第32話:北九州検証 ~住民の生活の豊かさ~

 

幸ちゃん物語 第32話 (北九州地域再活性化私案編)

北九州検証

~住民の生活の豊かさ~

 このように、若者が減少し産業の構造変化に対応しきれなかった北九州市は、福岡市に大きく水をあけられた。両市の住民の生活の豊かさにもかなりの差がでてきている。さまざまなデータを比較すると、福岡市が勝っていることがよくわかる。

 昭和58年度の北九州市の一人当たりの所得は189万円で、福岡市の237万円の約8割。全国銀行ベースの一人当たり預金高(昭和61年3月30日現在)をみると、北九州市は138万円で福岡市の274万円の半分である。他方、一人当たりの貸出高は、北九州市は福岡市の3割弱にすぎない。

 教育の分野では、小学校、中学校、高等学校の数は北九州市のほうが福岡市より多いが、大学になると逆転している。医療の分野でも病院、診療所、歯科のすべての施設数、医師の数で北九州市が劣っているのである。ただし、福祉の分野では、保育所、養護老人ホーム、老人福祉センターの施設数で北九州市が勝っている。

 道路、公園、上下水道などの公共施設の整備状況を比べると、北九州市は健闘している。とくに公共下水道の普及率は9割を超え、福岡市の7割弱を圧倒している。これまでの谷市政の成果のたまものである。

 さらに住宅をみると、北九州市のほうが古いものが多い。昭和45年以前に建てられた住宅が北九州市では52・6%と過半数を占めているが、福岡市は38・6%にすぎない。これは、最近の人口の流出入の動きにも関係がある。

 ところで、古い住宅が多いということは、見方によっては潜在的な住宅建設の需要が高いともいえる。交通基盤の整備、産業活動の活発化などがスムーズに進めば、爆発的な住宅建設ブームが起こりうる要素がある。

 平均地価公示価格(昭和61年1月1日現在)については、商業地、住宅地ともに北九州市が安く、地価の変動率も少なく取引はあまり活発でない。

 その他のデータをみてみよう。市内に本店を置く企業数の統計はわからないが、福岡市が圧倒的に多いことは確かである。昨年JR九州の本社が福岡市に移転したことも大きな波紋を生じた。また、北九州市に本社を置く主要金融機関が一つもない。交通の便などもあって大企業はその中心支店を福岡市に置くことが多く、東京と直結した人物・物的ネットワークが築かれている。北九州市にはこれがない。朝日・読売・毎日新聞社は西部本社を北九州市に置いているが、これもその主力を徐々に福岡市にシフトさせつつある。コスト、利便の問題はあるが、将来の情報化時代を展望するとき、この問題の解決が望まれる。