幸ちゃん物語 第42話 (北九州地域再活性化私案編)
ウォーターフロント開発
~ロンドンのエンタープライズ・ゾーンに学ぶ~
欧州においてもウォーターフロント開発は盛んになり、とくにイギリスのロンドンのドッグランド再開発の例が有名である。
ロンドンの中心を流れるテームズ川沿いに、ドッグと呼ばれる港湾設備が十九世紀初頭に次々と建設されイギリス貿易を賄った。しかし、貨物船の大型化、輸送手段の陸送への変化が進むにつれ、一九六〇年代後半以降これらのドッグは次々と閉鎖された。この結果ドッグランド地区は”ロンドンのゴミ溜め”とまで言われるほどに荒廃が進行した。そして、一九七〇年代には、約四十万人いた人口は十分の一以下にまで落ち込んだ。この問題の解決として実施されたのが、ドッグランド再開発計画である。
この計画のなかで注目される施策が、サッチャー政権の目玉政策も一つとなった「エンタープライズ・ゾーン」である。このエンタープライズ・ゾーンとは、一九八〇年制定の地方行政、計画および土地法に基づいて、このゾーンのなかの事務所に対して指定の日から十年間、さまざまな特典があたえられるものである。
その第一は、開発手続きの大幅な簡素化である。これによって、ほとんどの開発計画には自動的に許可が与えられる。第二は、固定資産税(地方税)の免除である。第三は事務所税の軽減で、建設に投下した資本の全額が控除される。第四は、政府への提出資料の簡素化である。
この結果、企業が負担するのは水利税だけであり、開発により付加価値が生じた場合にのみ60%の税金が課せられる。政府に提出する統計資料は通常三十種類にも及ぶがこれも一つですむ。また、財政的な援助も受けられる。これらの措置によって、開発対象地内での経済活動の活発化が図られており、イギリス全土で一九八四年までに二十四地区がエンタープライズ・ゾーンの指定を受けている。