれない。
前述のように、マックス・ウェーバーは、「政治とは権力に影響を与え、権力に参画する行為である」と言っている。
日本の場合、権力というのは、官僚をいかにうまく動かしていくかということである。橋一つつくるにしても、道路や空港をつくるにしても、また社会福祉を充実させる場合でも、官僚機構がウンというようにもっていかなければ不可能といってよい。
私の地元、北九州市・京築・田川地区というのは、経済のソフト化、国際化、情報化といった日本経済の構造変化の影響をモロに受け、苦境に立たされているのが実情だ。今早急に、何らかの手をうたないと手遅れになってしまう。現に、空港、道路といった最低限の交通基盤さえ整っていない。
経済活動を自由にし、競争を容認するということは、実は必然的に「勝者」と「敗者」が生み出されることを意味する。
政治家の仕事は、この経済競争における「勝者」と「敗者」の格差を出来るだけ縮め、社会が「公正」と考える範囲内に収まるように調整することであろう。
この点幸いなことに、私は大蔵省という国の中枢機関にいて、役所のどこをつつけば物事が進むかということを熟知している。私が政治家へ転身する決意を語ったとき、多くの大蔵省の仲間が頑張れと激励もしてくれた。予算の担当者も、全面的な支援を約束してくれている。わが愛する郷土のために、私は少なからずお役にたてるはずだ。この革新はますます強まってきた。
そして、政治家を目指すのであれば、将来は、日本のかじとりをするような政治家になるのが私の決意だ。
大蔵省時代常々関心を抱いていた、国家目標、国家戦略というものの策定に参画していきたい。次代を担う世代の代表として、私のこれまで培った国際交渉における経験、また人脈をおおいに活用し、明日の日本の礎とならねばと思っている。
私の夢はかぎりなく大きい。
とはいっても政治家への準備を進めるにつれ、選挙というものの厳しさ、恐ろしさがよくわかるようになる。
果たして、自分は不可能な事に挑戦しようとしているのではないか。こんな不安にかられることもある。
ウェーバー曰く、
「不可能なことを成し遂げようとする試みがなかったならば、可能なことすら成し遂げられなかっただろう。どのような事態に陥ろうとも、「それにも拘わらず」という不屈の精神の持ち主だけが政治を「天職」とし得る人間である」と。
今、私に必要なのは、新しい世代に挑戦する”不屈の精神”なのだ。私自身の生い立ちを振り返ってみても、私はいくつかの壁を乗り越えてきた。
精神と肉体の強靭さには、多少の自身はある。
今は、己を信じて全力をつくす以外にないというのが偽らざる心境である。