第45話:農水産業の再生 ~新しい農業への取り組み~

 

幸ちゃん物語 第45話 (北九州地域再活性化私案編)

農水産業の再生

~新しい農業への取り組み~

 ところで、農産物の安易な自由化には反対であると言ったが、だからといって日本の農業が、このまま何もせず手をこまねいていればよいというのでは決してない。日本の農家としても、最大限の合理化努力、近代化努力が必要である。

 実際、日本のあちこちで、さまざまな意欲的な試みが行われている。例えば、千葉県佐倉市では、田植えをしないで乾田直播を採用したり大型機械を使って農作業を合理化。また、バルブの開閉だけで田にも畑にもできる汎用田の長所を生かして米と麦の夏冬連作をしたり、高能率、低コスト農業に取り組んでいる。まさにソフト(知恵)で勝負しているといえる。

 さらに、量から質へのニーズの変化を反映して、「減農薬米」という名の新しい自主流通米が福岡市で誕生、大人気を呼んでいる。減農薬といっても、ただ農薬散布を減らせばいい、労働軽減になるというものでもない。日々稲の観察が必要だし、病虫害に強い品種は、植え方は、肥料のやり方は、と研究も不可欠なのである。

 佐賀県の多久市では、減反の拡大に伴い収益性の高い作物を検討。イチゴをはじめ十三品目のそ菜を導入し、年間切れ目なく主に東京方面に出荷している。また、ミカンやビワ栽培も盛んで、多品目挑戦で活路を開いている。

 ”ウメ、クリを植えてハワイに行こう”で有名な大分県大山町では、水田をつぶしウメ、クリ、エノキダケ、薬草のハーブなどに作物転換、重厚長大から軽薄短小への転進を図っている。その結果、ほ場整備に伴うトラクターやコンバインが不要となり、今や農家の借金もゼロで若者60%は町に残るようになったのである。

 先に空港問題のところで、フライト農業の例として博多万能ネギを紹介したが、全国各地でさまざまな農産物がフライト農業として計画ないし実行されている。例えば、高知の奴ネギ、青ジソ、オクラ、シシトウ、ミョウガなどがあげられる。また、岡山県では、バイオテクノロジーを利用して、中華料理用の千宝菜を栽培している。

 以上のような各地の新しい農業への取り組みの例を参考にしながら、工夫と努力を重ねていけば、京築や田川地区の農業の再生は夢ではないと思う。とくに、この地域には農業試験所や農業高校があり、農業のハイテク化、ソフト化には相当の支援体制が期待できる。財政面での必要な助成確保には最大限力を注ぐつもりだが、農業としても自立に向けた精一杯の努力が必要である。