幸ちゃん物語 第37話 (北九州地域再活性化私案編)
交通体系の整備
~新北九州空港を国際貨物重点空港に~
さて、新北九州空港が現実のものになったとき、その形態をどのようにするか具体的に述べてみたい。
私は、新北九州空港を国際貨物重点空港にして位置付けたいと考えている。
経済のソフト化、サービス化を反映して、航空機で輸送される貨物が急増している。日本の東の玄関成田はすでにパンク状態であり、通関手続の遅れが諸外国との間の貿易摩擦の一因ともなっている。近い将来、西日本の国際線貨物量は、年間200万トン以上となることが予測される。この膨大な貨物をさばくのに、それ相当の規模のストックヤード(倉庫地帯)が必要となるが、現在関西新国際空港が計画されている泉州地区周辺は過密化が定着し用地確保が困難である。この点新北九州空港周辺には、新門司、苅田地区に広大な埋立地、遊休地があって用地確保に何ら支障がない。
さらに、国際線貨物空港は性質上24時間運行が要求されるが、新北九州空港は海上空港なので航空機騒音は海域内にとどまり、周辺市域の環境を悪化させることがない。
また、国際貨物の処理上不可欠なのは税関の機能であるが、幸い門司には西日本の税関業務を統括する門司税関があり、この点でも最高の条件が揃っている。これはかつて門司港が、西日本における重要な国際貿易港として栄えていたことによるが、今後これが空の貿易拠点として衣替えしていく要となろう。
このような利点のもとに、新北九州国際貨物重点空港が建設される。これを核として、東九州縦貫自動車道や関連道路の整備が行なわれれば、北九州、京築・田川地区に臨空産業地帯が形成される。さらに、新北九州空港は西の国際貨物の玄関として、九州全般、中国・四国地方にまでおよぶ広域サービスを提供できるようになる。
当然のことながら、新北九州空港の実現は、北九州地域に大きなメリットをもたらす。
その第1にあげられるのが、全国各地との距離がより近いものになることによって、ビジネスマンや観光客はもとより学者、文化人、芸術家などのあらゆる知識や情報の交流が活発化し、魅力と活気に溢れた地域づくりが可能になる点である。
農林水産業にとっては、航空輸送は重要な足となる。新北九州空港ができることによって関門のフグをはじめ、周辺海域で収穫されるイカ、ノリ、車エビ、水産加工品ではウニ、フグ製品などの活発な航空輸送が見込まれる。また、モモ、ブドウなどの果樹園や作物の出荷地域も広がり、都市近郊農業の新たな展開の契機となろう。
これらの農水産物の出荷がどの程度伸びるのかの推計は難しいが、参考として、博多万能ネギに例がある。かつて、東京で売られていたネギは、白ネギが96%と圧倒的だった。これに目をつけたのが、福岡県朝倉町の朝倉町農協で、市場調査の結果大都市でも青ネギの需要はあると分析、航空機を使った東上作戦に踏み切ったのである。青ネギの新鮮さを失わずいかに生産コストを引き下げるかといった努力を重ね、今ではこの博多万能ネギは日本航空の国内貨物輸送部門の輸送量1位を占め、フライト野菜の最大のヒット商品となっている。昭和53年1億6000万円だった販売額は、空のルートを使った販路拡大で、なんと15倍近く増加したのである。すべてがここまでうまくいくとは考えられないが、空のルートを活用した販路拡大によって、農林水産物の出荷が大幅に増加しうることだけは疑いがない。
また、人や物の動きが活発化することによって、運輸、小売、飲食、観光などさまざまなサービス業の活性化が図れる。
さらに、新北九州空港の開港によって、エレクトロニクス、バイオテクノロジー、ニューメディアなどの最先端産業が出現するだろう。このように、新空港がもたらすメリットは極めて大きく、私たちはこの早急な実現に力を合わせて取り組みたい。
ところで、新北九州空港の実現は、前述したように早くても昭和70年代半ばになる。これは、施設の建設や空域の調整にかなりの時間を要するからだ。ところで、これから10年間も”空の足”なしでは困るという意見がある。このため北九州市は運輸省と話をし、新空港開港まで暫定措置として現北九州空港を延長し、MD87・中型ジェット機を就航させる計画を検討している。当面65年度をめどに東京間1日2便を見込んでおり、需要があれば大阪便も新設したいという。
MD87は騒音が従来機より低いので、周辺住民の理解が得られれば、新北九州空港開港までのつなぎ措置として現実性がある。ただ、あくまでも本題の新北九州空港の現実に対して支障となってはいけない。その前提が貫けるかぎり、大蔵省との予算折衝などで最大限の力を発揮したい。必ずや北九州地域の人々の希望にそえるだろう。