幸ちゃん物語 第36話 (北九州地域再活性化私案編)
交通体系の整備
~新空港実現の鍵は大蔵省の予算措置~
ローカル・ホロニックスのキーワードは情報である。情報を新たに生み出し、その質を高く維持するためには、人やものが自由に迅速に移転し、刺激し合うことが必要である。『メガトレンド』という著書のなかで、ジョン・ネイスビッツは「現代は、ハイテック=ハイタッチの時代」と言っている。技術革新が進めば進むほど、人と人の交流、心の触れ合いが大切になるのである。その意味で、高速かつ低廉な交通体系の整備は、情報化時代における地域発展の絶対条件だといえる。にもかかわらず、北九州地域はこの点で全く取り残されている。
北九州地域は、圏域200万人という、福岡県以外の九州各県のどこよりも大きい人口を有しながら、ジェット機が就航できる空港はなく域内を縦断する高速道路もない。幹線道路の国道10号線は相変わらず上下1線ずつで、その混雑ぶりは目を覆いたくなる。従ってまず何よりも重要な課題は、各ホロン(個人、企業、市町村など)が有機的な連携を図れる経路、つまり空と陸の高速交通体系の整備を急ぐことである。
曽根にある現基盤の北九州空港は、ジェット機の乗り入れができないことや市街地に近いということもあって、定期便もなく野ざらしの状態である。これが、北九州地域の地盤沈下の大きな要因の一つになっている。北九州圏域200万人の利便性の確保と地域の活性化を図るため、大型ジェット機が離発着できる新北九州空港の建設が必要不可欠である。
*新北九州空港は、本年3月16日、念願の開港の日を迎えることができました。
新空港については、苅田港の沖合3キロの地点にある人口島が予定地とされ、国の第5次空港整備5ヵ年計画(昭和61~65年度)に、新規事業として採択されている。福岡県は、この構想を全面的にバックアップしているほか、市議、県議、国会議員の間で超党派の「早期建設促進議員連盟」が結成され、支援体制も強化されてきた。
こうした動きのなかで、本年(昭和63年)3月9日衆議院予算委員会分科会において運輸省(現国土交通省)の航空局長が、土砂処分場の工事進ちょくなど前提条件が満たされれば、昭和70年代半ばまでには開港できるのではないか、との見通しを明らかにした。国の行政当局の責任者が、新北九州空港の具体化について公に発言した画期的な出来事である。これを受け、第4港湾建設局は、第2期土砂処分場着工に当たって、将来の空港建設を前提とする補償交渉を関連漁協と開始することになった。
私はこれまで、大蔵省(現財務省)主計局、運輸省航空局の担当者と非公式な打診を行なってきたが、まず、運輸省当局が、土砂処分場は将来空港にするという方針を明確に打ち出すことが必要だ、と主張してきたので、こうした動きが出てきたことは喜ばしい。
今後は、この具体化のための措置が確実に採られるように進めていくことが必要である。漁業補償問題をできるだけ速やかに解決するとともに、空港の建設・管理主体をどうするのかも詰めていかなければならない。また、空港へのアクセス道路、モノレールの乗り入れなども検討する必要がある。その際、北九州市のみならず、京築・田川地区にとっての利便性も十分考慮していかなくてはならない。
ところで、新北九州空港実現のための最大の問題は、大蔵省がどのような予算措置を認めるかである。ここで、私の本領が発揮できる。幸いなことに16年間大蔵省に在職し、省内の人脈には精通しており、これをおおいに活用して新空港の1日も早い実現に尽力したい。国の行政組織は、外部の人にはわかりにくいが、予算に関しての実権を握っているのは、大蔵省主計局の主計官(課長クラス)および主査(課長補佐クラス)である。与党幹部、各省大臣、局長レベルが何と言っても、彼らが納得しないかぎり予算はつかない。与党の力が強くて表面的には押し切られたように見えるときでも、彼らがダメだと思えば、実質的に金が回らないような操作を仕組むことも可能である。このあたりは、大蔵官僚でないとなかなかうかがいしれないところだ。